第25話 何故・・・?



可愛い、と言われて素直に嬉しい。

・・・嬉しいは嬉しいんだけど。

『ちゃんとする話』なんてのに釣られて部屋に上がらせてもらって、こんな近くに座って・・・。

身の程知らずだって分かってるけど、もっと違う言葉をもらえるんじゃないかと期待してた。


「・・・桜城さん・・・?」

「ん・・・?」

「それが・・・ちゃんとする、話?」


欲張りだって分かってる。

こんな言い方可愛くないって事も、

自分は怖がって言わないくせに言って貰いたいとか、そんなの凄くズルイって事も。

でもだって告白して断られたら、逆に申し訳なくて明日からまともに顔を見れる自信が無い。

案の定、桜城さんは苦笑した。




「あー・・・前置き長すぎだなー。

どう切り出したもんかってグルグルしてた(笑)」


でも桜城さんは私の遠まわしな催促に嫌悪感を露わにしたりせずただクスリと笑い、目に掛かった髪をくしゃっと掻き上げて指の隙間からまた私を見る。

初めて見たそんな仕草とその視線にドキッと胸が鳴った。

爽やかな人だと思っていたのに、目の前にいる桜城さんの、なんていうか・・・色気みたいなものに当てられて顔が火照る。


「さすが上司にキレた新人頑張ってるな、から素直で可愛い後輩になって。

物理的な距離が近づいたらちょっと生意気になって来たところも面白くなってきちゃって。

なのに飲みの席じゃほとんど下戸のくせに雰囲気壊さないようにって気を遣ってみんなと同じようにアルコール頼んで頑張って飲んでるし。

そういうとことか見ちゃったらなんか放っておけなくなって、もう隣に置いときたくてさ」


少し目を伏せた桜城さんは、思い出し笑いをするように小さく笑った。


「いつもはチャキチャキ仕事してる姐さん的な薫が俺に世話焼かれまくって動揺しまくってんのもちょっと優越感に浸れていい気分だって言うのもあるけど、でもそのうちそれを普通に受け止めてくれるようになったのが嬉しくてね」


だって。


「それは、私の為だって分かるから・・・」

「それをさ、ちゃんと分かってくれて委ねてくれてんのが嬉しいんだよね。

まあ、要は甘えられて嬉しいって事なんだけど」

「桜城さん、お兄ちゃん気質ですしね」


頼られるの嫌いじゃないですよね?

私はそれで結構モヤモヤしてるけど。


「ああ、長男だからそういうところもあるのは認めるけど。

でも今は薫の話な?

お前に頼られんのが一番嬉しいんだよ俺は」


――――・・・それは何故?


って聞いてもいいですか。

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