第22話 初めての事
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またブフッと吹き出した桜城さんに、大胆にもその両頬を手で挟み「桜城さん」と呼ぶと途端に笑いは引っ込み、でっかい目でじっと見つめられた。
酔っ払ってなきゃこんな事出来なかったと思う。
「桜城さんは、社内外の女子全員が認める王子系イケメンです」
「・・・それは、薫の見解も含まれてる?」
「勿論」
この人以上に格好良い男の人なんて知らない。
「そ」
ほら、その笑顔だって。
「仕事中はどんなに鬼でも、桜城さんが笑って褒めてくれたら頑張って良かったって思います」
「鬼って(笑)」
「え? 無自覚ですか? 仕事中はめっちゃ鬼ですよ?
でも桜城さんは他の、高いお給料貰ってるくせに英語もロクに出来ないオジサン達とは違って誰よりも仕事出来るし、教え方だって上手いし」
「・・・薫、酔っ払うと毒吐くヤツだったんだな(笑)知らなかった」
え? ああ、無意識に本音が。
っていうか今はそれは問題にしないで下さい。
「もう!私が言ってるのは、桜城さんが顔だけの人じゃないって事です。
私ずっと、桜城さんに認められるような、ちゃんと仕事が出来る人になりたいって
思って仕事してきました。私以外も、業務の人みんな同じように思ってると思います。誰ですか、顔だけみたいに言ってる人は」
ここまで一気に言って、足りなくなった息をすうっと吸うと、至近距離でふっと笑われる。
「・・・っ!」
その瞬間、突然我に返った。
自分がどれだけ大胆な事をしてるのかとボッ!と一気に顔が熱くなってくる。
桜城さんの頬を挟んでいた両手の力を抜き、「すみません」と謝りながら腕を下ろす。
今私なにした!?
しかもなんか思わず力説しちゃったけど、元はと言えば桜城さんが話し始めたよね?
思いっきり遮った!?
「・・・あの、すみません。なんか、べらべらと・・・」
さっきまで自分がしてた事も相俟って、恥ずかしさから顔を上げられない。
俯いたまま謝ると、「いーや?」という優しい声と一緒にポンと頭に手が乗ってきた。
そしてそのままクシャクシャと前髪を掻き混ぜられる。
「あの・・・」
「髪サラサラ(笑)」
「―――っ」
コレは、なんなんでしょう?
ポンってだけならたまにされてるけど。
なんだか今日はもの凄く恥ずかしいって言うか、照れるって言うか・・・。顔が熱くて。
もう、どう反応したらいいのか分からない。
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