第16話 熱狂的?信者たち
・
「大野部長と、仲良いんですね」
意外でした。というと「え、なんで?」ときょとんとされる。
いやいや、だって。
二人が支社に来て2年。
並んでる姿は多々見るけれど、こんなに楽しそうに話してるところなんて見た事無い。
「だって、いっつも険しい顔して話してませんでした?」
ミーティングルームで言い合ってるのを見てハラハラしたのを憶えている。
朝礼でよく見る、違うタイプの美形二人が微笑んで並ぶ姿はバックに花か宝石が飛んでるんじゃない?ってくらいに眩しいけど、仕事中の二人は常に険しい表情でお互いを睨みつけるように見ている。
はっきり言ってコワイ。
だから、そんな二人がこんな楽しそうに話してるのが意外過ぎて。
「ああ、そりゃー仕事中はね?
だって、あっちだって状況知ってるはずなのにもっと情報寄こせとかさあ・・・」
「はあ・・そうですね」
そこに関しては共感しますが。
「でもさ、仕事を離れれば可愛い男なのよ。
今だってベランダで月見てたら俺達の事みつけたーって電話してくるし。
手ぇ振ってんの見える?って訊くくせに電気消してるし(笑)」
またブハッと吹き出して、また「ヤベッ」って口を押さえる。
「大野部長と桜城さんって、付き合い長いんですか?」
「俺が1コ後輩。俺ね、最初管理部だったのよ。そこの先輩。
すげーのよあの人。綺麗な顔して上司バッサリ斬るんだよね。2年目のくせに。
ヘタすりゃクビだろって(笑) もうカッコ良くてさー(笑)
感覚的に物言うくせに、データ取りゃその通りだったり。
もう信者いっぱい(笑)」
「そうですか・・・」
んで、きっと桜城さんもその信者の一人なワケですね?
「だからさ、管理部は勿論、異動してった奴らからもよく飲みとかメシに誘われてんだけど、自分の時間の方が大事っつって、あの人絶っっ対行かねえの(笑)
技術の宮川知ってる?
かわいそうに、たった1ヵ月研修であの人の下についたばっかりにすっかり堕とされてさ、毎週のように誘って毎週のように瞬殺されてんの。
もう意地になっててさー。大野さんも面白がっちゃって絶対頷かねえし(笑)」
もう大野部長の話になったら止まらないし、あの緊迫した空気を知ってるだけに嘘みたい。
「俺がこの前二人で飲んだって知られたら殺されんじゃね(笑)」
ぶっは!と豪快に笑う顔はもう王子じゃない。
見た事ないような崩れた笑顔に、なんかもう、ハイハイと頷いておいた。
・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます