第11話 23時59分
魔王と勇者は城のベランダから下を見下ろした。
人間軍が陣を敷いている。
人間軍の使者から手紙が届けられた。
魔王は手紙を読みラパスにも読ませた。
「俺の見立て通り、人間軍の要求は降伏宣言と勇者の帰還。0時になり、勇者が目覚めれば、その要求を飲まざるを得ないという見込みだろう。」
ラパスは黙って手紙を読んでいる。
「俺は、この16年間でお前が魔族と人間のかけ橋になるよう育てたつもりだ。それが俺の、そして魔族の最後の作戦だ。」
人間軍の篝火がチラチラ燃えている。
「0時まで、あと1分だな。」
「………一ついいですか?」
「なんだ。」
「この16年間、私といて楽しかったですか?」
勇者は魔王の顔を見つめて言った。
魔王は軽く笑った。
「ああ、言われてみれば、楽しかったよ。毎日が。俺はこれまでの100年間は、戦争と勇者のことを考えていた。でもこの16年間は、愛と平和とラパスのことを考えて生きた。これが俺の人生の最後の16年なら、悔いはない。」
ラパスは無言で外を見つめた。
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