第10話 16歳の誕生日の前日
魔王はラパスを呼び出した。
一緒によく散歩した花畑。
月が綺麗な夜だった。
「あと3時間経てば、16歳の誕生日になるな。」
「はい。」
「16歳になる前に、全てを話したいと思う。」
ラパスは頷いた。
「お前は、勇者だ。魔王の俺を倒し、魔族を滅ぼす使命の者。俺は戦いを避けるために、赤ん坊のお前をさらって、今まで育てた。今は戦争を辞めて、ただ平和に暮らしたいと思っている。」
ラパスは黙って聞いていた。
「お前が前世の記憶を取り戻し、使命の通り生きるのか、俺たちを見逃してくれるのかはわからない。ただ、少しでも魔族の本当の姿を分かってほしくて、みんな愛情を持ってお前に接してきたつもりだ。」
風が吹いて、花の香りが漂った。
「当時の力のある俺の戦友たちは皆死んだ。だから、今の魔族は戦争下手の新世代ばかりだよ。だから、もう、許してほしいんだ。もし、お前が勇者として今世を全うするなら、彼らは逃してほしい。」
魔王は、息を吸い直して言った。
「殺すなら、俺だけにしてくれ。」
ラパスは何も言わなかった。
「0時に勇者を連れて魔王城跡地に来い、と人間軍から連絡が来た。来なければ宇宙兵器から無差別攻撃をするという脅しつきだ。人間軍が欲しいのは俺の降伏宣言。俺の名を宣誓書に書かせて、魔族を未来永劫奴隷化したいのだ。俺はそれだけは絶対にしない。そうなるくらいなら、100年付き合ったお前に殺されたい。」
魔王はふうっと息を吐いた。
「最後の最後にこんな話ですまなかった。魔王城跡地に、一緒に行ってくれるな?」
ラパスは、はい、と答えた。
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