第4話 花畑
勇者は立ち歩き、色んなものを触り、遊べるようになっていた。
自分から魔王に駆け寄り、抱きついたり、何かをあげたりと親しげな行動もするようになった。
「順調だ。このコロコロした勇者が全力で殺しにくることなど、考えられん。」
魔王は、勇者を高い高いした。
勇者はキャッキャッと笑っている。
「そうですね、逆にどうしてここからあんな凶暴な人間になるのか…。あ、あと、先日、魔王城跡地に勇者奪還の軍が来ましたが、撃退いたしました。勇者さえいなければ人間軍もさほど怖くはないのですが…。」
魔王城跡地はダミーだ。
そこに勇者がいると見せかけている。
「さて、散歩の時間だ。花畑に行ってくる。」
青空に白い雲。
燦々と降り注ぐ陽光。
勇者は見つけた花や石をじっと見つめたりいじくっている。
魔王も久しぶりに花をじっくり眺めた。
自分の幼き日を思い出す。
魔族は魔力が高い種族ほど、人間のような「1人で何もできない時期」が短い。
遺伝子から先祖の力と記憶を引き継ぎ、すでに中身が出来上がった状態で生まれるのだ。
だから魔族にとって血統は大切だ。
それゆえ、人間のように簡単に数を増やすことができない。
勇者は花畑に入って行った。
ちょうちょをおぼつかない足で追いかけている。
前世の勇者は、魔族の家も教会も花畑も全て焼き尽くした。
この子は将来どちらに転ぶのだろうか。
魔王は、花畑で遊ぶ勇者をじっと眺めていた。
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