28話 暇つぶし! 依頼! 温泉!














「ノルン様、これを我らに……?」


「そうにゃ。プレゼントにゃ」


「しかし、これらの武具はオリハルコンで、しかも複数の能力が付与されてます。英雄様方が装備するに相応しい、伝説級の武具ですぞ」


「いらないにゃ? まだ2セット余ってるにゃ」


「ふふふっ。マリクさん達がいらないなら、売っちゃいますよ」


「なっ」


「マリク、有り難く受け取ろうではないか」


「しかし、バルドよ。これらはきっと世界最強装備なのだぞ」


「ノルン様、これら以上の装備は?」


「にゃ? ユウちゃん、どうにゃん?」


「ふふふっ、それくらいの装備なら、すぐに手に入るわよ。だから、安心して受け取ってくださいね」


「受け取るぞ、マリク」


「しかし……」


処分に困ったスケルトンの武具を押し付けようとしているのだが、猫族最強の3人がなかなか受け取ってくれない。なので、僕もノルンやユウを掩護する。


「マリクさん。現れるか分からない英雄なんかあてにせずに、マリクさん達3人が魔人と戦えるように、なって下さいね」


「わ、分かりました。あつし様達が安心して魔王と戦えるように、魔王配下の足止めくらいは出来るようになってみせましょうぞ」


そんな冗談を真剣な表情で言うマリクさん。


まっ、頑張ってとしか返せないよね。






僕達が家のダンジョンで暇つぶしをしていた2ヶ月の間に猫族1512人が街に出かけたりしていたらしく、僕達が出歩いても、そんなに注目されることはなかった。まあ、洋服等を買うために5時間も繁華街を歩いていたので、僕達に気づいた人はそれなりにいたのだが、護衛のマルクさん達が近づいて来る人達に向かって剣を構えてくれたので、取り囲まれたりはしなかったよ。













「ねえ、あつし。これを見てよ」


ユウが僕にスマホを見せて来た。


400階層突破? 雷神?


「これって?」


「日本の最強のパーティだって」


「にゃ? 最強はノルンにゃ」


「ふふふっ。もちろん私達を除いてね」


「このペースだったらマルクさん達を誰も抜けないんじゃ?」


「ここ見て。雷神、疾風、深淵の3つのパーティに政府からオリハルコン装備を提供するって書いてるでしょ。だから攻略スピードが上がると思うわよ」


「ふ~ん。何も付与してない武具を手に入れてもね」


僕の武具もSSS級なのだが、攻撃力強化や素早さ強化等が付与されている。まあ、501階層より進まないと手に入らない魔玉が必要なので、400階層までしか進めないのでは手に入れるのは無理なのだが。


「魔玉をお巡りさんに売る?」


「いや、猫族達に武具が行き渡ってからだね」


猫族達の武具は僕の兄に頼んでいる。僕の部屋の窓から入ることの出来るダンジョンは15階層より下で見つかる採掘場の魔鋼石は全てSSS級。なので攻略のついでにいくらでも採掘可能。猫族達に武具がすぐに行き渡らないのは兄が1人で生成しているために時間がかかっているだけなのだ。


「あつし。お巡りさんが魔法石が採掘出来るダンジョンも攻略して欲しいって言ってたけど、どうするの?」


「それなら僕からも頼んでおいたよ。なるべく家から近くで攻略の進んでないダンジョンを僕達専用にして欲しいってね」


「攻略の進んでないダンジョン? そんなダンジョンなんてないでしょ」


「ある程度は構わないだろ。それに山奥や無人島だったら手付かずのダンジョンが残ってる可能性があると思うよ」


「私はないと思うな~。宝箱を取り尽くされたダンジョンに入るよりも、新しいダンジョンを見つけて攻略した方が稼げるんだからね~」


「そうかも」


「ふふふっ。でも私達が攻略するのは501階層より先だから問題ないわよね」


魔法石で武具を生成すると魔法攻撃力や魔法防御力が高い武具が出来るそうだ。その代わりに物理攻撃力や物理防御力が弱くなるようだが。


















「近所?」


「出来れば家から通いたいので」


僕がそう言うと困惑顔のお巡りさん。


「この近くにはありませんね。しかし、ダンジョンに入ってしまえば、近所だろうと数ヶ月は出られないので、同じことですよ」


「にゃ? ノルン達は毎日出てるにゃ。ママさんの料理は最強にゃ~」


「ですよね。あつし様のお母さんの料理なしにはダンジョン攻略は出来ませんよね」


ノルンとサラの会話で更に困惑するお巡りさん。


「あ~、ユウがスキルを進化させたんですよ。それで、休む時はダンジョンを出るようにしてますよ」


更に更に困惑するお巡りさん。


「言ってる意味が分かりません。スキルを進化とは……。そんなことが?」


「ユウちゃんはチートにゃ」


「ユウ様は最強です。アイテムボックスも進化させて、収納している物の時間経過を無くしたのですから」


「進化……。条件は分かってるのでしょうか?」


「分かんないにゃ」


「どうでしょうか?」


お巡りさんの問に何も知らないノルンとサラが答え、お巡りさんは更に更に更に困惑した顔に。


「ユウ。スキルの空き枠だろ?」


「たぶんね。空き枠さえあれば、どのスキルでも進化すると思うわね」


「空き枠ですか……」


なぜか残念そうなお巡りさん。


「空き枠があれば進化出来るなら簡単なことですよね?」


「はあ、ダンジョンに入る人で無欲な人はほとんどいないのですよ。強さを求めてたり、宝を求めたり、魅力を求めたりと。なので、空き枠が1つでも出来ると、何かしらのスキルを覚えてしまうのが普通ですよ。なのに……。あつしくんとユウさんはどうしてなのですか?」


「私は特に欲しいスキルないし。あつしは?」


「僕もかな? まあ、僕はスライムに負けたからダンジョンに入るつもりはなかったからね。流れでなんとなくダンジョンに入ってるだけで、ユウ、ノルン、サラと一緒なら、どうだっていいんだよね」


「そ、そうですか……。参考になりました。ダンジョンに興味ない人を勧誘するとよさそうですね」


「ふふふっ。興味ない人達を世界を救う英雄にするのは難しそうよね~」


「そうですよね。強くなってもらっても、悪党になられたら困りますし、人選が凄く難しそうですよね」 


「で? 一番近くのダンジョンはどこですか?」


「そうでした。話がそれてましたね。全然近くないですが、温泉地はどうですか? 政府の所有してる土地なので、あつしくん達専用にすることが出来ますよ」


「いいわね。久しぶりに温泉に行きたいわ」


「温泉か。ところで何階層まで攻略されてるダンジョンなんですか?」


「250階層です。ボス部屋に入る前までになりますね」


「結構攻略されてますね。どうする、ユウ」


「別にいいんじゃないの? 温泉が目的なんだから」


「ユウさん……魔法石の採掘が目的ですよ」


「だよね」


「分かってるわよ。ちゃんと私が責任持って収納してくるわよ」

 

「251階層以降の宝箱をSSS級にしたいから、その手前の採掘場の等級をSSS級にすればいいよね」


「待って下さい。魔法石はA級までしか用意出来ませんよ。採掘してきて欲しいS級とSSS級の魔法石はダンジョン下層まで自力で進んで頂くしかないですよ」


「面倒ね」


「面倒にゃ」


「ですよね」


「そこをなんとか、お願い出来ないでしょうか。あつしくん達専用にしますし、温泉旅館も貸し切りにしましょう。更に料理人も付けますよ。どうですか?」



「僕はいいと思うけど、どうする、ユウ?」


「あつしがいいなら、私もいいわよ」


「ノルンも大丈夫にゃ」


「私も賛成です」


「ありがとうございます。すぐに手配しますね」


「お巡りさん。僕達が行く前に準備お願いしてもいいですか?」


「準備? 何かアイテムを?」


「いえ。最初の採掘場の等級をF級からC級に。その次の採掘場の等級をC級からA級にお願いします」


「なるほど。分かりました。それでは皆様、よろしくお願いします」







僕達は温泉旅を満喫するために、九州に向かった。










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