29話 温泉! 魔物! 海の幸!









「あ~、気持ちいい~」


「そうね~、来てよかったわね~」


「にゃ~。温泉最強にゃ~」


「気持ちいいですね~。私、初めてです」


僕達が温泉を満喫していると湯けむりの中から。


「私は仕事で来ているというのに……。この忙しい時にハーレム率いて温泉なんてうらやましですね」


「ナオちゃんにゃ~」


現れたのはお巡りさんの部下のナオさんだった。


「ふふふっ。ナオさん、気持ちいいですよ。って、あつしは見すぎ」


タオルで前を隠してるだけのナオさん。男なら、ついつい凝視してしまうのも仕方ないよね~。


湯の中に入ったナオさんはタオルを横に置き、肩まで浸かる。


「きゃっ。あ、あつしくん。私にも手を出すのね」


「こら、あつし」


え? 僕は横目で見てただけだけど?


「何もしてないって」


僕は濡れ衣だと両手を上げる。距離的にもナオさんの足くらいにしか……ナオさんの綺麗な足を触ってみたいとは思うけど……。


「って、また~」


「ナオさんの胸、大きいですね」


「あっ。サラちゃんだったの~」


「ナオちゃんのおっぱい最強にゃ」


「あ~、ノルンちゃんも~。てっきり、あつしくんかと思っちゃった」


「あつしはエッチにゃ」


「あつし様は小さな胸も好きです」


「あつし、だから、見すぎだって、言ってるでしょ」


「え~っと……ナオさんはここに何をしに」


「温泉に決まってるにゃ~」


「気持ちいいですよね~」


いやいや、ノルンとサラは黙っとこうか。


「もちろん、仕事ですよ。どこかのワガママな人達のご機嫌取りという立派な仕事です」


「大変ですね。どっかのお金持ちですか」


「そうね。お金持ちで、可愛い彼女を連れてるのに、更に猫耳美女を2人も連れて、更に更に私にまで手を出そうかと、横目で私の胸を見てくるのよ~」


って、それは僕?


「ははは。そんな人がいるなんて、大変ですね~」


「分かったにゃ~。犯人はあつしで決まりにゃ」


「あっ。私もそう思います」


だから、ノルンとサラは黙っとこうか。


「ふふふっ。ユウちゃんも大変よね~」


「ナオさんに手を出したら、この大剣で真っ二つにしますよ」


ユウが右手を上げると大剣が現れた。


「はあ~、手を出したりしないよ」


「あつしは嘘つきにゃ。ユウちゃんとノルン以外には手を出さないって言ってたにゃ」


「え? そ、それは……」


「私には、私以外の人を好きにならないって言ってたのよ」


「ごめんなさい」


せっかく気持ちよかったのに。ここはさっさと撤退だね。


僕が湯から出ようとすると。


「そうそう。この辺りは魔物が出るそうなのよ。旅館が破壊されないように近くにいたら、倒して来てね」


「え? 魔物? この世界ではダンジョンの外には出られないんじゃ?」


「分かったにゃ。魔物も温泉に入りたいにゃ。ノルンが倒してくるにゃ。あつし、突撃にゃ~」


ノルンはそう言うと立ち上がり、僕の背中に飛びついて来た。


「あつし。私達はもう少し、ゆっくりしてるからよろしくね」


「え? じゃあ、装備は?」


「あ~、そうね。仕方ない、私達も行きましょうか。サクッと終わらせて、また入り直せばいいわよね」





















魔物が外にいるとナオさんに言われても僕は半信半疑だったのだが。


「どうなの? 本当にいるの?」


「いたよ。向こうだね。500m先を北に向かってるね」


「本当にいたんだ。数は?」


「1082匹。なぜか纏まって移動してるみたいなんだけど?」


「人は近くにいないの?」


「それが街中なのに誰もいないんだよ」


「避難済ってことなら、倒すだけで問題なさそうね」


「だね」


「突撃にゃ~」


「はい。突撃します」


「ふふふっ。サクッと終わらせて温泉に入るわよ~」


強そうな魔物はいないか……。






















「残りは僅かだ。一気に殲滅する。ノルンは右に100m。10匹」


「了解にゃ~。突撃にゃ~」


「ユウは左。5匹」


「分かった。行ってくる」


「サラは待機。正面から32匹が向かって来てるからな」


「了解です。あつし様は?」


「僕は正面の魔物の数を減らしてくるよ」


「私の分を残してくださいね」


「ああ。ここは任せたよ」
















見えた。やはり、強い魔物はいないか。








「限界突破~」


本来なら限界突破のスキルを使う必要のない格下の魔物なのだが、討ち漏らして、散らばられたら面倒なので一気に決めることにした。














よし、ラスト~。






最後の魔物を倒し終えた僕は限界突破を解除し、来た道を戻って行く。











「お帰りにゃ~」


「終わったの?」


既に魔物を倒し終えたノルンとユウが戻って来ていた。


「終わったよ。やっぱり強い魔物はいなかったね」


「あつし様。私の分は?」


ジト目で見つめてくるサラ。


「あっ。ごめん、サラ。弱い魔物だったから……」


「仕方ないですね。でも罰として、おんぶしてください」


「ははは。いいよ、おいで、サラ」


「はい。えへへ」


「こら、いちゃつき禁止~」


「ノルンは抱っこがいいにゃ~」


サラをおぶって立ち上がるとノルンが正面から飛びついて来た。





















「あらっ? もう終わったの?」


「ただいま。弱い魔物しかいませんでしたが、殲滅して来ましたよ」


「ノルンがいっぱい倒したにゃ~」


なぜか、首をかしげるナオさん。


「弱い魔物? 作戦は失敗か」


ナオさんが呟くように言うとユウが聞く。


「作戦って? 魔物がこんな場所にいるのはおかしいと思ったけど、何かあったのよね?」


「すみません。……あつしくん達ならと……危険な魔物をこちらの方に誘導する作戦だったのですが、失敗したようです」


「それじゃあ、他の方向に?」


「それって大変なことじゃないの? 他の場所も住人の避難は出来てるの?」


「それが……この地域を優先したので、間に合ってない場所もあると思います」


「あつし。行くわよ」


「ノルンが倒すにゃ~」


「今度は私も沢山倒します」


「仕方ないね。場所は分からないってことだよね」


「はい。まずは1000匹の魔物がこちらに向かってくるはずでした」


「魔物の強さは?」


「S級です。それも1000匹のほとんどがです」


「ん? S級?」


「ノルンに任せるにゃ~」


「それって、あつし?」


「ああ。僕達が倒した魔物の群れだよ」


「え? 倒した?」


「にゃ? ズルイにゃ~。ノルンも戦いたかったにゃ」


「いやいや。ノルンが倒した魔物はS級だっただろ」


「知らないにゃ」


「ノルン様が2本の剣で無双したのが、S級の魔物ですよ」


「そうにゃん?」


「ノルンちゃんが半数以上倒したでしょ」


「にゃ。ごめんにゃ~。ナオちゃんの分を残してないにゃ~」


「え? え? いえ……私では勝てませんので……。あつし様。本当にこの短時間で殲滅を? もちろん疑ってる訳ではないのですが、討ち漏らしがあると……」


「大丈夫ですよ。魔物は1匹も残ってませんから」


「そうですか……。ありがとうございました。本当にあつしくん達はチートなんですね」








僕達はナオさんに何度も何度もお礼を言われ、美味しい美味しい海の幸を振る舞われ、温泉旅行の1日目を終えたのだった。






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