幕間9 リタイア! リタイア? 1位?
あつしくん達がチートだと分かっていたのだが……ここまでとは分かっていなかったよ。
「1日に20階層のペースで進んでますよね」
「ああ、ここまでチートとは思ってなかったよ」
「そうですね。このままでは他のパーティが諦めてしまい、調査が進まない可能性がありますよね」
「そうだな……雷神や疾風は上層階の順位は、気にもしないだろうが、他のパーティは早々に諦めてしまいそうだよな」
「私達はどうしますか?」
「出よう。100階層くらいまでは、いい勝負が出来ると思っていたが、甘すぎたね」
私の部下達は帰還と探索のスキルを検証するためにダンジョンに入っているので、私自らが封印のダンジョンに入ったのだが、すぐに心が折れてしまったよ。
私はたった1か月でリタイアするという不名誉を。
もちろんダンジョンに入った20のパーティで一番にリタイアするという不名誉付き。次の会議で突っ込まれるだろうね。
まあ、あつしくん達が1位になれなくても、上位に食い込むことが出来れば、私の不名誉など、話題にもならなくなるだろうが……雷神、疾風、深淵の3パーティに勝つのは難しいだろう。せめて、4位になってくれれば……。
私は出雲町に残り、他のパーティの調査結果を待つことにしたのだが、さすがは日本屈指のパーティが集まっただけあって、私達以外のパーティは3ヶ月が経ってるというのにリタイアしなかった。
4ヶ月と3日目。
スキルや魔法についての資料を纏めていると部下のナオが慌てて部屋に入って来た。
「ダンジョンから出て来ました。急いでください」
いつも冷静なナオの慌てようから、とんでもないことが起こったのだと理解した私は部屋を飛び出しダンジョンに向かって走り出した。
「で、出て来たのは、あつしくん達なんだね」
「はい……」
やはりそうか。まさか、あつしくん達が2番目にリタイアするとは思ってもみなかったよ。これは次の会議でお叱りを受けるだろうな。
何か言いたげなナオの表情が気になったのだが、私はダンジョンにいち早くたどり着くことを優先し、全力で走り続けた。
ダンジョン近くの部屋を借りていたので、5分も掛からず到着することが出来たのだが……これはいったい何が起こったのだ?
ダンジョン前には猫族、猫族、猫族、猫族、猫族。
100人以上? いや、200人以上か。
あつしくんを見つけた私は全力で、その場まで走る。
「にゃ。パパにゃ」
「お巡りさん~、ただいま~」
「戻りました」
私に気づいたあつしくん達が声をかけてくれた。
「はあ、はあ、はあ。お帰り……。って、彼らはいったい?」
「ノルンの仲間にゃ~」
それは姿を見れば分かるが。
「ふふふっ。連れて来てしまいました」
「え? どこからですか?」
「ノルン達の世界にゃ」
意味が……。いや、それより先に。
「ナオ、すぐに彼等をクトフ様の元に。マスコミが駆け付けてくる前にバスで安全な場所に移動させてください」
「既にサナがバスの手配をしてますよ」
さすが、動きが早い。
「ありがとう、ナオ。で? あつしくん、彼等はどこから連れて来たのでしょうか?」
「ん? ノルンが言ったように、異世界ですよ」
「お巡りさん、封印のダンジョンは異世界と繋がってましたよ」
「伝承は本当だったのですね。もしかして、他の18のパーティは異世界ですか?」
「さあ? 他のパーティには会ってないから分かりませんね」
「あつし、すれ違ってないんだから、まだ500階層にたどり着いてないってことでしょ」
「500階層? あつしくん達は500階層までたどり着いたのですか?」
「600階層にゃ~」
「え?」
ありえるのか? いや、あつしくん達は嘘を言わないだろうから……。
「500階層で繋がってましたよ。こちらから500階層まで下りると、下りの階段とは別に上りの階段がもう1箇所ありました。上って行けば異世界に行けますよ」
「え? たった125日で500階層を2往復?」
「ふふふっ。私のスキルで異世界側の499階層から異世界に。こちら側の499階層から元のこの世界にね」
帰還のスキル。え? それでも1000階層以上進まないといけませんよね?
私は理解出来ていなかったのですが、先に猫族の皆様を安全な場所まで移動してもらうことを優先にした。
あつしくん、ユウさん、ノルンが私の知らない新スキルをまた報告してくれた。限界突破に賢者。賢者に至ってはスキル枠が10も必要みたいだと? それだと手に入れるのは非常に難しいだろう。なぜなら、スキルや魔法は強い思いで#獲得してしまうからだ__・__#。私の部下達も空き枠があると、余計なスキルや魔法を覚えてしまったと言っていた。
更にあつしくん達は501階層より下層で手に入れた様々なアイテムを見せてくれた。レア度からも、あつしくん達の話は疑いの余地がないだろう。
とんでもない話ばかりで、どう報告していいのやら。
私は頭を抱えて、眠れない夜を過ごすことに。
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