22話 スキル! 思い! 獲得!








「サラ? どうかな?」


「すみません。獲得出来ません」


「あつし、何か条件が足りないんじゃないの?」


「いや、鑑定はすぐに覚えれたから条件はないと思うよ。まあ、今はレベル上げがメインだから、焦らなくてもいいんだけどね」

 

「そうね。よし、次は私と一緒にレベル上げよ」


「ユウ様、お願いします」


「ユウ、この道を真っ直ぐ進むといいよ」


「じゃあ、サクッと終わらせてくるね」


サラを背負ったユウは走って進んで行った。


魔物を倒すとその周りにいる人達の身体に経験値というエネルギーが入るのだが、その割合はレベルに決まっている。


自分のレベル➗全員の合計レベル


レベル差があり過ぎると低いレベルの人には、ほとんど経験が入らない。


僕、ユウ、ノルンと一緒ならサラのレベル上げは難しい。


なので、僕達の中の1人とサラの2人でレベル上げをしている。


サラのレベルを2にするにはかなりの時間がかかったのだが、サラのレベルが上がって行くにつれ、サラに入る経験の割合がどんどん上がり、サラのレベルは30日間で78まで上げることが出来た。


サラには鑑定と探索とアイテムボックスと帰還を覚えて貰うので、スキル枠が8つ必要になる。


スキル枠は


レベル1      1

レベル15     2

レベル30     3

レベル50     4

レベル75     5

レベル100    6

レベル150    7

レベル200    8

レベル250    9

レベル300   10

レベル400   11

レベル500   12


なので、サラのスキル枠は5。


スキル枠を8にするにはレベル200まで上げればいい。


僕達は500階層を目指しているのだから、たどり着くまでには覚えることが出来るだろう。


って思っていたのだが……。


















50日目で僕達は430階層まで辿り着いた。


サラのレベルは既に285。


スキル枠は9もあるはずなのに何も覚えることが出来ていない。


「ごめんなさい。才能なくて……」


「それは違うわね。ねえ、あつし」


「だね、サラには才能が眠ってるからスキルがないんだからね。これからだよ」


「そうにゃ。ノルンも遅かったにゃ」


……ノルンの場合はスキルを覚えて貰うのを忘れていたのだが……もしかすると異世界人には時間がかかるのだろうか。


「まだ焦る必要はないよ。他の猫族達は1日に4階層のペースで進むって言ってたから……今は……200階層辺りだろうからね」


「そうよ。レベル500以上の戦士が3人もいるんだから、まだまだ苦戦する階層じゃないのよ」


彼等が400階層にたどり着く辺りには、そこまで戻って合流した方がいいだろうが、まだ50日くらいの余裕がある。
















更に10日が経ち、60日目。


サラのレベルが300に。


「サラ、願うんだ。鑑定のスキルが欲しいと。アイテムボックスのスキルが欲しいと」


サラは祈るように手を合わせて呟く。


「鑑定のスキルを私にください」


サラは祈るように手を合わせたまま呟き続けた。


「私にアイテムボックスのスキルをください」





しかしダメだった。


「私にはやっぱり才能が……」


落ち込むサラ。


「ノルン。ノルンが覚えた時はどうだった?」


僕がノルンに聞くとノルンは少し考えてから口を開いた。


「負けたくなかったにゃ。強くなりたかったにゃ。強く強く願ったにゃ」


ノルンが真剣な表情でそう言うとサラが呟く。呟いてしまった。


「強く強く……私も強くなりたい。


サラが驚いた表情に。


「サラ? どうした?」


「サラちゃん、覚えたの?」


「にゃ? 覚えたにゃん?」


サラは申し訳無さそうに口を開いた。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


何度も謝るサラ。


「謝らなくていいんだよ。まだまだ時間の余裕はあるんだからね」


「違うんです。ごめんなさい」


「サラちゃん? 何が違うの?」


「ごめんなさい。覚えてしまいました」


「あ~、なるほどね。でも大丈夫だよ。スキル枠は10もあるんだからね」


「何を覚えたにゃん?」


「その……私も戦えるようになりたくて……。だから覚えてしまったみたいです。賢者というスキルを」


「へえ~。賢者か。どんなスキルなんだろ」


「初めて聞くスキルね。あれ? ノルンちゃん、どうしたの?」


「ノルン?」


僕とユウと違い、ノルンは口を大きく開けたまま驚いているのだが?


「にゃ、にゃ、賢者にゃ。伝説の英雄のスキルにゃ~」


「伝説? 伝説の英雄って?」


「ノルン様?」


「サラは凄いにゃ。勇者のスキルと賢者のスキルが最強だって言われてるにゃ」


「最強のスキルか。サラ、おめでとう」


「ふふふっ、サラちゃんには、やっぱり才能があったのね」


「え? 私が……凄い?」


「凄いにゃ。サラは最強にゃ」


「私が……」


「あ~、忘れていたよ。ごめんね、サラ」


「え? あつし様?」


「スキルはね、思いの強さで獲得出来るんだったよ。サラが望んでもないスキルを僕達が押し付けようとしても、覚えられないのは当たり前だよね」


「ふふふっ。戦う力を手に入れたかったサラちゃんに、補助系のスキルは無理があったのね」


「ごめんなさい」


サラはもう一度謝って来たのだが、その表情は希望に満ち溢れていた。










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