16話 笑顔! 不安な笑顔! 危険な笑顔!
「追いついたにゃ~」
「おめでとう、ノルンちゃん」
「おめでとう。僕達も負けてられないね」
100階層のボスを倒すと、ついにノルンのレベルが僕達に追いついた。
ノルン
レベル65
HP1888/1936(+200)
MP772/784(+200)
力 680
耐久力 168
抵抗力 168
素早さ 424
知力 168
器用さ 296
運 296
SSS級の剣
SSS級の鎧
SSS級の盾
S級の罠無効の指輪
S級の成長率上昇の指輪
S級のHPの指輪
S級のMPの指輪
剣士の指輪
ノルンと僕とユウはステータス値も装備品も同じ。ノルンは異世界人だから違いがあるのだと思っていたのだが、全く変わらない。猫耳なだけで、それ以外は普通の……いや、可愛い可愛い女の子。
僕とユウも戦闘に参加することになったので、ダンジョン攻略スピードは飛躍的に上がった。まあ、経験値は3等分になるので、レベルは上がりにくくなったのだが……無双出来ている僕達は気にすることなく、どんどん進んで行く。
「あつし。そろそろダンジョンを出る?」
「う~ん、そうだね。潜伏は3ヶ月間くらいで良いって言ってたからね」
「ノルンはもっと強くなりたいにゃ」
「あまり遅くなると心配されちゃうわよ」
「だね。ノルン、ここまでにしようか」
「もう少しだけにゃ~。301階層まででいいにゃ」
「う~ん、ダンジョンならいつでも来れるよ」
「あつし。300階層までなら、いいんじゃない。後、2日くらいでたどり着くだろうし」
「まあ、予定3ヶ月で2日遅れなら誤差の範囲か」
「やったにゃ。これでノルンはS級冒険者になれるにゃ」
「S級冒険者? ノルンちゃん、異世界では300階層にたどり着いたらS級冒険者になれるね?」
「違うにゃ。301階層にゃ。300階層までがA級冒険者にゃ」
「ノルン。もしかして、301階層からS級の魔鋼石が取れるようになるってこと?」
「そうにゃ」
「ノルンちゃん。SSS級は?」
「501階層からにゃ」
「えっ? ってことはあの地竜は501階層からの魔物だったの」
「う~ん。そこまでは強そうじゃなかったから、あのポーションを使うと宝箱のレア度の方が上がりやすいんじゃないかな」
「にゃ? ドラゴンは強いにゃ。本気じゃなかっただけにゃ」
「そうなの?」
「あ~、なら、おじいちゃん家のダンジョンは100階層のボス部屋は封印だね」
僕達はいつものように階段の中腹で休むことにした。
「今日は夜の訓練に行かないにゃ?」
首を傾げるノルン。
「今日はこのまま寝るよ。昨日、いっぱいしてきたからね。ねえ、あつし」
「え? う、うん」
僕が動揺してると、ユウはクスクス笑いながら僕の右肩に頭を預けてきた。
「ノルンもにゃ」
僕の左肩に頭を預けてきたノルン。
クスクス笑い続けるユウ。
ニコニコ笑うノルン。
僕は両手に花で嬉しいのだが……ユウとイチャつくことも出来ず、もちろんノルンに手を出すことも出来ず、眠れない夜を過ごすことに。嬉しいんだけど、心臓に悪いよ。
「おはよう、あつし」
唇の感触でユウがおはようのキスをしてくれたのが分かる。そして、またキス?
僕が目を開けるとノルンだった。
「おはようにゃ」
「お、おはよう?」
僕が動揺しながらユウを見るとクスクス笑っていた。
「おはよう、ユウ?」
「ふふふっ。ノルンちゃんもあつしのことが好きなんだって」
いやいや。嬉しいけど、嬉しいけど、それをユウが言う? ん~、これは、きっと罠だよね。
僕はユウの手を強引に引いて抱きしめた。
「僕が好きなのはユウだけだよ」
「えへへ。私は~あつしとノルンちゃんが好きかな~」
ユウの視線の先は……。
「ユウ。ノルンの猫耳を触りたいだけなんじゃ」
「え? うん」
動揺したユウ。ずばりだったみたいだ。
「ノルンに頼んで触らしてもらえばいいだろ」
「ダメだって。耳は大切な人にしか触らせられないって」
そうなんだ。
「ノルンは好きな人いるの?」
「ノルンはあつしが好きにゃ。耳触ってもいいにゃ~」
笑顔のノルン。可愛い可愛いノルン。
「ノルン。僕はユウが好きなんだ」
「知ってるにゃ。ノルンのことは嫌いにゃん?」
「嫌いじゃないよ」
「あつし。好きなら好きとビシッと言って、ノルンちゃんを抱きしめてあげないと」
だから、それをユウが僕に言う?
「ユウ。フザケてるだけだと思うけど、適当なことを言わないの」
「私はあつしと違って真剣に考えたわよ」
ん? 真剣に?
ユウの顔は真剣そのもの……。
「ユウ?」
「あつし。ノルンちゃんはこの世界で隠れて生活していくんだよ。ノルンちゃんと同じ種族は家族しかいないこの世界でね。ノルンちゃんを守るって約束したよね。守るのはノルンちゃんの幸せなんだよ」
ノルンの幸せ? ……を守る? 家族しかいない世界か。その家族とも……。僕がその立場なら……不安で不安で……。
笑顔で僕を見つめているノルン。明るく見えるが本当は不安で不安で仕方ないのかも知れない。
ユウを裏切るような行為は出来ないけど、もう少し優しく接しないといけないのだろう。
って思っていたのに、その晩にノルンと一線を越えてしまった。
そして朝になると笑顔のユウに……殴られた。
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