第10話 新スキル! 新スキル! 覚えれない?





「これをかければいいのね」


ユウは100階層のボス部屋の入口の扉にお巡りさんから貰ったポーションを振りかけた。100階層のボス部屋の中にある宝箱は高確率で良い物が入っているそうなのだが、お巡りさんに貰ったポーションをかけることによってレア度が上昇するのだそうだ。


「ユウ。すぐに入ろうとしない」


「分かってるわよ。1日くらい時間を置かないとダメなんでしょ」


「それよりもレベルを上げないと。僕達はまだレベル50なんだからね」


「あつしは慎重すぎるのよ。このボス部屋の宝を回収したら帰るんだから、さっさと終わらせましょ」


「ダメだって。宝のレア度が上昇するのと同時にボスの強さも上がるって言ってただろ。せめてレベル100まで上げないと」


「そんなに上げなくても大丈夫だって」


「はあ~。じゃあ、宝箱を見つけるついでにレベル上げをするよ。このダンジョンは92階層までしか攻略されてなかったんだから93から100階層までの宝箱を全て回収するからね。これくらい下層だと上級ポーションが入ってる可能性があるだろうからね」


 100階層までで上級ポーションが出たという報告は非常に少ないそうなのだが、こうでも言わないとユウがすぐにボス部屋に入ってしまいそうだからね。


「あっ!」


急にユウが声を上げ、立ち止まる。


「ユウ? どうした?」


「覚えちゃった……みたい?」


「新しいスキル? そう言えばレベル15になれば2つ目のスキルを覚えることが出来たんだよね。で? 何を覚えたの?」


「ないって言われてた、あのスキル」


ユウは戸惑いながら言った。既にダンジョンが出現してから8年も経っているので新スキルや新魔法が見つかることは少なくなっているのだが。


「てことは……宝箱を発見出来そうな、探索みたいなスキルだね」


「うんん。帰還のスキルよ」


「は? 報告したら賞金10億円だったよね。ダンジョンを出ることが出来るスキルで間違いないんだよね?」


「うん。洞窟の中の階段の前に帰還出来るみたいだよ」


「さすがユウだね。また未知のスキルを覚えるなんて」


「えへへ。条件は100階層到達かな? もしくはボス部屋の近く?」


「100階層到達した人は多いだろうから……アイテムボックス持ちで100階層到達とか複数の条件があるかもね」


「今なら他にも特別なスキルが覚えれるかも」


ユウは笑顔でそう言うと、目を閉じ、祈るように手の平を合わせた。「回復魔法」と呟くユウ。しばらくすると「探索」と呟くユウ。更に祈り続け、「神速剣」と呟いた。






「ユウ? 何か覚えた?」


「うんん。何も? あつしは?」


「え? 僕? 僕は何も」


「も~。時間があったんだから、あつしも試せばよかったでしょ」


「ごめん。ユウが心配でね」


僕がユウの頭を撫で、微笑みかけるとユウは苦笑い。


「あつし。ごめんね。ママのことで、私、焦ってるよね」


「大丈夫、大丈夫だよ。ユウの母親ならたぶん……」


「あつし?」


「お巡りさんの部下らしき女性が2人いたよね」


「うん。アイテムボックス持ちの女性だよね」


「いや、もう1人の女性の方。HPも高かったんだけどMPが異常に高かったんだよ。きっと高レベルの魔法使いだったと思うよ」


「あっ。回復魔法使い。 あれ? 上級回復魔法は見つかってないのよね?」


「冒険者ギルドのホームページには載ってないよね。でも回復魔法は初級回復魔法、中級回復魔法って名前だよ。絶対に上級回復はあるよね」


「そうだけど、見つかってないよ?」


「ユウがアイテムボックスを覚えたと知らせてから冒険者ギルドがどれくらい経ってからホームページに載せたのか覚えてる?」


「1年……。隠してる? 上級回復は既に。あの女性が」


「だとすると、お巡りさんの余裕の笑みの理由が分かるよね」


「そうよね。あんな博打みたいな方法じゃ、あんなに自信は……。じゃあ、ママは」


「僕はお巡りさんが治してくれると信じてるけど、絶対とは言えない。ユウ、1度戻ってみる?」


「……私もそう思う。これは、きっと何かの取引ね。こっそり治してくれるなら3人では来ない。あつしのお兄さんにも見つからないように回復魔法を使える女性だけを連れてくるよ」


「取引?」


「お巡りさんには何か目的があったのよ。でもないとこんな高級なアイテムを貸してくれたりしないよ。もしくは……実験。最強の人を作る方法を考えてるのかもね」


「最強。英雄がどうだとか言ってたよね」


「あつし。レベルを上げて100階層のボスを倒すわよ。冷静に考えたら、お巡りさんが上級ポーションを手に入れられないってのも怪しいわよね。ダンジョン入口で魔鋼石を採掘出来るダンジョンがあると政府に伝えたのもお巡りさんだろうから、今までの手柄を考えると駅前の交番勤務ってのは仮の姿。きっと、それなりの地位があるはずよ」


「お巡りさんなら、無理なお願いはして来ないだろうけど、何か条件を出してきたら僕も手伝うよ」


「ありがとう、あつし。サクッと終わらせるために探索系のスキルが欲しいのに。条件が揃ってる回復魔法も神速剣も覚えれないし……。あつしはどう?」


「ん? 僕は……あれ?」


「あつし?」


「本当に覚えちゃったよ。ユウが欲しがってた探索スキルを」


「さすがあつしね。神速剣は? あれがあれば戦闘がかなり有利にならしいわよ」


「……無理みたい。僕も条件をみたしてるんだけど……」


この覚えれないというユウとあつしの大発見により、日本は他の国より優位に立つことが出来るようになるのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る