第6話 裏ワザ! 危険! 高収入!





僕とユウは魔鋼石の採掘を続けた。学校には行ってないのだが、国の仕事を手伝っていることになってるらしく、退学にはならないらしい。それどころか、テストで赤点にならなければ、ちゃんと卒業出来るのだそうだ。













「あつし。スズがダンジョンの授業でとんでもない宝をみつけたって」


「とんでもない?」


「成長率上昇の指輪だってよ」


「あ~、高価買取のリストに載ってた指輪だね」


「そう。20億円だって大騒ぎみたいよ」


「凄っ。僕の今の収入の200日分だね」


「ふふふっ。それじゃあ、私達もダンジョンに入ってお宝探しをしてみる?」


「いや。スライムなんて2度とみたくないからね」


「ふふふっ。じゃあ、私達は堅実に稼ごうね」


「ユウがダンジョンに入りたいなら、止めないよ」


「私はあつしと一緒なら、魔鋼石の採掘でも、ダンジョンで宝探しでも構わないよ」


僕に微笑んでくれるユウ。


「ユウ」


僕はユウを抱きしめた。


「ふふふっ。今日はお休みにするの?」


「いや。ユウの両親が待機してくれてるから、続きは終わってからにしよう」


僕達は休まずに魔鋼石の採掘を続けた。ダンジョンが発見されて195日目、僕はユウと一緒に勉強もしてたので、ギリで3年生になれることに。










「あつし。お前が学校に来るなんて珍しいな」


教室に入ると親友のショウが駆け寄って来てくれた。


「まあ、新学年の1日目だからね」


「で? まだF級の魔鋼石の採掘を続けるのか? 時代はD級かE級の武具を必要としてるんだぞ」


「そうみたいだね。でも初心者や大金を払えない人には、まだまだF級の武具が売れるんだよ」


買取価格

F級魔鋼石1キロ→千円

E級魔鋼石1キロ→3万円

D級魔鋼石1キロ→60万円


販売価格

F級の剣→3万円

F級の槍→4万円

F級の大剣→10万円

F級の杖→3万円

F級の鎧→10万円

F級の盾→3万円


E級の剣→30万円

E級の槍→40万円

E級の大剣→100万円

E級の杖→30万円

E級の鎧→100万円

E級の盾→30万円


D級の剣→600万円

D級の槍→800万円

D級の大剣→2000万円

D級の杖→600万円

D級の鎧→2000万円

D級の盾→600万円


下級ポーション→1万円

中級ポーション→50万円

上級ポーション→5千万円

特上ポーション→50億円


F級の魔鋼石を採掘している人は少ない。理由はもちろん、儲からないから。アイテムボックスを持ってない人がダンジョン5階層から10キロの魔鋼石を頑張って運んでも1万円。かかる日数は2~3日。日給3千円~5千円程度なのだから、僕達の競合相手はほぼいなくて、独占状態なのだ。アイテムボックスがある人ならって思うかも知れないが、アイテムボックス持ちはもっと楽でお得な仕事が山のようにあるので、競合相手にはならない。まあ、魔鋼石で生成したツルハシを持ってるのが僕だけみたいなんだよね。他の人達は剣や魔法等で採掘していて効率が物凄く悪いらしいからね。


「そう言われるとクラスメートのほとんどがF級装備だったよな」


「ショウがクラスの中では一番進んでるんだろ」


「当たり前だろ。経験が違うし、俺達の装備はD級だからな」


「何度も言ってるけど、死なないように気をつけろよ」


「ああ。無理して先には進まないさ。うちの学校は死者も行方不明も0だが、日本全土でいうと、めちゃめちゃ死人が出てるらしいからな」


ダンジョン20階層までは魔物との戦闘で死ぬことがないと日本政府が発表した。そして21階層からは魔物との戦闘で怪我もするし、HPが0になると死ぬことになると。ダンジョンが現れてから219日目の今日までの死者数は日本だけでも5万人を越えたと言われている。行方不明の数も合わせると20万人を越えるとも言われているらしいのだ。












翌日、僕とユウはお巡りさんに呼び出された。何か相談があるらしい。……買取価格が下がる話かも。




「今日はあつしくんとユウさんに相談があってね」


お巡りさんはすぐに本題に入った。


「やはり値下げ?」


ユウがそう言うとお巡りさんは首を横に振った。


「裏ワザが発見されたんだ。採掘場所の魔鋼石の等級を上げる裏ワザがね。あっ、これは絶対に秘密にしてくれよ」


「等級を上げる? F級の魔鋼石がE級の魔鋼石になるってこと?」


「そうだ。更に上の等級の魔鋼石にすることも可能なんだ」


おおっ。それは凄い。ん? 相談? お願いじゃなくて?


「あつし。これからはもっと稼げるね」


ユウは笑顔だが、お巡りさんは真剣な顔をしている。


「お願いじゃなくて、相談っていうのは?」


僕が質問すると、お巡りさんは少し間を開けて話し始めた。


「この裏ワザのメリットは非常に大きい」


あっ。デメリットも大きいってことなのか。


ユウも察したのか笑顔が消え、呟く。


「デメリット」


「ああ、そうだ。E級の魔鋼石に変化させれば、その階層に出てくる魔物も強くなってしまうと分かっている。採掘場所が2階層で、E級の魔鋼石に変化させると、2階層なのに21階層の魔物になる。そして1階層が、20階層の魔物に。3階層の魔物は22階層の魔物に。攻略が難しいダンジョンになってしまうんだ。あつしくん達が秘密にしているダンジョンの採掘場所は浅い階層だと思うが、魔物が強くなってしまうんだ」


魔物が強くか。どうせ、階段を下りないから関係ないデメリットだよね。


ユウも理解したのか表情が明るくなっている。


「で? どうやるの?」


「やってくれるのか?」


「もちろん。ねえ、あつし」


「だね。方法をお願いします」


「本当に無理はしないでくれよ。攻略が不可能になったら、あつしくん達が秘密にしているダンジョンを政府が買取してもいいんだからな」


「その時はお願いしますね」


「もちろんだ。あつしくん達なら、魔鋼石の壁が再生されているのは知ってるよね」


「はい。採掘しても、翌日には元の状態に戻りますね」


「その通り。その再生を利用するのが、裏ワザなんだ。採掘した壁に等級の高い魔鋼石を埋め込むと等級の高い魔鋼石で再生されると分かった」


「それは凄いですね。さっそく帰ってから埋め込んでみますね」


「お巡りさん。等級は何でもいいの?」


「3つ上の等級までだな。F級ならC級まで。もちろんC級の魔鋼石にしてしまうと、81階層の魔物になってしまう。あつしくん達では無理なんだよ」


「ですね」


「で? どの等級にする? 魔鋼石はこちらで用意するが」


「「 C級で 」」


僕とユウは口を揃えて言った。


お巡りさんは苦笑い。


「話聞いてたかな? 等級は下げることは出来ないんだぞ」





















お巡りさんは困惑した表情で固まっている。


「全てが……C級の魔鋼石???」


そしてそう呟いた。


「買取価格はお任せで」


「ちょっと、上司に相談させてくれ。さすがに2万キロは……」


冒険者ギルドに載っている買取価格は

F級魔鋼石1キロ→千円

E級魔鋼石1キロ→3万円

D級魔鋼石1キロ→60万円

C級魔鋼石1キロ→1千万円


この買取価格で計算すると2千億円になってしまうからね。


待っている間に冒険者ギルドのホームページを見ているといきなり買取価格が更新された。


F級魔鋼石1キロ→千円

E級魔鋼石1キロ→1万円

D級魔鋼石1キロ→10万円

C級魔鋼石1キロ→50万円


ってことは、2万キロで100億円? 今まで稼いだお金よりも多いんだけど?


お巡りさんが戻ってきて、申し訳なさそうに言う。


「今日の買取価格は1千億円で、明日からは100億円にしてほしいそうだが……」


「え? そんなに高額で買い取ってくれるの?」


「いいのか? 本当なら倍の値段になるのだが……」


「是非お願いします」


「ふふふっ。またすぐに暴落しそうだから、休みなしね」


「そうなるね。稼げる時に稼いでおかないとね」


「はぁ~。まだはっきりとは言えないが海外の安い国と比べても日本の方が安くなると思う。輸出することにもなりそうだから、しばらくはこれ以上暴落しないと思うよ」


どの国もダンジョン攻略に力を入れている。なので、強い武具はどの国も欲している。僕達から買い取った魔鋼石はすぐに武具に生成され、10倍以上の値段で販売されるため、損することはないらしい。まあ、魔鋼石の採掘で利益を得ていた人達は困惑するだろうけどね。






僕達の貯金は意味の分からない額になっていくのだった。


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