第3話 値下がり! 値下がり! 値下がり!




たった2日で618万円も稼いでしまった。兄達はもっと稼いでいるらしいが。


明日も10キロか。ん? 待てよ。兄以外にも売れるのか?


冒険者ギルドのホームページを見ると魔鋼石求むの募集が沢山。買取価格は……1キロ……剣の値段の十分の一? 


どうやら剣を生成するのに魔鋼石が1キロ必要なようだ。


お兄ちゃんはこのレートで僕から買ってるのか。ダンジョンに入る人が増えたらすぐにレートが下がりそうだよね。やっぱり今の内に稼いでおかないと。







メッセージでユウに相談すると……


【私を1日1万円で雇いなさい。私の母も1日1万円ね】


【もっと払えるよ。最初だけになるけど】


【1万円で十分だよ~。まあ~あつしの稼ぎは私の稼ぎだよね~】


【ユウがいいなら】


【あのダンジョンは2人だけの秘密だね】


僕の部屋の窓の外のダンジョンは僕とユウしか知らない。親友のショウには祖父の家の裏山でダンジョンが見つかったとだけ。兄や両親には友達の家で見つかったと嘘を。















「重い~。重いよ、あつし~。あまりいっぱい入れないでよ~」


僕が採掘してバケツに魔鋼石を入れるとユウがユウの母親の車まで運んでくれている。


「後2杯で終わりだから、頑張って」


「ぶ~。ちょっとって言ってたのに~。2万円にするからね」


「何万円でも上げるから、頑張って」


ユウは愚痴りながらもバケツを20杯も車に運んでくれた。











冒険者ギルドのホームページに魔鋼石売りますと書き込みしてたので、待ち合わせの駅前の交番まで移動してもらう。


「ほんとに、こんな石が高く売れるの?」


ユウの母親がバケツに入った魔鋼石を見ながら首をかしげる。


「今だけですけど、売れますよ。世界にダンジョンが出来てまだ8日目ですからね」


武具を持たない人は2階層より先に進むのは難しいらしい。まあ、素手で戦うことに慣れてる格闘家なら、もっと進めるのかも知れないが。


「やだっ。ここダメだったかしら?」


運転席の横に交番から出てきた警察官が。


ユウの母親が窓を開けると……。


「ニックネーム:お巡りさんです」


警察官がそう言った。


え? この人が取引相手?


話しを聞くと警察や自衛隊も大量に武具を必要にしているのだと。全然足りてないので、あるだけ欲しいのだと。








「200キロで2億4千万円ですね。よろしいですか?」


「ちょっと、あつしくん? どうなの?」


警察官の問にユウの母親はパニックに。


「ちょっと待ってくださいね」


僕はスマホを取出し値段を確認する。


F級の剣→1200万円

F級の槍→1600万円

F級の大剣→4千万円

F級の杖→1200万円

F級の鎧→4千万円

F級の盾→1200万円

下級ポーション→3千万円

中級ポーション→3億万円

上級ポーション→200億円


また上がったのか。120万円✕200キロだから、合ってるのか。


「お願いします。お巡りさんは魔鋼石を見分けられるんですか?」


僕が聞くと警察官は笑いながら教えてくれた。


「僕は武具生成のスキル持ちなんだよ。だからこの石がF級の魔鋼石だって触れば分かるのさ」


そうなんだ。お兄ちゃんと同じスキルなのか。


「ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとう。夕方までには振り込まれるようにするからね。それから、まだ手に入りそうなら、また頼んでもいいかな?」


「いいですけど、量は?」


「いくらでも買うよ。全然武具が足りてないからね」


「え? でも自分達で採掘すれば?」


「ん? 何かいい方法があるのですか?」


あれ? 質問返し?


僕が困惑していると警察官が笑いながら教えてくれた。


「私達が知ってるダンジョンの中で、もっとも近い採掘ポイントが7階層なんだよ。真っ直ぐ進んでも片道3日。重い魔鋼石を運びながら魔物と戦うのはね」


片道3日? 往復で6日ってことか。それに7階層まで辿り着くには武具を手に入れて、レベルも上げないと厳しいそうだよね。


「そうですよね……。ちなみに……ポーションが高い理由は分かりますか?」


「あ~それはね。ポーションがあれば不治の病と言われてる病気が治ったり、欠損している身体が治ったりするからだよ。まあ、治らない病もあるかも知れないけど、上級ポーションなら大概の病はね」


「そうだったのですか。ありがとうございました」


「ちなみにポーションのように回復することが出来る魔法を覚えた人もいるんだ。回復魔法使いが増えるとポーションの値段が下がると思うよ。まあ、今は初級回復魔法しか使えないようだから、下級ポーションがまずは安くなるだろうね」


「魔鋼石は?」


「さあ~どうだろうか? まだしばらくはこのままかな? 今が最高値だと言われてるけど、昨日も同じこと言ってたからね。分かってることはまだまだ足りないってこと。いくらでも買うから、また頼むよ」




















夕方に僕の口座を確認すると、約束通りお金が振り込まれていた。


警察官だから信用出来るようだ。って思っていたのだが……。








「あつし。おじいちゃんの山のダンジョンに警察や自衛隊が入りたいって言ってきたそうよ」


夕食時に母親がそう言った。


こっそり僕の周りを調べたのか。僕が原因だと分かれば、お兄ちゃんに怒られるかな?


「お兄ちゃん達、何か言ってた?」


「ふふふっ。入場料を払って貰えることになって、喜んでたわよ。1人1万円だってよ」


「1万円? う~ん、安いのか高いのか分からないね」


「500人くらい来るそうよ。何もしないで500万円。お兄ちゃんの生成した武具も全て買ってくれるそうよ」


おじいちゃんのダンジョンの採掘ポイントは5階層だって言ってたかな? 500人で台車を使って運べば……。そろそろ値下がりしそうだね。















翌日もニックネーム:お巡りさんに魔鋼石200キロを買って貰うことが出来た。




F級の剣→1200万円

F級の槍→1600万円

F級の大剣→4千万円

F級の杖→1200万円

F級の鎧→4千万円

F級の盾→1200万円

下級ポーション→30万円

中級ポーション→3億万円

上級ポーション→200億円


レートは昨日と同じ? ん?


僕がスマホを見て驚いていると……。


「あ~。下級ポーションの値下がりだろ? 初級回復魔法を覚える方法が分かったからだよ」


「方法ですか?」


「ああ。医療知識が高い人がダンジョンで回復魔法を覚えたいと強く願えば、高確率で覚えることが出来るようだよ。まあ、医療知識がない人でも覚えた人もいるんだけどね。スキルや魔法は強い思いで覚えるらしいよ。ちなみに僕はゴブリンから逃げてる時に武具生成を覚えたんだ。武器が欲しいと強く願っていたからね」


「ん? それなら、沢山願えば沢山スキルや魔法が?」


「ははは。それは無理みたいだよ。レベルが低い人で2つ以上覚えた人はいないみたいなんだ。レベルが上がれば2つ目を覚えたと報告されてるけど、まだ情報が少なすぎてはっきりしてないんだよね」


「そうでしたか。ありがとうございました」
















今日の取引は兄とお巡りさんだけではない。


大病院の入口近くの駐車スペースでニックネーム:お医者さんと取引することに。


相手が誰なのかなんとなく分かってました。


もちろんお医者さんでしたよ。




そして最後はニックネーム:学者さん。


「ほうほう。これは珍しい。剣や槍での採掘ではないようですね」


学者さんは魔鋼石を手に取り、凝視しながら言った。


剣や槍で? ツルハシは使わないのかな?











「お医者さんは分かるけど、学者さんが大金を用意出来るのかな?」


大学から出るとユウが不思議そうに聞いてきた。


「あれ? ユウは気づいてなかったの?」


「え?」


ユウは気づいてなかったようだが、ユウの母親は分かっていたようで笑う。


「ふふふっ。お金は全て警察からみたいよね。もしくは政府かな?」


「え? どう言うこと?」


「ふふふっ。病院に行く時も大学に行く時もお巡りさんが覆面でついて来てたわよ」


へえー、そうなのか。


「あつしも気づいてたの?」


「いいや。でも知ってたよ。冒険者ギルドのホームページは政府が作ってるってね。そして売却の書き込みは誰でも出来るけど、購入は誰も書き込めないそうだよ」


僕は兄から教えて貰った情報を話して聞かせた。


「それじゃあ……全てお巡りさんに売ってもよかったんじゃあ?」


ユウは少し呆れたように言った。


「それだと聞かれてしまうよね。大量に手に入る方法を」


「え? バレてるんだよね?」


「バレてないって思ってるって思われてるから、聞かれないよね」


「え? え?」


「まあ、僕の周りは色々と調べられてるみたいだよ。ショウが見つけた空き家のダンジョンに警察が来たって言ってたし」


「ショウくんもダンジョンに?」


「僕にも秘密にしてたみたいだけど、僕のせいで警察につけられたんだと思うよ」


「そうなんだ……。あつしはショウくんが隠してたの知ってたの?」


「うん。ショウのレベルが5だったから、すぐに分かったよ」


「そう言えば、あつしもスキル持ちだったね」


「まあ、あまり役に立ちそうにないスキルだけどね」


「あつしの周りの人でレベル高い人は沢山いるの?」


「クラスではショウとナナだけかな。たぶん2人はね」


「あっ。付き合ってるんだ。へえー、そうなんだ」


「たぶんだよ。親友の僕にも言わないんだから、秘密でね」


「他には?」


「いないかな? ちなみにショウとナナのレベルが5。お巡りさんのレベルが11。そして、お兄ちゃんのレベルは15で、お父さんのレベルが10だったよ」


「あつしのお兄ちゃんのレベル高いね」


「まあ、スタートダッシュしたみたいだからね。大学サボって、従兄妹達と一緒に毎日入ってるらしいよ」


「両親は何も言わないの?」


「何も。世界の価値観が変化したって、説得されたらしいけどね。母さんが、ミイラ取りがミイラになったって言ってたから、父さんが説得しようとして、逆に説得されたんだろうね」


「確かにこんなに稼げるんだったらね」


「まあ、すぐに武具のレートは下がるみたいだよ。国を上げてダンジョンに挑戦して、武具の輸出に力を入れる国が増えてるみたいだからね」


「日本だけじゃないのか……。だったら、諦めて……もっと大量に売りましょ。明日が最後のチャンスだと思って」


最後のチャンスか。そう踏ん切りをつければバレても……。このまま隠し通すのは難しそう出し……同じ方法で採掘する人が増えれば一気に……。


「よし。明日で最後にしようか」

















って、頑張り過ぎました。


「……今日は500キロですか」


「いえ、まだまだ大量にあります。どうしますか?」


今日はトラックを借りて運んで貰ったのたが、張り切り過ぎて、まだまだまだ大量に。


「もちろん買わせてください」


F級の剣→600万円

F級の槍→800万円

F級の大剣→2千万円

F級の杖→600万円

F級の鎧→2千万円

F級の盾→600万円

下級ポーション→3万円

中級ポーション→2千万円

上級ポーション→100億円


レートは昨日よりかなり下がっていたのだが……トラックで何度も往復してもらい……。


「2000キロで12億円ですね」















翌日も同じ量を持ち込むと、さすがにお巡りさんも苦笑い。


レートはかなり下がっていたのだが、まだまだ凄い金額に。


F級の剣→60万円

F級の槍→80万円

F級の大剣→200万円

F級の杖→60万円

F級の鎧→200万円

F級の盾→60万円

下級ポーション→3万円

中級ポーション→2千万円

上級ポーション→100億円


「2000キロで1億2千万円ですけど、いいですか?」


「はい。よろしくお願いします」


「ちなみに……明日は?」


「明日も同じ量を持って来ますよ」


「そうですか……。お願いします」


困惑顔のお巡りさんを残して帰宅。













更に更にレートは下がっていたのだが……。


F級の剣→6万円

F級の槍→8万円

F級の大剣→20万円

F級の杖→6万円

F級の鎧→20万円

F級の盾→6万円

下級ポーション→1万円

中級ポーション→500万円

上級ポーション→10億円



「2000キロで1200万円ですけど?」


「お願いします」


「本当に?」


武具が安くなったことで、ダンジョンを深くまで潜れる人が増えて、ポーションもかなり安くなってるみたいだ。それに、強く願えばスキルが手に入ると知れ渡り、武具生成や回復魔法を使える人達が増えているのだと。



僕達が帰ろうとすると明日のレートの紙を渡してくれたのだが?


F級の剣→6万円

F級の槍→8万円

F級の大剣→20万円

F級の杖→6万円

F級の鎧→20万円

F級の盾→6万円


今日と変わらないのだが?


「これは?」


僕が聞くとお巡りさんは言いにくいそうに……。


「武具の値段はしばらくはこのままにするようですが、魔鋼石の買取価格は1キロで千円にするようですね。すみません」













ってことで翌日は……。


「2000キロで200万円ですけど?」


「よろしくお願いします」


かなりかなり安くなったのだが、1日で200万円は凄いよね。1キロ100円になったとしても20万円になるから続けてもいいよね~。






僕達は日給200万円の魔鋼石の採掘を続けることに。









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