北海道 雪佳 菜望

「西条さん、次どこでしょうか?」

「…次は西です。」


急ぎましょう。と淡々と話を進める少女。その瞳はどこか虚ろだ。肩で切り揃えられた髪は艶がかっている。上は和装だが下は動きやすいようにパンツを履いている。斬新なファッションだ。髪を靡かせて歩き出した少女の名を雪佳 菜望せっか なのという。








「氷山様っ!わたくしも戦えますっ!!」

「……いい、俺がやる。下がっていろ。」


ぐっと唇を噛む菜望。その顔には後悔が滲み出ている。どうしていつもわたくしには戦わせて貰えないのだろうと戦う氷山をぼーっと見ながら考えていた。首につけている武器をしまったブローチに触る。


「………冷たい…。」


それは氷山なのだろうか、菜望の心なのだろうか。それとも単にブローチが冷たかったのだろうか。


「………菜望様…。」

「いいのよ、西条さん。わたくしが弱いのです。わたくしが悪いのです。なにもかも…。」


そう、わたくしが…。とうわ言のように呟く菜望を見て拳を握る西条 弥生さいじょう やよい。菜望の護衛官だ。菜望様はなにも悪くないのにと苦しそうに心の中で思っていても声には出さない。口に出せない思いはやがて氷山を憎ましく思う気持ちに変わっていった。



~ 北海道 厄祓い神 雪佳 菜望 ~

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