東京都 桜恋 咲葉

「その悪祓って魅せましょう」


目の前の彼の相棒、菊乃華 恋歌が桜のチャームが付いたネックレスから扇を出す。技名を言うとその扇からどこからともなく桜が出てくる。その桜を彼の能力で一層鋭くする。


「風顕現・竜巻かぜけんげん・たつまき


彼の薄い唇から技名が紡がれる。標的だった悪は一瞬にして桜と化した。それを見た民衆は恋歌に集る。それを見てすぐに距離を置く咲葉。護衛官の愛利がすぐに民衆を端に寄せた。きょろきょろと恋歌が何かを探す。


「あ、桜恋君……あの、ありがとう。」


遠慮がちに彼に対して礼の言葉を言う。彼じゃない他の誰かだったらきっと鼻血を出して卒倒していただろう。だが、彼は聖女のような恋歌の容姿で卒倒する程やわじゃなかった。


「………礼なんかいい。お前が言う事じゃない。」


と返すと恋歌は少しだけ切ない顔をした。いい、これでいいんだ。と心の中で繰り返す咲葉。恋歌だけでなく女性に対して冷たい態度を取る咲葉。それはゆえに恋人を殺されたからという事も人間が変な感情を持たないようにするという事も含まれている。


「………咲葉。」

「なんだ。」


彼の護衛官である途聖渚みちせなぎ。渚は彼の幼馴染であり、親友でもある。主の事を想って渚は言おうとした言葉を飲み込んだ。


「なんでもない。行こう……。」

「………ああ。」


彼は渚がなんて言おうとしたか知らないふりをした。


~ 東京都 厄祓い神 桜恋 咲葉 ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る