1章 五大都市圏

東京都 菊乃華 恋歌

「きゃぁぁぁ!!!」

「逃げろっ!!こっちだっ!」


今日もまた街に悲鳴が飛び交う。そんな中、リンっと鈴の音を鳴らして空から舞い降りてきた1人の少女。その姿は聖女と言っても過言ではない。


「皆様方。ここまでよく耐えてくれました。後は私にお任せ下さい。


________その悪祓って魅せましょう」


可愛らしくそれでいて芯のある声で言葉を紡ぐ。


「桜顕現・流しさくらけんげん・ながしざくら


聖女は桜色の唇で音を奏で、扇を振る度桜が舞い散る。聖女によって悪は祓われた。


「恋歌様だっ!!」

「ありがとうございます!!」


わっと民衆に囲まれる聖女。


「お下がりください。恋歌様は高潔なる方です。次の用事も控えておりますゆえ…。」


そう言って民衆を下がらせたのは護衛官の謳華愛利うたはなあいりだ。凛とした声に民衆も従順に従う。


「そ、そんな威嚇しちゃだめだよ、あいちゃん。」

「威嚇などしておりません。私は、恋歌様をお守りしただけです。」


と聖女の方に眼差しを向ける愛利。ありがとう。と微笑んだこの聖女こそ、菊乃華恋歌きくのはなれんかだ。緩く巻いた栗色の髪には桜のバレッタ。長いまつ毛に少しラメを施した瞼。その愛らしい身体を包む袴は桜の模様が描かれている。


「さぁ、お仕事は終わりました。館に戻りましょう。」

「うん。あ、桜恋君……あの、ありがとう。」


相方の桜恋におずおずとお礼を言う。一緒に戦ってくれたお礼だろう。


「…………礼なんかいい。お前が言う事じゃない。」

「あ、うん。そうだよね……。」


申し訳なさそうに笑う恋歌。そんな様子を見てすみません。と謝る。彼の護衛官。


「………………………行きましょう。恋歌様。」

「…うん。」


~ 東京都 厄祓い神 菊乃華 恋歌 ~

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