10.『ある日スマホが、メイド言葉で話しかけてきた。3/4』

 俺が高校3年生だった頃、あかりはクラスメイトだった。

 けれどあかりはクラスに馴染めなくて、いつも保健室にいた。


 そんなあかりと仲良くなったのは、俺が些細な怪我で保健室に行った時。


 なんとなく話しかけてみたら楽しくて、あかりの気分転換になればと、毎日保健室まで会いに行くようになった。


 好きな音楽や好きな漫画の話なんかでどんどん仲良くなって……気付いたら俺は、あかりを好きになっていた。


 けれどいつも会うのは保健室だったから、修学旅行にも行けてなかったあかりに、思い出が出来たらと思って、俺はバイト代を溜めて、このログハウスを借りたんだ。

 

 家から近いここなら、人混みが苦手なあかりでも来やすいと思って。

 そして俺は――あかりに告白しようと思ってた。


 俺は――知らなかったんだ。管理の甘かったこのログハウスが、切り裂き魔の隠れ家になっていたなんて。


 そしてあの日――何も知らない俺は、先に来ているはずのあかりが、中で待っていると思って、わくわくしながら扉を開けた。


 なのに――そこで待っていたのは、凄惨な、あかりの変わり果てた姿だった。



《廉也、やっと思い出してくれた? 私の事》


「え?」


 耳元であかりの声がする。


《廉也は、目を覚ましなよ。まだ――生きられるはずだから》


「何、言って?」


《大好きだったよ。廉也。――バイバイ》



 ――パチッ


「え??」


 気づくと俺は、病院のベッドの上にいた。


「先生!! 廉也君が、意識を取り戻しました!!」



 ――俺が今まで見ていたのは……夢?


 あかりの凄惨な姿を見た直後、実は俺も襲われて……

 病室のベッドの上で1年以上寝た切りだったらしい。


 ――見かねたあかりが、夢に出てきてくれたのだろうか。


 現実世界で記憶を取り戻した俺の目からも、やっぱり涙が溢れていて。


「俺も……大好きだったよ、あかり……」


 一人ぼそっと呟いた。





 ―完―


ここまで読んでくださりありがとうございました。

こちらが、恋愛ミステリー版となります。

(ホラーコメディ版は2Pから)

面白いよって少しでも思っていただけたらぜひ★を……(ちゃっかり)

次ページはまとめです。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る