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「…いや〜、ヒヤヒヤドキドキだったね〜」
やがて『嬉し恥ずかし恐怖のニコニコクリニック』から出てくるや、その大きな建物をバックに有田くんが、横を歩く史都に言いました。
「はい〜、怖かったです〜」
というのは、有田くんに気を遣ってのこと。実のところ史都は、まったく怖くありませんでした。
その通り。史都自体がお化けみたいなものだからです。
なにせ霊魂ですからね、彼女は。
では、その後に続いて出てきた楠夫妻が、一体どうだったかと言いますと…
「…な、なんという怖さだ〜。私の若い頃には、あんな恐ろしいお化け屋敷はなかったぞ〜」
これまた、2人して近くのベンチに。帝都だけ、そこでぐったりしてます。やっぱり。
「なにを言っているんですか、あなた〜。そもそも霊魂である私たちが、人が扮したゾンビを怖がってどうするんですか〜」
「それもそうだが〜…」
湖都の正論(?)に、帝都は返す言葉もありません。
「とにかく後をつけるにしても、これからは遠目に2人を見守るだけにしましょうよ〜。ね〜、あなた〜」
「あいやいや〜、もし2人が『道を踏み外す』ようなことがあってはいかんからな〜」
「絶叫マシンやお化け屋敷の中で、どうやって道を踏み外すと言うんですか〜」
湖都の言うことはもっともです。特に、絶叫マシンに乗りつつ、んな妙なマネをする余裕があるはずもないでしょう。
「だいいち、有田くんは『お友達』だって、史都が言っていたじゃありませんか〜。そう、なにも心配はいりませんよ〜」
「でも私には分かるんだ〜。さっきからあの彼が、なにか史都に言いたげにしているのが〜」
さすがは娘の父親か。先述のように有田くんは、本当に今日こそ、例の告白の返事を、史都から貰うつもりですしね。
「お〜、動き出したな〜。さあ、湖都〜。我々も行こう〜」
予定通り、お隣のリヒテンシュタイン村の方へ。その史都たちを目に、すくと帝都が立ち上がりました。
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