誰かの記憶
ああ、頭が痛い。
いったい、どこへ行ったというのだ。
もしかして、知られてしまったのだろうか。
あそこに埋まっているものを。
だから逃げたのか?
だとしたら――見つけ出して、殺さねば。
重い足を引きずって、ひたすら探し回る。
早く早く。
俺を安心させてくれ。
ふと、甘い香りがしたような気がする。
どこかで嗅いだことのある香りだ。
――チーン
振り返ると、背の高いシルエットがある。
だが、夕暮れの
香りと音は、そこから聞こえてきていた。
「……ああ、君だね」
そうつぶやかれた。
男とも、女とも、こどもとも、年寄ともとれる声で。
――チーン
耳鳴りが、頭痛が、大きくなった。
――おかしい。
俺は街中を歩いていたはずなのに。
気が付けば家の前に戻っていた。
夕方の赤い陽が、家の影を濃くしている。
ここは、ダメだ。
今は、まだ。
――身代わりを、用意できていないのだから。
地面から、ボコリという音がした気がする。
何かが、俺の足を掴んでいるような。
一つじゃない。
十の手が……。
……十?
「……一人、足りない……?」
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