第4話 核心を突いてくる
玄関の扉を開けると、愛しい人の姿がすぐ近くにあった。
お姉ちゃんは私の顔を見るなり真っすぐに飛びついて来て、「乃々花ぁ…乃々花ぁ」と小さく繰り返す。
「お、お、お姉ちゃん?」
お姉ちゃんの体温はびっくりするくらい高くて、やっぱり熱があるんだと分かった。
さっき腕を抱いた時はあんなに冷たく感じたのに、やっぱりその時の感情って大事なんだと思う。
「って言うかお姉ちゃん、熱あるんだから寝ないと駄目だよ!」
「う~やだぁ…だって私、乃々花に酷いことしちゃって…絶対嫌われたからぁ」
さっき拒絶したのが杉本さんじゃなくて私だったと言うことに気付いたらしい。
「嫌うわけない!大好きだよ、お姉ちゃん。ずっとずっと、これからも、一生!」
「ほんとぅ?」
お姉ちゃんは少しだけ体を離して、潤んだ瞳で私の方を見てくる。
こんな時だけど、熱に火照って弱々しいお姉ちゃんはいつもよりも煽情的で、今すぐにでもキスしたい情動をぐっと堪える。
「ホントだよ。だから、今はベッドで寝よ?ごめんね、私が風邪移しちゃったんだよね。今度は私がちゃんと看病するから」
「うぅ~…乃々花のせいじゃないよぉ…あの時だって、私がもっと強く乃々花を引き留めて休ませてたら、学校で倒れることもなかったのに…私のせいで…」
あの時は私が強がりを言ったのが悪いのに、お姉ちゃんは思ったよりも気にしていたらしい。
気にしなくてもいいと言うことを伝えるために手を握ると、弱々しくもしっかりと握り返してくれる。
「お姉ちゃん、一緒にベッドまで行こ」
「…わかったぁ」
一応会話は出来ているが、語尾はずっとふにゃふにゃで、お姉ちゃんの部屋に向かっている最中、何故か前一緒に食べた美味しいチョコの話とか、プールに行った話とかし出して、やっぱり意識が朦朧としているらしい。
お姉ちゃんをベッドに寝かせ、一昨日お姉ちゃんが私にやってくれたみたいにお粥を作ってスポーツ飲料と風邪薬を用意する。
お姉ちゃんが眠るまで必死に看病して、ようやく小さな寝息が聞こえて、ホッと息を吐いた。
「看病って、思ったより大変なんだな」
お姉ちゃんの額を、感謝の気持ちを込めて撫でると、お姉ちゃんの口角がふにゃりと上がり、
「乃々花…大好きだよ…」
寝言を漏らした。
不意なことで私は心臓を射貫かれてしまい、お姉ちゃんを起こさないように悶えまくった。
「もう大丈夫なの?」
「うん!もうすっかり元気!!乃々花に看病してもらったおかげだよ!」
愛おしい笑顔一つで心が満たされてしまう簡単な私。
今はお姉ちゃんの部屋で、二人並んでベッドに背中を付けて話している。
「乃々花、何か私に聞きたいことあるよね?」
唐突に、お姉ちゃんは核心を突いて来た。
「な、なんでそれを…」
「なんかあるなとは一昨日くらい前からずっと思ってたけど、さっき心美からメールあった」
「な、なんて?」
「『乃々花ちゃんとはちゃんと話せたかー?』って」
あの人は、どこまでもお節介焼きだと思う。
三回は一緒にスポーツセンターに行かないと借りは返しきれないなぁ、これは。
大きく息を吸いこんで、満を持して尋ねる。
「三日前の、カフェで一緒にいた人誰?浮気相手?」
「え!?あの時乃々花いたの!?」
「やっぱり浮気を…」
お姉ちゃんは慌てふためいた様子で、手をふりふり。
「ないない!ぜーったいないから!!ありえないから!!あの人お母さんの妹で、扱いほぼお母さんだからね!?」
「で、でもでも、あの時ハグとキスしてたもん!」
「た、確かにそれはしたけど、ほっぺにだし、
「できないよ!!」
「だったら…んー。じゃあ、会ってみる?」
「会う!!」
と、言うことで、お姉ちゃんの浮気相手(仮)との会合が決まったのである。
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