第132話 少女達の川漁
バリスタの標的を漁場に近づくゴブリン部隊に変更する。
弾種はその辺に落ちている石。
命中は期待出来ないが
「撃てっ」
合図で石弾が河川敷で移動するゴブリン兵らに投射された。
石弾は予想通り命中はしないが、ゴブリン部隊の近くの岩に命中しカツンッと火花を散らして弾けた。
ビビるゴブリン兵。
二連装なのでさらにもう一発投射する。
またしても外れるが、今度の石弾は岩にぶつかって粉々に砕け散った。
それに恐怖したゴブリンだったが、撤退はせずに岩陰に身を隠すという選択をした。
中々しぶといな。
そこでミイニャ分隊がクロスボウ射撃を始める。
「お魚は渡さないにゃ。みんな、ここは死守するにゃっ」
いつになくやる気満々だな。
それならば、全員で掩護しますかね。
ロー伍長の指揮の下、残った少女達からのクロスボウ攻撃が始まった。
「自由射撃、始めるのじゃ!」
たまらずゴブリン兵らは元の建設場所へと撤退していった。
そうなったらミイニャ伍長の独壇場だ。
「分隊、突撃にゃあ!」
射撃を止めて何故か突撃を始めるミイニャ分隊。
どうやら川への突撃らしい。
武器をほっぽり出して川へバシャバシャと入って行くと、直ぐに岩の下に両手を突っこんで魚を探り始める面々。
しかし、そう簡単に手で魚を
少女らが苦戦している中、ミイニャ伍長の怒声が響く。
「何も獲れなきゃ御飯抜きにゃっ」
それを聞いて大慌ての分隊少女達。
だがそれで獲れるほど世の中は甘くない。
そんな中、副分隊長の少女が声を上げた。
「と、獲れました!」
何かを掴んで両手を大きく頭上に上げる副分隊長。
だがそこへミイニャ伍長の
「それは流木にゃっ」
少女は慌てて
そんなことを繰り返すだけで、結局少女らは何も獲れない。
いや、ミイニャ伍長以外の少女は獲れないが正しいか。
突如目がキラリと輝く。
「にゃっ」
気合と共に手が川の水を叩く。
手を振り切った先には、小ぶりだが一匹の魚が岩の上をピチピチと跳ねていた。
少女らから「おおお」と声が
「一匹じゃお話にならないにゃ」
勇ましい言葉を残してミイニャ伍長は漁を続けるのだが、そんな光景を見ていた他の分隊少女らも漁に加わりたくてしょうがないらしい。
俺をチラチラと見てきやがる。
そして遂にロー伍長がつぶやいた。
「皆で協力したほうが食事の確保は早いと思うがのう……どうじゃ?」
そんなこと言われても、敵と川越しに睨み合ったままなんだがな。
少女らがロー伍長の言葉を受けて、一斉に俺を見つめてくる。
そんな目で俺を見るのはやめろ!
「しょうがない。ソニア分隊とマクロン分隊は残って、それ以外はミイニャ伍長の応援に行け」
俺の言葉に「やった」とばかりに少女らが走り出す。
反対にソニア分隊とマクロン分隊の俺への視線がきつくなったが。
これで三個分隊三十人が魚漁に取り掛かることになる。
いくら何でもそれだけいれば少しは獲れるだろう。
ゴブリンはというと特に動きはない。
砦建設地からこちらを眺めているだけだ。
敵への攻撃も時々繰り返して、敵を休ませないようにはしている。
しかしだな、三十人もの少女が川の水でバシャバシャと
最前線で戦闘中とは思えない光景が、俺の目の前で繰り広げられている。
だが頭数の問題ではなかったようで、獲れた魚の数は一向に増えていかない。
そもそも少女らは水遊びをしているようにしか見えない。
「キャッキャッ」言いながら
そんな中、一人の少女が叫び声を上げた。
「うわっぷ…足が…着かない……うっぷ」
見れば深みにはまったのか、川に流されて行くメイケがいた。
そう言えばあいつは泳ぎが苦手だった。
なのになんで深いところまで行くかな、ったく。
近くにいた少女が助けようとメイケに近づこうとするが、川の中央部分は流れが複雑になっていて直ぐに離されてしまう。
そこへミイニャ伍長が「私の出番にゃっ」と言ってザッパンと泳ぎ始めた。
だが
川の流れに
マズい、このままではメイケが流されてしまう。
と思ったその時だった。
川の中央付近で突如水面が大きく盛り上がる。
そして水を
コイに似た巨大魚だ。
水面から飛び跳ねたその身体は、体長三メートルはあろうかという大きさ。
その巨大魚がメイケに向かって水面を波立たせる。
「いや、来ないで……あっぷ」
溺れながらも必死に逃げようともがくメイケ。
しかし水の中では魚の動きには勝てっこない。
川から上がった少女らがクロスボウの準備を始めているが、間に合いそうもない。
そこへ巨大魚が大きな口を広げて、後ろからメイケに襲い掛かった。
「いっや~~~っ」
メイケの悲鳴が響いた。
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