第68話 お貴族様が訪れた
お貴族様は門前でまずは待たせて、取りあえずはロミー准尉に報告する。
するとロミー准尉は俺に「
言い方が違うだけで、ペルル男爵と最終的には同じだな。
さすが兄妹だ。
結局すべて俺が判断して事を進めるってことか。
相手は貴族の
という事は失礼があると大変な事になる。
それならしょうがない、砦の中に入れるか。
「門番、扉を開けろ!」
馬車が一台と歩兵ニ十人が入って来た。
もちろん男ばかりの兵士だ。
少女の一部が彼らにクロスボウを向けようとするが、俺が「よせ味方だ!」と言って制止した。
砦の中に入って来た男兵士共がざわつき始める。
この砦は十代の少女しかいないからな。
二十代さえいない。
好色の目で少女らを見ている。
なんとも腹立たしい。
そして馬車から降りて来たのは四十代のおっさんで、パシ・ニッカリ士爵だと名乗った。
もちろん軍服ではなく私服、つまり軍人ではなく一般人という事になる。
いや違うな、一般人ではなく貴族だな。
俺とロー伍長が対応したのだが、「指揮官を出せ」とうるさい。
「ニッカリ殿、現在ここの指揮権は自分にあります。自分が話を聞きます」
俺がそう言ったのだが、ニッカリは言葉を荒立てる。
「ふざけるなっ。ペルル男爵が話はここにいる責任者にと言われたから来たんだぞ。ここに来るのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。それが何で平民の曹長と話をしなけりゃいけないのだ!」
だから指揮権は俺にあって決定権もほぼ俺にあるんだがな、そう文句を言われてもなあ。
その前にペルル男爵め、面倒臭い事はすべてこっちに振ったな。
「だから自分が話を聞きますけど、それがダメなら止むを得ませんね。お引き取り願います」
「き、貴様~。平民の分際で~。お前じゃ話にならん、貴族はいないのか、貴族は!」
しょうがないな、連れて来るか。
嫌がるだろうなあ。
「フェイ・ロー伍長、ロミー准尉を応接室に連れて来てくれるか」
「うむ、しょうがないのう。行ってくるのじゃ」
引き下がってくれそうにないので、彼を応接室に案内する。
そこでロミー准尉を待つことに。
結構な時間待たせて、やっと出て来たロミー准尉。
部屋に入るなりお互いが驚きの声を上げた。
「あれ、誰かと思ったらニッコリじゃん」
ロミー准尉、ニッコリじゃなくてニッカリだからな。
「うげっ、ロミー・ペルルか……最悪だな」
おっと、知り合いみたいだな。
それなら話は早そうだ。
そこでフェイ・ロー伍長が質問する。
「なんじゃ、二人は知り合いだったのか」
すると、ニッカリ。
「知り合いだと、ふざけるな。だいたいこいつが何でここにいる。補給部隊だったんじゃないのか?」
するとロミー准尉がそれに返答。
「色々あったんだよ、うっさいなあ。で、ニッコリが何しにここに来たの」
「ふん、まあ良い。この砦の増援部隊の補給物資に、アーポ・アルホ子爵様が出資した物資があって――」
長々と説明を受けたんだが、途中からどうでも良くなって聞き流した。
早い話、採掘した魔石の内の少しを自分たちに回せということらしい。
前の戦いで増援部隊に協力したんだから少しは利益を回せということだ。
こういうのは貧富の差に関係なくある話で、貧民街でも縄張りだからと上前を
俺が子供の頃もそういったチンピラがゴロゴロいた。
そういったチンピラが俺の所へピンハネしに来たときは、すべて突っぱねてやった。
そして最終的には武力で決着が付くんだが、俺は決して負けなかった。
だからここでも負けはしない。
「あのなあ、おっさ――」
俺が言いかけたところでロミー准尉が割り込んだ。
「もう、いい加減に帰れよ。うざいんだよ。あの時みたいにボコられたいの?」
おお、ロミーさん、凄いこと言うね。
前にも一度ボコってるんだね?
「な、な、何を言うか。わ、私はアーポ・アルホ子爵様の
「いいから帰れってんだよっ、マジで泣かすぞ!」
おいおい、子供の喧嘩じゃないんだからさ。ロミー準尉がガキ大将に見えてくる。
「おのれ、あとになって吠えづらかくなよ。今日のところは帰ってやる!」
そう言うと席を立ち、扉を勢いよく開けて外に出て行った。
するとロミー准尉は扉までお送りするのかと思えば、パシ・ニッカリが出て行った扉から顔を出して叫んだ。
「パシリ殿のお帰りだよ~!」
外の兵士らに聞こえる様にだ。
ロミー准尉、ワザと名前を間違えてるよな?
すると砦内の兵士達は大歓声だ。
あれ?
ロミー准尉が支持されている?
人気者になっているんだが。
パシ・ニッカリは悪態をつきながら馬車に乗り込むと、部下を引き連れて帰って行った。
ニッカリが帰るとロミー准尉は大あくびをして、「あとはよろしくね~」と言って自分の部屋へと戻って行こうとするが、「ああ、そうだ」と言って振り返る。
「ボルフ曹長、今度ああいった
そんな言葉を残して行ってしまった。
貴族相手にそれはさすがに無理だ。
だけどこの人、自由だな。
不良少女士官ってやつだ。
指揮権が彼女にあったら大変だったかもしれん。
暴君っていう奴?
戦闘部隊での女性初の士官なんだがな。
これでいいのか。
取りあえずパシリは追い出したが、これで済むとは思えない。
またちょっかい出してきそうだ。
それじゃあ、俺は畑を広げるための土いじりがある。
もっとちゃんと言えば
鉱山斜面の畑が思った以上に順調だそうで、もっと広げたいらしい。
それで力仕事が回ってきているという訳だ。
変な客を相手にしてる時間はないのだ。
カブトムシの二匹は荷運びであっちこっちで必要とされて忙しい。
二匹にして正解だったようだ。
俺の負担も減るし。
だがそれでも力仕事の需要は増すばかり。
俺は文句も言わずに切り株を掘り起こす。
だがな、畑の野菜なんだがやけに大きい。
畑の野菜は順調とは聞いているが、大き過ぎやしないか。
人の背丈の倍以上は伸びている。
あんな野菜見たことない。
毎日見ながら心配になっていたんだが。
そんな事を考えている最中だった。
「きゃ~~っ、だ、誰か~~!!」
少女の叫び声だ。
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