第61話 一騎討ち
後方に隠れていたのか、
そして始まった宴会。
戦う前から宴会とはな。
その間に俺は皆に協力してもらって戦いの準備だ。
ミノタウロスの皮膚の厚さはこの間の戦いで分かった。
あの皮膚を貫くには斬るのではなく、突き刺すほかない。
それで槍を用意したいのだが、今あるのは元々ゴブリン製の槍でそれほど頑丈には出来ていない。
しかしゴブリン製の槍しかない以上は、それを使えるように改良するしかない。
穂先は出来るだけ鋭く
だが
そのさじ加減が難しい。
元々の槍はゴブリン仕様で軽く出来ているから、柄の部分を補強して重くした上で強度を増す。
それを3本用意する。
それ以上は持ちきれない。
思い返せば、前回の戦いでは
しかし今回はそれがない。
正直言って真っ向勝負で俺はあいつに勝てるのかって思う。
だから俺は実戦での戦法を取るつもりだ。
生と死の狭間のやり取りをする、戦場での戦い方でいく。
生き残るための戦い方だ。
「おおい、誰か、頑丈なロープを見つけてきてくれないか」
一人じゃ用意できないが、俺には仲間がいる。
戦いには十分な準備さえあれば勝敗をひっくり返せる。
それを証明してやる。
「さあてと、そろそろ時間だな。門を開けてくれ!」
俺の声に正面門がゆっくりと開いていく。
それに合わせて俺もゆっくりと歩を進める。
門が開くと奴はすでに臨戦態勢で立ち尽くしていた。
奴の装備は
戦斧はミノタウロスの好む武器だ。
だが時間通りとは、見た目と違って時間を守る奴なんだな。
ちょっと意外だ。
通訳のゴブリンが「ジュンビ イイカ」と聞いてくる。
俺はそれに対して同じように返した。
「そっちの準備はどうなんだ」
するとゴブリン。
「ガルグサマ、イツデモ、ジュンビ、ダイジョウブ」
「そうか、なら戦い開始だっ!!」
俺は助走をつけて槍の投擲に入った。
通訳のゴブリンが慌てて退避していく。
ミノタウロス、ガルグって名前らしいが、奴が驚いて目を見開いている。
最初に
あれを喰らえば身体が
だがな、そんなのは一度戦えば予想が付く。
それが分かっているから先手必勝だ。
戦場では「試合開始」の合図なんてないんだよ!
それでも間に合うと思ったのか、ガルグは大きく息を吸い込み始めて“
「させるか~っ!」
俺が肩をしならせて槍を投げ放った。
この距離ならば、槍はガルグまで数秒で到達する。
ガルグは鎧など装着していない。
あれならば十分に貫ける。
それに身長二メートル半もある巨大な標的。
しかも
槍の穂先が風切り音を響かせながらガルグの胸へと迫る。
「よし、命中だ!」
そう声を上げた途端。
ガルグは槍を払い除けた。
ほほう、
ガルグは
だがそれは中々出来る事じゃない。
それに加えて飛んで来た槍を払い除けるとか、その
槍が残り二本。
俺はさらに走る。
くそ、腰がまだ痛いじゃねえか。
ガルグが「グオオッ」と言いながら、猛牛のように迫り来る。
片足を引きずっているな、アキレス腱がまだ痛いのだろう。
そして戦斧を右後ろへと構えた。
――
地面ギリギリの高さで武器を振り切る構え。
タイミングとしてはギリギリか!
俺は二本目の槍を
槍の柄が手から離れると同時にその場に伏せる。
途端に俺の上を物凄い風圧で戦斧の刃が駆け抜ける。
ギリギリだった。
本当に間一髪のタイミングだ。
俺は横に転がりながら立ち上がる。
すると槍はガルグの左腕に刺さっている。
胸を狙ったんだが外したか。
だがしっかりガルグの分厚い皮膚を貫通している。
大丈夫だ、この槍ならいける。
だが、作成の時に鍛冶知識のある男兵士が言っていたことがある。
元々ゴブリン製の槍だから、穂先の刃の部分は強度が低いと。
だからミノタウロスの皮膚を貫通するような刃に加工したとすると、何度も使えない。
一度使えば刃が欠けるだろうと。
槍は後一本だけだ。
これが無くなれば剣で戦うしかない。
だが俺の剣は刃が殆んどついていない。
斬るというより叩き斬る為の剣だからだ。
この剣でどこまでいけるのか。
それに剣だとリーチの差で戦いが不利になる。
俺が剣を届かせようとするには、奴の間合いの中へ入る必要がある。
それにはあの戦斧を
出来ればそれはやりたくない。
ガルグは左腕に刺さった槍を引き抜いて投げ捨てる。
大して効いていない雰囲気だ。
そして「グオオオッ」と吠えて戦斧を振り上げる。
身長二メートル半の魔物が武器を振り上げただけで、その高さからの武器は
だが両手で扱うこの戦斧はどうしても動作が大きくなる。
すばしっこい相手にその武器は不利だと分かっているはず。
それでもミノタウロスの種族は戦斧にこだわる。
戦斧こそが奴らにとっての神武器らしい。
そんなモーションの遅い戦斧の攻撃を避けるのは難しくない。
だが地面に振り下ろされた時に飛び散る小石は、複数が身体に当たり地味に
左腕の盾で防ぐのだが、巻き散らしたような小石を全部防ぐことはできない。
容赦なく革鎧のない部分へと小石が襲う。
小石を防ぐため盾をかざしたことにとより一瞬視界が途絶える。
盾を下げた時には次の攻撃が迫っていた。
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