11:ハツコイソウ
・・・よくよく思ったんだけどさ、僕、銃が作れる設備知らないんだった。
瓦礫の上に座る。
いやまあ1階から5階まで見てから言っても説得力無いかもしれないけど。本当に、何やってたんだろう・・・
ナナシさんから銃を作れる設備を探してって言われてからはや2時間、最初はウキウキになってたから気づかなかったけど、本来ナナシさんにどんな設備なのか聞くべきだったな。
薄暗い空を眺めて感傷に浸っていると、
「・・・ラウル様、手伝いに来ました。」
「わ!」
後ろから声が聞こえ驚いてしまった。
「ナ、ナナシさん、どうしたんですか。それに手伝いって・・・」
「言葉通りです、イズ様が傷を負いしばらく動けそうにないのでラウル様を手伝おうと。」
「そ、そうなんだ。助かるよ。」
・・・イズって怪我するんだ。
「さて、どこまで探索出来ましたか?」
そんなことを思っているとナナシさんから声がかかる。
「え、ああ、ええと、この建物の1階から5階まで見たよ。」
「・・・そうですか、それなら手間が省けましたね。」
「どういうこと?」
「私はおそらくこの建物の中に設備があると踏んでいます。」
「そう、なんだ。」
「では行きましょう。」
「うん、分かった。」
こうして設備探しは思っていたよりも早く終わることとなる。
それから地下に進んで行き、地下3階まで着くとナナシさんが止まった。
「ここみたいです。」
「え、そんなの?」
「はい、ここだけ独特な匂いがします。」
「んー、全然変な匂いしないと思うけど・・・」
「とにかく進みましょう。」
ナナシさんがまた足を動かし始めた。
「う、本当だ。なんか変な匂いがする!」
どうやらナナシさんの言っていたことは本当だったみたいで、少し歩くと鼻腔をくすぐるような変な匂いがきた。
「ラウル様が分かるぐらい匂いが強くなったということは、もうそろそろですね。」
ナナシさんがそう言うと少し先にある扉の前で止まり、扉を開けた。
「・・・ここですね。」
僕も中を見てみるとそこには大小様々な機械が並んでいた。
「あとは・・・壊れていないかですね。軍のものなので頑丈だとは思いますが。」
「電気はどうするの?」
「それは心配いりません、なにせこちらにはパレスチウムがありますから。」
ナナシさんはそう言いながら手より少し大きいぐらいの長方体を出してきた。
「こちらにパレスチウムのエネルギーを入れています。」
「へー、そんなのもあるんだ。」
「そうですね。」
ナナシさんがそう言うとエネルギーを入れている長方体からケーブルを伸ばし、おそらく電源部分と思われる場所にそれを繋げた。
そして、いきなりケーブルを繋げた機械から大きな音が出始めた。
「良かった、使えますね。」
「・・・すごい。」
「ラウル様、大絶体は持ってきていますか?」
「え、ああうん。」
慌てて大絶体を出す。
「あの、そういえばだけど、どうやって大絶体の銃が作れるの?」
「簡単に言ってしまえば材料に大絶体を混ぜるだけです。」
「・・・なる、ほど?」
「まあ見ていてください。」
ナナシさんは機械にそこら辺にあったレンガみたいなものを入れると、そのまま動かして始めた。
「・・・知っているかは分かりませんが、銃の大部分は鉄でできています。それは鉄が硬く、扱いやすいからです。ですが、その大部分を大絶体に変えてしまうと硬度が足りなくなります。ですので、溶かした鉄に大絶体を混ぜます。本来なら大絶体で銃を作れる設備があるはずなのですが、見つけるまでの時間がないのでそうします。」
・・・???鉄は図書室で知ったけど、溶けるってなに?
「鉄は1538℃で液体になります。」
え、僕の心読まれた!?
「なんとなくそんな顔をしていましたので。」
怖い。
「・・・鉄が溶けてきましたね。ラウル様、大絶体を。」
「うん、はい。」
ナナシさんに大絶体を渡す。
するとナナシさんは、大絶体を細かく切り始め、多分溶けている鉄の中に入れ始めた。
「あとは型に入れて、冷えるのを待つだけです。」
どうやら僕は途中で眠ってしまったらしく、壁にもたれかかっていた。
「う、ううん。」
「起きましたか。」
「ごめん。」
「別に構いません。それと、そろそろパーツが冷えそうです。」
・・・僕も、少しくらい手伝わないと。
「パーツの組み立ては僕がするよ。」
「・・・そうですか、やり方は大丈夫ですか?」
「うん、本で読んだから大丈夫。」
「ではこちらを。」
ナナシさんが僕にパーツを渡してきた。
パーツを見るに、どうやら作ったのは拳銃らしい。
「少し待ってて。」
起きたばかりで半ば起きていない脳を起こし、組み立て方の記憶を漁る。
・・・案外難そう。
そう思いながらも手を動かす。
これがここで、これがあそこ。あれ、はまらない。ああ、こっちからか。
「ラウル様、すぐに諦めると思っていましたが、凄いですね。」
「なんか僕記憶力がいいみたいでさ、色んなこと覚えてるんだ。」
「・・・完全記憶能力ですか。」
「なにそれ?かっこいい!」
「見たものをずっと記憶できる能力こことです。」
「へー、あ、出来た。」
ナナシさんとそんな話をしていると、いつの間にか組み立てが終わっていた。
「ナナシさん、出来た!」
完成したものをナナシさんに渡した。
「完璧ですね。」
「本当?やったー、早く使ってみたい!」
「少し待っててください。」
ナナシさんはそう言うとまたパレスチウムを入れている長方形からケーブルを伸ばし、今度は銃のマガジン部分に繋げた。
「・・・これは、」
「なにかあったの?」
「微かにですがマガジン部分からエネルギーが漏れています。」
「それだと大変なの?」
「はい、使っていけばどんどんと傷が広くなり使えなくなります。ですが今の状況では直す術もありません。耐えて2、3発だと思います。」
「・・・そう、なんだ。」
なんか残念。
「とりあえず、戻りましょうか。」
「うん。」
少し残念になりながらも応答し、ナナシさんに着いて行った。
「・・・どうしてこうなっちゃったのかな。」
「完全に大絶体で作れないため、鉄に混ぜ込めば大丈夫だと判断した私の失態です。」
「別にナナシさんに文句を言ってるわけじゃないんだけど・・・」
「そう思っていても私の失態です。ですか・・・」
ナナシさんが話している途中、突然動きを止め、声も止まった。
「ナ、ナナシさん?」
僕が戸惑ってナナシさんに声をかけた瞬間、ナナシさんは目にも止まらぬ速さで走り、既に見えなくなっていた。
「ど、どうしたんだろう。」
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