3:ミヤコワスレ
ただただ、茫然としていた。
確かにそう思ったことがあった、イズが身につけている機械の手足とか顔にある大きな傷跡とか。けど言わなかった。その事を話してしまったらなんとなくだけどイズともう会えなくなると思ったから。
「そう、なんだ。」
「うん。」
「・・・」
「・・・」
言葉が続かない、そしてイズも喋らない。
僕から話を振って欲しいのだろう、だけど僕はなにを言ったらいいのか分からない。
まるで僕はこの時が永遠に止まっているのではないかという感覚に陥っていた。
だがこの時間は以外に早く終わった。
「・・・私は、最後にこれを渡された。」
イズがなにかを出して来た、それはネックレスと思われるものだった。
「私話すの苦手。だからこれ、見てもらいたい。」
バキッ
イズがハンマーでそのネックレスを壊した。
だからさっきハンマーを探してたんだ。
ネックレスの中から出てきたのは小さな平べったい石のようなものと少し太い針のようなものだった。イズが平べったい石のようなものを取る。
「みてて。」
カチッという音が聞こえたと思ったら平べったい石のようなものの上に光が集まった。
「わ!」
思わず目を瞑ってしまう。
光がやみ、目を開くと僕は目を丸くしてしまった。
石の上に小さな人が立っていたのだ。
「な、に、これ。」
上手く言葉が発せない。
「ちょっとまって。」
イズがその石をいじる。
「・・・これで多分動く。」
ジ、ジジッ
「・・・これを見ているということはもうお前が未来に行ったということでいいか?」
「え」
なにか石から変な音が聞こえたと思ったら今度は上にいる小さな人が話し始めた。
「え、え、ど、どういう、」
「・・・博士、ラウルに過去に何があったかの記憶って転送できない?」
「可能だぞ。」
「ならやって。」
「・・・分かった、これを少年の額の近くに。」
「うん。」
戸惑っている僕にイズと小さな人が近づいてくる。
「少々痛むが我慢してくれ。」
「え、それってどうい・・・」
突如、頭に電撃が入ってきたかのような痛みに襲われた。
「あああああああああああ」
なに、この記憶は。
機械、発明、繁栄、超科学、世界、AI、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、滅亡、
「う、おぇ。」
「とりあえず、これで記憶の転送は済んだぞ。」
「う、・・・これが、地下世界で、あった、こと・・・」
「そうだ。」
「AI・・・あなた、も?」
「これは違う、ただ私の情報を渡したにすぎん。」
「そう、なんだ。」
「まあ、とりあえずこれで少年にもなにがあったか分かったことだ。そろそろ本題に入っていいか?□□□。」
「・・・違う。」
「?」
「今の私はイズ。ちゃんと名前、ある。」
「・・・そうか、今度こそ本題に入っていいか?イズ。」
「うん。」
「少年がさっき見たように世界、今でいう地下世界は1000年前、正確にいうと999年前にあるAIによって滅ぼされた。そこまでは分かるよな?」
「そういうのはいい、早く本題話して。」
「・・・はあ、分かった。ならなぜイズを999年後に送ったかの説明をする。」
「早く。」
「・・・お前を未来に送ったのは、そのAIを壊してもらうためだ。」
「?」
「・・・私たちではAIを壊せなかった。だから私たちはイズにそれを託し、そのAIを凍結させた。それがちょうど1000年で解除されてしまう。」
「なんで1000年も凍結させたの?普通に壊すならそこまでしなくてもいい気がするけど・・・」
「ああそれはな、あのAIは試作段階でな、だからまだ自己修復機能が付いていないんだ。だから少しでも機能劣化をさせるために999年後に送った。」
「・・・999年ならまだ凍結してるんだよね?」
「そうだが。」
「なら簡単。」
「いや、そんな簡単ではないぞ。」
「?」
「そのAIは自己防衛機能が付いている。なぜか機能を凍結させても自己防衛機能だけ残ったんだ。」
「博士、ドジ。」
「断じて違う、ちゃんと理由がある。自己防衛機能は自律しているんだ。だから本体を守るために本体の意思関係なく襲ってくる、気をつけろよ。」
「・・・だいたい分かった。あと1年で暴走しちゃうそのAIを壊しに行くけどその途中にAIの下僕がいるってこと?」
「・・・まあそれでいい。」
「ラウルは分かった?」
「まあ、なんとなくは。」
「分かったならいい、なら次にこの列車について話す。この列車は私が自家用に使っていたものを改造したものだ。空間拡張装置を使っているから中が外よりも広くなっているぞ。それと基本設備は付いているはずだ、それに戦闘道具も。」
「・・・ねえ。」
「なんだ、イズ。」
「電気とか水とか食料はどうするの?」
確かに、最もな疑問だ。
「それは大丈夫だ。この列車にはパレスチウムが搭載されているからな。まあ食料と水は作らないといけないが、機械達がほぼやってくれるから気にしなくていい。」
「え、パレスチウム。」
イズの顔が表現出来ない表情になっている。
「・・・あの。」
「なんだ、少年。」
「パレスチウムってなんですか?」
「パレスチウムとは無限のエネルギーを生み出す物質だ。」
エネルギー、あの本に書いてあった。機械を動かすために必要なものの元。
「無限のエネルギーを生み出すって、そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。だからパレスチウムと言う言葉がある。」
「はあ。」
「・・・パレスチウムって世界に1つしかないの。」
「え、そうなの?」
「うん。」
「別に世界が滅びてしまったからいいだろ。」
「博士らしい。」
「・・・とりあえずだいたいの説明は終わった。分からないところはあるか?」
「ない、ラウルは?」
「僕も特には・・・あ、列車のルートってどうやっているんですか。」
「列車にルートは入れてある。最短ルートで送ってくれるだろう。」
「分かりました。」
「これで終わりか。良かった、私が存在できる時間で全部説明できて。」
「・・・博士一緒に来れないの?」
「無理だ。このチップは保存年数を伸ばすためにバッテリーを最小限にしたんだ。だからもうそろそろバッテリーがきれる。」
「・・・そう、なんだ。」
イズが少し浮かない顔をしている。
「そんな浮かない顔をするな。」
「でも。」
「でもではない。前を向け。」
「・・・うん、分かった。私が、必ず止める。」
「それで、いい。頼んだ、ぞーーー
その突如、小さな人が消えた。
「・・・」
「えっと、イズ・・・」
なんて声をかければいいんだろう。
「・・・ラウル。」
「な、なに。」
「準備しよ。」
「う、うん。分かった。」
その時のイズの顔は、よく分からなかった。
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