4:ゲケイ

博士・・・その思いは絶対に無下にしない。

とりあえず列車の中、見てみよ。

列車の1番後ろに向かう。

扉を開けると、そこには空間拡張された列車よりも広い空間が広がっていた。どうやらここは食料を育てる場所らしく、畑や牧場などがあった。

・・・博士、この列車とここにも空間拡張装置使ってるんだ。あれも別に多くはないのに。それと・・・食料は本当に作るしかないんだ。

扉を閉める。

そして次の扉を開ける。

そこは武器庫だったらしく壁一面に様々なものが並べられている。しかしふと左を見てみると銃が壁にかかっていない場所がある。そこをよく見てみると扉だった。その扉を開けるとここにも空間拡張装置が使われているらしく、縦に長く空間が続いている。どうやらここは射撃訓練場のようだ。

「・・・今度使ってみよ。」

そう言い残し扉を閉めた。

それから、キッチンやトイレ、洗面所、お風呂、個室4部屋を見て大体の列車の内部を見終わる。

・・・なんか列車っていうよりホテルみたい。

ついそう思ってしまうほど列車内は広く、完成されていた。

「あ、忘れてた。操縦席行かないと。」

ふとその事を思い出し操縦席に向かった。


操縦席の扉を開ける。

案の定、電源はついていた。

席に座る。

「なにをお探しですか。」

目の前から無機質な声が聞こえる。

「ルートを確認したい。」

「かしこまりました。999年前の地図にてルートを表示しますーーー」

目の前に光が集まり、それがだんだんと1枚の地図になっていく。

「・・・だいたいこれくらいか。日数換算するとどれくらいかかるの?」

「計算中ーーーおよそ100日です。」

「・・・」

・・・自己防衛機能がどれくらい強いか分からないけど、結構時間はあるんだ。けど油断は禁物、早めに出発しとこ。

その時だった。

ガシャン

「わあ!」

「!!」

列車の後方からラウルの叫び声が聞こえた。

「・・・1時間後までには出発できるようにしといて。」

「かしこまりました。」

そう言い残し、私はここを後にした。


ガチャ

「ラウル、大丈夫。」

扉を開けるとそこは静寂の空気に包まれていた、尻餅をついていたラウルをのぞいて。

「あ、ああ・・・なに、か、いる。」

しどろもどろになりながらも原因の方に指を指す。その方向を見ると、そこには半開きになっている銃保管庫の扉があった。

「・・・この中に、なにかいるの?」

「う、うん。本物の銃見てみたくて開けたら・・・」

扉を開ける。

「え。」

開けると、そこには体育座りになっている人がいた。けど人とは何かが違う違和感があった。なので腕を触ってみる、すると人とは思えないほど硬かった。

「・・・アンド、ロイド?」


「どうしてここに・・・」

一旦離れる、だが

「・・・生体認証開始」

無機質な声がアンドロイドの中から聞こえる。

「え、キャッ!」

アンドロイドの手が私の胸あたりにあたった。

「ちょ、ちょっと//」

私に触れているアンドロイドの手を離してみようとしてみたが一切びくともしない。だがそれももう終わりに迎える。

「・・・認証完了、固有名称イズと一致しました。起動を開始します。」

手が離れたと思ったら、今度はアンドロイドがガタガタと鳴り始めた。そして、立ち上がった。

今まで暗くてちゃんと見えなかったが、そのアンドロイドは女性をモデルにしていたようだ。

サラサラな灰色の長髪、小さい顔、華奢な体。おそらくほとんどの男の人がこれが理想の女性像だと言うだろうと思うほどだった。ふとアンドロイドの胸を見てみる。

自分のを見て触ってみる、ペタペタ。

・・・なんかアンドロイドなのに、すごく負けた気分。

「初めまして。私はイズ様をサポートするアンドロイド、No.04578043です。」

私のそんな気も知らずにアンドロイドは話し始めた。

「あの、」

「どうかされましたか?」

「・・・その、あなたの名前どうにかしない?」

「No.04578043のことですか?別に構わないと思いますが・・・」

「こっちは人、すぐに覚えられない。」

「・・・分かりました。ではイズ様が私に名前を付けてください。」

「え。」

突然のことでつい口に出てしまった。

「え、えーと」

ラウルの方を振り向く。するとラウルは手をバツにしながら顔を横に振っていた。

・・・やるしか、ないのか。

「な、ならナナシはどう?あなた名前ないし。」

「・・・新しい固有名称を確認、設定します。完了しました、今から私はナナシです。そうお呼びください。」

「え、変更はできないの?」

「できません。」

適当に決めた名前なのに・・・

「あなたは気に入っているの?ナナシって名前に。」

「はい、それはもちろんです。なにせ初めてもらった贈り物ですから。」

「・・・」

ならいいか。

もう諦め、別のことをしようとした。その時

ピーンポーンパーンポーン

列車の上に取り付けられている音声拡大機からチャイムが鳴った。そして次に

「列車にご搭乗の皆様、まもなく当列車ノイズ号は発車いたします。また、当列車は最初の加速時に機体が大きく揺れます。近くの手すりなどに捕まっておいてください。」

無機質な声が列車全体に響き渡る。

博士の列車、ノイズ号って名前なんだ。て、そんなこと考えてないで急いで掴まらないと。

慌てて近くの手すりに掴まる。

「ラウル、急いで掴まって。」

私の声でハッとしたのか、ラウルが急いで動き出し近くの手すりに掴まった。

「発車します。3、2、1、0。」

無機質な声がゼロと言った瞬間、自身の体が浮いた。

それと同時にまるで重力の向きが変わったかのように私の体が列車の後ろに引き寄せられる。

それが数十秒続いた頃、重力の向きが直った。

「安定しました。」

また上から無機質な声が聞こえる。

・・・やっぱり、博士嫌い。

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