2:ユリサビ

ずっと寝足りない気分だった、だからずっと寝ていた。なのに、

ドンッドンッ

・・・誰?

外からなにかを叩く音が聞こえた。・・・こんなこと今まで無かったのに。

「・・・お・・大丈・・・か。」

なにを言っているかは聞こえない。けどなぜだかそれが気になる。

手を声がした方に伸ばす。

・・・え

すると手を伸ばしたところから私の今いるところに亀裂が入る。

なに?

亀裂はどんどんと広がり、やがて私の周りを亀裂がとり囲もうとした時、

パリーン

大きくガラスが割れるような音がした、だけどその後のことは覚えていなかった。

今までずっと眠っていたはずなのに眠てくて眠ってしまったから。


ーーーん、んん、ここは

目を覚ますと見慣れない天井が見えた。上半身を起こし辺りを見渡す、どうやら列車の中みたいだった。ふと下を見てみると、私の上に誰かの上着が置いてあった。

・・・私を呼んでいた人の?

いてもたってもいられなかったので周りを調査しようと立ち上がった、その時だった。

「あ、起きたんだ!」

後ろから声が聞こえた。

瞬時に戦闘態勢となり振り向くと、そこには私と同じぐらいの背と黒目黒髪を兼ね備えた男の子がいた。

私の周りにこんな男の子いたっけ?

「ま、待ってよ。少しくらい話を聞いてよ。」

両手を上げそう言ってくる。

敵意はない、話くらい聞こうかな。

戦闘態勢を解く。

「ーーー分か、はな聞く。」

男の子と話そうと思い喋ったところ、私の身に実に奇妙なことが起こっていた。

喋れない。

喋れないと分かりあたふたしていると男の子が話し始めた。

「君さ、さっきまで氷の中にいたんだよ、だから上手く話せないんじゃないかな?」

また奇妙なことを聞いた。

・・・ということは私、人体冷凍保存でもされたのかな。なら私は博士に未来へ飛ばされたの?確か人体冷凍保存はあの時でだいたい1000年の保存が出来たはず。なら私は今1000年後にいる?

そう考えていると男の子がまた話し出す。

「それと君って名前ある?君だと呼びづらいからさ。」

首を横に振る。

名前なんてなかった、あったのはコードだけ。

「なら僕が名前付けてもいい?」

てっきりこれで終わりかと思っていたのに男の子から不意にそんなことを言われ、心の中で変な声が出てしまった。

私に、名前・・・

今までに聞いた事のない事だったので驚いてしまった。

名前、か。

首を縦に振る、名前というものが少し気になってしまった。

「なら、うーん」

男の子が座り込み、腕を組んで真剣に考えること。

名前だけで、こんなに考えるんだ

「・・・よし、決まった!イズ、イズだ!」

決まったようで私に指を指し、大きな声で言う。

イズ・・・

私は、この時初めて心の中が暖かくなるのを感じたのかもしれない


「あ、あ、い、い、う、う、え、え、・・・」

私は男の子と話すために、発声練習をしていた。それと今男の子はこの列車の整備をしにどこか行っている。

「わ、わ、を、を、ん、ん、あ、あ、い、い、」

「イズー、面白いもの見つけた!」

ピト

「わ!」

頬にいきなり温かいものがつく。すぐに後ろを見ると、男の子がいて両手にカップを持っていた。

「ごめん、驚かせちゃった。それとこれ、飲んで、列車で見つけたんだ。」

1つのカップを私に渡してきた、中に入っていたのはスープだった。

スープを飲む。

「・・・温かい。」

そんな言葉が漏れる。

「もうしゃべれるの!?はやいね。」

喉が潤っていく。

今なら、言えるかも。

口を開く。

「・・・ねえ。」

「ん、どうしたの?」

「あなたの、名前って、なに?」

男の子のことが気になってしまい、ついそんなことを男の子に聞いてしまう。

「あ、そういえばまだ言ってなかったね。僕はラウル、ラウルだよ。」

「ラウル・・・」

「そうだよ。」

「よろしく、ラウル。」

「ああ、よろし

ビリッ

立ち上がり、握手をしようとしたところ、なにやら後ろから嫌な音が聞こえた。振り向くと私が着ている服、というか布が破けていた。

「・・・ちょ、ちょっと待ってて!」

ラウルがどこかに行ったと思ったら手に何かを持ってきて、すぐに戻ってきた。

「これ、列車で見つけたんだけど。」

持ってきたのは服だった。

「・・・ありがとう。」

「いやいいよ、それと脱衣所があったはずだからそこで着替えてきて。」

「うん。」

服を持って今いるところから立ち去った。


「・・・驚いた。」

私は脱衣所に入り、鏡を見たときに衝撃的なものを見てしまいそんな言葉が出てしまった。私の両足、左腕が機械だったから、それと分かりずらいけど右目も義眼だ、私の目の色は青なのに右目が赤色だった。そして顔の右半分には大きな切り傷があった。

・・・だからラウルは着替えに手袋とかズボン入れてくれたんだ。

心の中でラウルに感謝をしてから服に着替える。

それは私にちょうどピッタリだった。

チャリン

「あ、これ。」

あるものを見つけた。今まで気づかなかったが、首に何かがかかっていた。

「なんだっけこれ・・・あ!」

考えていたらあることを思い出した、博士との最後の記憶を。

「時がきたらこれを壊せ。」

博士から言われた言葉。

多分だけど、これにはなんで私を未来に送ったのかの理由が入っているはず。どうしよう、今壊そうかな。

・・・いや、ラウルにも見せよ。

今まで絶対に考えられない考えをした自分に少し驚きながらも手に、博士からもらったネックレスを持ち、更衣室から出た。


「ラウル、着替えてきた。」

「おお、似合ってるね!」

戻った時、ラウルはキッチンで料理を作っていた。

「ちょっと待ってて、もうすぐできるから。」

テーブルで待つことにしよう、じゃなくて

「ラウル、なにかハンマーのような物ってある?」

「ん、列車の工具箱に入ってたよ。見てみて、あそこの棚だよ。」

「分かった。」

ラウルが言っていた棚に行き扉を開けて工具箱を見つける。

「・・・あった。」

工具箱を開け、ハンマーを取り、扉を閉める、そしてラウルの方へ戻った。

「見つけた?」

「うん。」

「そうか、良かったね。あとご飯もう少しでできるから席で待ってて。」

「分かった。」

ラウルの言葉を聞き、席に着いた。

これは・・・食べ終わったら話そ。

3大欲求の1つにはさすがに勝てず、後でやることにした。

しばらくすると、ラウルが料理を持ってきた。

「おまたせ!」

「・・・美味しそう。」

ラウルが持ってきた料理は数種類にも渡り、どれも全く違う料理だった。

「僕、イズの好きなものが分からなかったから色んなやつ作って見たんだけど・・・」

「私なんでも食べれる。」

心配しているラウルにそう声をかける。

「そうなの?良かったー。」

ラウルが手を胸にあて、安堵した様子を見せた。

料理を食べる。

「ん、美味しい。」

「でしょ!母さんに色々教えて貰ったんだ。」

美味しく食べてる私の横でラウルが理由を話してくれたが、あまり私の耳には入らなかった。

そして、瞬く間に食べ終わってしまった。

「美味しかった。」

食べ終わったらお皿をキッチンに運んでいく。そして運び終わるとまた席に着き、ラウルに。

「ラウル、ちょっとここに座ってくれない?」

「いいけど、どうして?」

「大事な話。」

「そうなの?分かった。」

ラウルが席に着く。

今から私はラウルに私の正体とこのネックレスについて話そうと思っている。すごく心臓がバクバクする。

ラウルに嫌われちゃうかな・・・けど私は博士になにかを頼まれた。それも多分だけど自分だけじゃ解決できないこと。なら、ラウルにも伝えた方がいい。

片手を胸に、大きく深呼吸をする。

「・・・ラウル。」

「ん?」

「私ね、過去から来た人なの。」

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