第1章:君といっしょにいられれば
1:シラユメ
暗く澱む空間の中、1人の少年が横たわりながら荒く息を吸い、吐いている。
・・・思えばいつ、僕はこれに興味を向けてしまったのだろうか。
確か、4歳の頃だったかな、あの時図書館に行ってあの本を取らなければ僕の未来は変わってたからしれない。だけど、そんなことを考えても、今はもう取り返しがつかないところまでいってしまったんだ。ああ、なんだか意識が遠のいていく、もう僕はダメなんだな。何となくだけど分かる。
ん、僕の隣に誰かいる?誰?こんなところに。
なにか喋っているけど全然聞こえないよ。
もっと、ちゃんといっーーー
ここで少年は意識を完全に失なった。
無理もない、少年の胸には頭1つ入る穴が空いていたのだから。
「ーーーはっ!」
ベットから素早く体を起こす、なぜか僕はたくさんの汗をかいていた。
「もう朝なのか、なんだか全然眠れた気がしないな。」
窓から外を眺める。
「ラウルー、ご飯よー!」
床の下から大きな声が聞こえた。
なんでそんなに大きな声なんだ?考えてみる・・・そうだ!僕は朝が弱いんだ。だから母さんは毎日大きな声で僕を起こしてくれているんだ。なんでこんな当たり前のことを忘れていたんだろう・・・まあいいや。
少し疑問になったが気にせず、寝巻きから私服に着替えて部屋を出て階段を降りる。
「あら、早かったねラウル。」
母さんが少し驚いていた。
「たまには早く起きるよ、母さん。」
「うーん、まあ確かにそんなとかもあるね!ほらラウル、朝ごはん。」
母さんが僕の座った席の前に朝食を出してくれた。それは焼いた食パンの上にベーコン、目玉焼きを乗せた簡易なものだ。
朝食を食べる。
うん、いつも通りの味。
そう思いながら朝食を食べていく。だが、なぜだか朝食を食べるたびに目元に違和感がだんだんと強くなっていく。
「あらラウル、どうしたの?泣いちゃって。」
「え?」
顔に手を当ててみる、本当だ手に水がついた。なんで?この朝食は毎日食べてるはずなのに。
そう思っていても自分が流している涙はどんどんと増えていく。
「うう、ご馳走様!遊びに行ってくる。」
自分の泣き顔を母さんにずっと見られるのには耐えられず朝食を半分以上残し、勢いよく玄関から外に飛び出した。
「あ、こら!ラウル。」
後ろから母さんの怒鳴り声が聞こえた気がしたが気にせず走った。
実際僕は遊びに行かない、街の広場を抜け城門から出て、すぐ横に見える森に入る。少し進むと太陽の光が遮られていない場所が出てきてそこには小さな木を支柱としたテントがはってある。僕はその中に入った。
そう、この建物は僕の秘密基地なんだ、まだ誰にも見つかったことがないんだよ。
中に入り明かりをつけると大量のメモが貼られている。
「よし、今日も始めるか!」
そう言いメモを全て剥がしひとつにまとめ、裏にする。そして1番上からメモを取り、表にする。
「えーと、これは列車、次は・・・車、次は携帯!」
僕は毎日これをしている。ある日僕は図書館に行き、1番奥の本棚の1番下のところに名前のない本を見つけた。それが気になりその本を買って、家に帰って読んでみると最初の1ページ目に衝撃の言葉が書いてあった。
「この世界は2回目の世界だ。」
その先を読むとどうやら約1000年前、この世界は創られたみたいで、過去の世界、地下世界は僕が今いる地上世界より発展していたようだけど、そのせいで地下世界に破滅が起きたと書いてあった。破滅の原因は書いてなかったけどその先には過去にあった機械と呼ばれるものの絵や地下世界の入口などが書いてあった。僕はこの本に書いてあった機械に興味が湧き、全部の機械を覚えようと毎日メモに写生した機械の名前を言っていっている。だけど今日でこれも終わりになる。
「・・・うーん、今日の覚えるの終わり!」
全部のメモに描いてある機械の名前をいい終わり手を伸ばす。
「よし、名前覚えも終わったしついにあれをやる時がきた!」
僕がそう言うとテントの支柱となっている木に手を伸ばす。木の表面を触る。
「えーと、ここだ!」
木の中で僅かな切れ目を探しだしそこに爪を入れ表面を剥がす。その中から出てきたのは地図だった。
その地図を持ってきたカバンに入れる、機械のメモも。テントに残ったのは小さな寝床と明かりだけになってしまった。明かりを消し、カバンに入れる。
「・・・ついにここともお別れか、じゃあね。」
秘密基地から離れていった。そして僕はこれから地下世界の入口、王城の地下に行く。
今僕は暗闇の中にいる、まだ昼間のはずなのに。理由は簡単だ、今僕は王城に続く下水道にいるから。
「この地図だと、次はあっちか。」
地図を見ながら進む。この地図は地下世界の入口までのルートが書かれている。ちゃんと入口まで矢印で書いてあるから僕でも行ける。
「えーと、次は左。次は右。そしてここを真っ直ぐに行けば・・・あった!」
地図に書いてあった王城の入口のところに着く。そこに置いてあったハシゴで昇り、王城に入る。出たところも暗闇で、結局明かりを消すことは1度もなかった。
そこから少し歩くと下に続く階段を見つけた、地図を見るとこの階段を降りるらしい。階段を降りる。
・・・いくら階段を降りただろうか、ずっと暗闇で手に持っている明かりだけが唯一のしるしだ。少し不安になってきた頃、いきなり階段の高低差が無くなり、転びそうになった。どうやら目的の場所に着いたみたい。
明かりで僅かに見えた松明に明かりの火をあげる。
ボッ、ボッ、ボッ
すると、火をあげたところから奥に連鎖的に奥の火がついていく。
「わあ!」
目の前を見るとそこには地面に貴族の屋敷ぐらいの大きさの扉があった。
「これが、地下世界に続く扉。」
ごくり
扉に近づく。
「誰だ!」
あと少しで扉にたどり着けるところで、後ろから声が聞こえた、振り返ると2人の武器を持っている男がいた。
しまった、ここは3時間ごとに見回りが来るのを忘れていた。
慌てて逃げる。
「待て!」
2人の男が追いかけてきた。不意に奥を見ると小さな扉がある、あそこに逃げよう。そこまで全力で走ると扉に着き、その中に入る。鍵が付いていたので鍵をかける。これで時間を稼げるだろう。部屋の中を見る、中には油やらモップなどがあった。まずい、逃げ道もないし戦える道具もない。
「ど、どうしよう・・・ん?」
焦っていると不意に頬に風を感じた。風を感じた方に近づくと石壁に僅かな隙間が空いていた。
「しめた!」
そこにここにあったモップに適当に落ちていた石を括りつけて全力で叩く。そうすると、叩いた部分から石壁がみるみる崩れていき、道が現れた。他に逃げ道もなかったのでそこの道を歩くことにした。
結局ここも暗かった、なので明かりをつけて進んでいたのだが途中で油が切れてしまい暗闇の中、壁に手を当てながら進んでいった。
ふと、また頬に風を感じた。
「外!」
外に出られると思い壁から手を放し、走る。
それが運の尽きだとも知らず。
「え?わあーーーーー!」
走って数十秒後、僕は謎の浮遊感に見舞われていた。そう、道に穴があいていたのだ。
当然僕はなんの抵抗も出来なく無様にその穴に落ちていった。
落ちている最中、不思議な夢を見た。
2人の少女に囲まれて、僕が死んでいく夢。なんとも荒唐無稽な夢だと思ったけど、何故か夢の僕はひどく落ち着いていた。
・・・どうして、だろうか。
「う、うう、ここは?」
目が覚めた、当たりを見渡すとここは明るく、上を見ると天井の隙間から光が入ってきていた。
・・・とりあえず、辺りを見てみよう。そう思い歩き出した。
ここはあまりにも広かった。
現在僕は一方向に進んで行っているのにまだ終わりが見えない。それと体がだるい、幸い落ちたところに砂の山があったから落ちた衝撃をかなり吸収してくれたがそれでも体にはダメージが入っている。近くに座るのにちょうど良い石があったのでそれに座ってしばらく休憩している。休憩している最中にカバンの中身を調べたのだが本とメモ、地図はあったのだが明かりと食料は落ちた時の衝撃でダメになってしまっていた。
まずい、明かりはまだいいけど食料はどうしよう、ここに水と食料がいるように見えないし。
頭を抱えながら悩む、だけど解決案は浮かばない。
仕方ない、どの道さっき落ちてきた穴からは上に行けないだろうしここまま進もう。
そう決意し、石から立ち上がる。そしてまた歩き出した。
「ん、あれは。」
あれからだいたい30分が経った頃、僕は変なものを見つけた。奥に謎に光が沢山集まっている所見た。僕は気になり、それに走り出した。
「わあ。」
そこに着くと僕は奇妙なものを見た。天井から蔦に絡まっている何かを見る、それは僕が何度も見たことのある、列車だった。
「・・・本当に、本当にあったんだ!」
大変な状態であるにもかかわらず、僕ははしゃいでしまった。それもそうだ、もうこの世界にはない列車が今目の前にあるんだ。
「列車の中ってどうなっているんだろう?」
ふとそんな疑問が浮かんだ、僕はその疑問を解決するために蔦に掴まって列車に向かった。
列車にたどり着く、だけど入口と思われるところは閉まっていた。
「えーとこういう扉を開けるのは・・・確か扉の横にあるパネルに手をかざすはず。」
本で見た情報を実践してみる。
「わっ!」
するとそのパネルから唐突に光が漏れだした。
「新たな指紋を認証、登録を開始します。」
無機質な声が聞こえた、それと同時にパネルの光がさらに増し、僕の目にも光が来る。
「う。」
咄嗟に目をつぶってしまった、けど
「指紋登録、虹彩登録完了、いらっしゃいませ。」
認証が完了したみたいで扉が開く。わけが分からなかったがなされるままに中に入った。
「え。」
中に入るとそこは僕が今まで見てきたものとは違う空間だった、2つの意味で。そこには氷の中に少女がいたのだから。
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