9:リイアス
ということで、僕はsg-27が作れるのかナナシさんに聞きに行くためにまた地下5階に訪れた。
中はこの前来たよりも床や壁がボコボコになっていて、やっぱりイズが倒れている。けど、多分これが当たり前の光景だと自分に言い聞かせて、気にしないでおくことにした。
「ナナシさん、また聞きたいことがあってきたんだけど、今いい?」
「いいですよ、なんでしょうか。」
「本を読んでたらこんなのを見つけて、作れないかなって思って。」
例の本を見せる。
「このsg-27ってやつ。」
「機械無効化銃・・・なるほど、これは使えそうですね。どれくらい無効化できるかは別として、電気を膨大に喰うと言ってもパレスチウムがあればどうにかなりますし。」
「そうでしょ!」
やっぱり僕の予想は当たっていた。けど
「ですがこれを作るとしても設計図と材料がありませんね。」
「あ、設計図はあるよ。これ。」
カバンからsg-27の設計図を取り出す。
「元々その本にあったんだけど、脆くてとれちゃって・・・」
一応理由は言っておく。
「・・・主な材料は大絶体だいぜつたいですか。」
「大絶体?」
「はい、大絶体とは電気を通さない絶縁体よりさらに強力なもののことを言います。絶縁体だと雷は防げませんが、大絶体なら雷すら防ぎます。」
「そんなにすごいんだ。」
関心を持っていると、
「・・・推測ですが大絶体ならこの基地にもあると思います。」
「え、本当!?」
「はい、おそらくこの基地の金庫に使われていると思います。」
「ナナシさん、行こ!」
前のめりになりながらナナシさんにそう言う。
「・・・分かりました、行きましょう。イズ様は・・・まだ起きそうにありませんね。」
「やったー!」
そうして、訓練場を出た。
その後、気のせいかもしれないけどイズに感謝された気がした。
1階のホールに戻ってきた。
「えーと、金庫室ってどこにあるんだろう。」
「おそらくこの地下の一番下の10階だと思います。」
ナナシさんはそう言うと階段に歩き出した。
・・・エレベーター、使ってみたかったな。この階段一段一段が高いから嫌なんだよな。
そう思いながらもしぶしぶナナシさんに着いていく。
だが6階まで着いたところで
「いてっ」
下を向きながら歩いていたから止まっていたナナシさんに気づかず、背中にぶつかってしまった。
「ナ、ナナシさん?」
「・・・困りましたね。」
「何かあった・・・わあ。」
何があったのかと思い、ナナシさんの体の横から前を見てみると、そこには原型が残ってないくらいに崩れた階段があった。
「・・・どうするの?」
ナナシさんが手を顎にやりながら考えている。そして顎から手を外したかと思うと、
「・・・ラウル様は、プライドというのはありますか?」
よく分からないことを聞いてきた。
「?別にないと思うけど・・・」
「なら、少々我慢しててください。」
「え、わ!」
ナナシさんはそう言うと僕の体を腕で抱き抱え、そのまま飛んだ。
そしてそのまま7階に着き、ナナシさんが僕を下ろす。
「すみません、これがあるまじき行為だと分かっていてもこれが最も早く着く方法だったので。」
「べ、別に大丈夫だよ。ただちょっとびっくりしただけだから・・・」
自分の頬を触ると少しだけ熱くなっていた。
「と、とにかく行こう!」
誤魔化すように話題を切り替える。
「そうですね、先を急ぎ・・・」
ナナシさんも話題を切り替え、階段に目を向けた。だが、階段に目を向けた瞬間ナナシさんの言葉が止まる。
「・・・ラウル様すみません。どうやら、まだ続きそうです。」
「え、」
急いで階段を見てみると・・・そこには、階段がなかった。
「・・・ナナシさん、また、お願い。」
「はい・・・」
結局、地下10階に着くまでの階段は全部崩れていて、終始ナナシさんにお姫様抱っこをされた。
そして地下10階に着き、多分金庫室だと思う部屋の前まで着く。
「や、やっと着いたね。」
「はい、行きましょう。」
ナナシさんが扉を開ける。中は一つの壁だけ色が違かった。
・・・これが、金庫なのかな。
そう思っていると、
「ラウル様、大絶体はおそらくこの壁に埋まっていると思います。」
ナナシさんはそう言いながら手で色が違う壁を叩く。
「そうなんだ、どうやって壊せるかな。」
「いえ、壊すのは私がやりますのでラウル様待っていてください。」
「・・・分かった。」
「では始めますので少し離れてください。」
距離を取る。
「では、いきます。」
その声と同時に、ナナシさんは思いっきり蹴った。そして、轟音がなる・・・と思ったが、
「・・・意外に硬いですね。これだとこの手では少し時間がかかりそうですね。」
そんな言葉が返ってきた。
僕もナナシさんが叩いた場所を見てみると、そこには少しだけの傷しかついていなかった。
「ラウル様、どうやら少し時間がかかりそうです。しばらく待っていてください。」
ナナシさんがそう言うと、また蹴る。
・・・やることないしさっき見たあの部屋に行ってみよ。
ナナシさんが壊すまで暇なので、さっき気になった部屋に行ってみることにした。
さっきは気づかなかったがその部屋の前には監視室という札があった。
監視室に入り、何となくそこら辺のボタンを押していると、一斉に画面が光り始め、外の景色が映った。
「こんなのもあるんだ。」
外の景色を見ることにした。
それにしてもすごいなぁ、こんな薄暗いところであのガラスが光ってるのってまだ電気が流れてるからだっけ。999年も経ってるのにまだ光ってる・・・科学って本当、すごいな。
そんなことを考えながら外の景色を眺めていると、ふと空に謎の赤い物体があることに気づいた。
「ん、なにあれ。」
目を凝らしてもう一度見てみる。
「あれって・・・マグマ?」
それが地下世界に来て最初に襲ってきたマグマだと気づいた。
「な、ナナシさん!」
急いで金庫室に戻る。
「・・・なんですか。」
「ま、マグマが近くに来てる!」
「ああ、それなら大丈夫です。」
「ど、どうして!?」
「結界を張ったからです。」
「け、結界?」
「視界が歪み、音が通らない透明な壁とでも思っておいてください。」
「・・・つまり、見つからないってこと。」
「そうです。」
ナナシさんはそう言い、また手を動かし始めた。
・・・よ、良かったー。
どっと尻もちをつく。
そういえば、最初にマグマに襲われた時もナナシさんが保護結界がどうとかって言ってたような、それで結界って内を守るものだと思ってたけどこういうこともできるんだ。
今までの緊張が抜けると冷静に結界のことを考え始めた。
結界ってすごいな。僕も使ってみたいな・・・いや、無理だよね。こんな中途半端な知識が入った奴にナナシさんが教えてくれるわけないよね。
・・・そんなことより、見つからないんならあのマグマのことよく見ておこ。
そう思いまたさっきの部屋に戻り、よく観察することにした。
そしてよく見てみると新しいことが分かってきた。
そのマグマはまるで意思を持っているかのように空を動いており、全長は数十メートルにも及ぶ。そして時に形を様々なものに変えていた、生物になったり四方に分裂したりと、まるで遊んでいるみたいだった。
「・・・すごい。」
ふいにそんな言葉が漏れてしまった。
だがそれと同時に、おそらく金庫室から大きな音が聞こえた。
戻ってみると煙が立っていた。
「ーーーラウル様、大絶体が見つかりました。」
「ごほっごほ、本当!」
「はい、この通り。」
ナナシさんが僕に右手を出す。そこにはちぎれた厚い布のようなものがあった。
「これが、大絶体?」
「はい、そうです。」
「じゃあこれで作れるの!」
「いえ、あとはこの基地に銃を作れる設備があればです。」
「そ、そうなんだ・・・」
少しだが落ち込んでしまう。
「ですが、この規模の基地ともなれば設備はあると思いますので心配なさらないでください。」
「ほ、本当!」
「はい、本当です。」
「やったー。」
「では、ここにはもう用がないので戻りましょうか。」
「うん!」
ウキウキになりながらナナシさんの後をついていった。
そして、気づいたら地下5階の訓練場に戻っていた。
イズは、相変わらず気絶している。
「ラウル様はこれから銃が作れる設備を探してください。」
「分かった。」
「では。」
「うん、バイバイ!」
そう言い、上に上がっていった。
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