8:コウボウ

数時間前


・・・階段は足が疲れるからあまり使いたくない、だから本当はエレベーターがあったから使いたかったけど、ナナシに危険と言う理由で却下された。

「・・・着きました、ここです。」

どうやらいつのまにか着いており、その階には地下5階のマークがあった。

ナナシが目の前の2枚の扉を開ける。

「・・・広。」

そこは私がつい言葉に出てしまうほどに広く、よく目を凝らさないと奥の壁が見えないほどだ。

「確かに広いですね。一気に大人数で訓練できるように広いとは思ってましたがここまでとは・・・」

「・・・まさかここで2人でするの?」

「そうですが・・・さすがに物悲しくなりますね。」

「そうだね。」

「・・・」

「・・・」

「・・・まあ始めましょう。」

「・・・うん、分かった。」

「とりあえず、イズ様の今の強さを見たいので私に攻撃してみてください。」

「・・・本気でいいの?」

「はい、大丈夫ですよ。」

「・・・好きなようにやっていい?」

「はい、いいですよ。いつでもどうぞ。」

ナナシはそう言うと、自身の態勢を変える。おそらくだけど私の攻撃を受けやすいように。

ということで自分もやりやすい態勢に変える。

この足もまだ使ったことないからちょうどいい機会。

左足で地面を強く蹴り、ナナシに近づく。そこから右足を大きく振り、ナナシの顔に向けて思いっきり蹴った。

なんで顔に蹴ったかって?それはナナシが本気でいいって言ったから。

だがこの攻撃でこれが早く終わらないと気づく。

ナナシは顔のギリギリで私の足を手で止めていた。それがさも当然かのように。

「・・・強さは、申し分ないですね。」

「鍛えられてたから。」

そう言いながらも今度は左腕で首を狙う。

だがやはりナナシには届かずギリギリで止められる。

仕方なく後ろに下がった。

「・・・強いね、一応全力でやったんだけど。」

「当然です。なにせ私は戦闘用に作られましたから。」

「メイド服着てるのに・・・」

「これは何故か着ていただけです。」

「・・・まあいいや。」

またナナシに近づく。

・・・自分でダメなら、武器に頼るまで。

ナナシに近づくと、腰つけバックから何かを取り、投げる。その投げたものが床に衝突するとそこを中心に大きな爆発音が聞こえ、黒い煙が上がる。

・・・好きなようにやっていいって聞いていいよって答えてたから別にいいよね。よかった、武器庫から手榴弾持ってきてて。

けど、ナナシはアンドロイドだからおそらくあんま効いてないよね・・・多分。

そして煙が晴れると、案の定ナナシは多少メイド服と肌に傷がついているだけでほぼ無傷だった。

やっぱり・・・はあ。

腰つけバックに手を入れ、2本のナイフを手に取る。

そしてナナシに向かって投げた。だがナナシは余裕でその2本のナイフを空中で取る。

・・・機能も全く落ちてない。

またナイフ2本を腰つけバックから取る。

そして今度はナイフを両手に持ってナナシに走っていき、首を狙って両方からナイフを振る。

だがやはりこれもギリギリで止められた。

これは、想定通り・・・

ナナシの腹を壁として蹴り、後ろに飛ぶ。そして私がナナシから離れて数秒後、ナナシの周りから連続で爆発音がした。

・・・これで、終わりじゃない。

バックからまた新しいものを出し、下に投げる。

すると、黒煙の中から轟音と輝く光が出た。

雷弾らいだん、中心から半径5mに強力な電気を放出する。

これなら、アンドロイドにも有効・・・けどこれでも心配だから、

着地すると同時にまたナナシの方向に走る。

煙でよく見えないが、感覚でナナシの胴体にナイフを突きつける。

・・・一応感触はあった、これで動けなくなってたらいいけど・・・多分、無理だよね。

その予想は当たり、煙が晴れると前回よりメイド服と肌についている傷が増えて、ナイフが少し体に当たっているだけだった。

ナナシがナイフを弾く。

「・・・終了にしましょう。」

すぐに動けるように体勢を整えようとしたところ、予想外の言葉が返ってきて少しばかり体が固まってしまった。

「・・・終わり?」

「はい、今のでイズ様の大体の強さが分かりましたので。」

「私、やったことほとんど自分の力じゃないんだけど・・・」

「いえ、自分の攻撃ではダメージを与えられないと分かりすぐさま別の方法に切り替えることも立派な戦術です。それに、最初の2撃でイズ様の強さは大体分かりましたから。」

「・・・あれだけで分かってたんだ。」

「はい。怖いくらいに分かりました。」

「どういうこと?」

「ただの言葉のあやです。」

「ふーん。」

「・・・あの殺気のない冷酷な攻撃はあそこで育ったからなのでしょうか・・・」

「?」

「いえ、気にしないでください。さて、次にいきましょう。」

「・・・まだやるの?」

「はい。今度は私がイズ様に攻撃しますので、避けるか守るかしてください。」

「・・・やんなきゃダメ?」

「はい。」

・・・やるしかないのかな。避けるなりして早く終わらせよ。

「では。」

ヒュッ

瞬時、まるで風を斬り裂くような音が聞こえた気がする。

だが、それが気のせいではないと気づくのには1秒足らずだった。

気づいた時には私は、壁に埋まっていたから。

「あ」

最後に聞こえたのはそんな言葉だった気がする。


「う、うぅ、」

目が覚めるとまず最初に高い天井が目に入った。

「・・・どうして、眠ってたんだっけ、」

思考を巡らせて考えていると

「おや、もう起きたのですか。」

隣から声が聞こえ、振り向くとボロボロなメイド服を着ているナナシが立っていた。

「ナナシ、私ってなにがあったんだっ・・・」

ナナシにあったからなのかいきなり頭に電気が走るかのように思い出した。ナナシに、多分蹴られて気絶させられたことに。

蹴られた腹を見てみる。そこは治療がされており包帯で巻かれていた。

「すみません。私が加減を間違えてこんなことになってしまいました。」

ナナシが頭を下げてくる。

「別にいいよ、命に別状はないし。それに、ちゃんと治療までしてくれたから。だから頭上げて。」

「・・・分かりました。」

渋々ながらも頭を上げた。

「・・・それよりナナシ、今更だけど私なんでこんなことやったんだっけ。」

「イズ様の訓練内容を決めるために、現段階のイズ様の強さを知っておく必要があったのであのようなことをしました。」

「その訓練内容って今どんな感じ?」

「そうですね、イズ様は防御がイマイチですので攻撃を伸ばしつつ守りは避けでやろうと思っています。」

「・・・大体どのくらいかかりそう?」

「具体的に言うなら早くて2週間、遅くて4週間前後です。」

予想以上に時間がかかる。

「なんとか早く済ませる方法ってない?」

「ありますが・・・死ぬ可能性があります。」

「それだとどのくらい。」

「1週間前後です。」

・・・背に腹は変えられないか。

「分かった。やる。」

そう言いながら立つ。

「本当にやるのですか。」

「うん。一度言ったことは変えない。それに・・・博士にちゃんと倒すって言ったから。」

それを聞いたナナシが手を腰にやり、大きなため息を吐き、

「・・・分かりました。どうか、死なないでくださいね。」

少しばかり悲しげな声でそう言ってきた。

それから、訓練が辛すぎて何度も気絶する羽目になった。

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