7:ツメサキムラクサ
薄暗い図書室の隅、沢山の本に囲まれている少年がいる。
「うーん。」
1冊の本を開きながら頭を抱えていた。
「はあ、ダメだ。この本に書いてあることが全然分からないよ。」
ナナシさんにこの世界について学べと言われてはや数時間、最初はイズが言う博士がくれた知識で乗り越えられたけど、途中からどんどん分からない言葉が出てきて読む速度がどんどん落ちてゆく。
「確かイズはナナシさんと訓練をしてるんだっけ。ちょっと様子見に行こ、それで話せそうだったら聞いてみよ。」
そう考え、自分の周りにある数百冊の本をどかし足を動かした。
えーとマップは、これか。ナナシさんが言ってた場所は・・・多分ここかな。
ホールにあるマップを見てナナシさんが言ってた場所を見つける。
地下5階なんだ、結構遠いな。エレベーターは使えないし、階段で行くしかないのか。
仕方なく階段で行くことにする。
・・・ナナシさん、時間空いてたらいいな。
地下5階に着く。
ガンッ
するとイズとナナシさんがいると思われる部屋から奇妙な音が聞こえる。まるで思いっきり壁にぶつかった時のような音が。
なんの音だろう・・・
気になり扉を少し開けて中を見てみる。
するとそこには壁の近くでうつ伏せに倒れているイズとその前に立っているナナシさんがいた。
・・・これって訓練な、の?
「おや、ラウル様。」
この状況を見て少々固まっている僕に気づいたのかナナシさんが僕の方に向き、話しかけてきた。
「なにか問題でもありましたか?」
「え、ああ、うん。そうなんだ。実はこの本を読んでるんだけど全然言葉が分からなくて、ナナシさんなら知ってるかなって思って来たんだけど・・・お邪魔だった?」
「いえ、全然お邪魔ではありませんよ。むしろちょうど良かったです。」
「もしかしてここに来た時に聞いた大きな音と関係ある?」
「はい、そうですね。少しばかり本気でイズ様のことを蹴ってしまい気絶している最中です。」
「・・・ナナシさんってイズに優しくないんだね。」
「仕方の無いことです。イズ様には強くなって貰わないと困りますから。」
「はは。」
なんの言葉を返すべきか分からず、とりあえず笑っておく。
「まあ世間話はこれくらいにしましょう。その本を見せてみてください。」
ナナシさんが僕の方に手をやる。
・・・渡せってことだよね?
問題となっている本をナナシさんに渡すとすぐに中を見始めた。
「・・・なるほど、この本は暗号化がさせてますね。」
ナナシさんが本を見て数分、そんな言葉が返ってくる。
「暗号化?」
「はい、もし第三者がこの中身を見てしまっても分からないように文字を変換しておくことを暗号化と言います。おそらくここに暗号の情報のデータがあると思われますので少々お待ちください。」
ナナシさんがそう言うと空中に光る板のようなものを出し、操作し始めた。
こんなのもあるんだ。
興味津々にナナシさんが操作している板を見ていると何かを見つけたようで操作している指を止める。
「ありました。」
ナナシさんが紙に書き始める。
「・・・出来ました。どうぞ、暗号の一覧です。」
ものの数十秒で手を止め、僕に渡してきた。
「ありがとうナナシさん。」
「いえ、礼にはお及びません。」
「・・・また頼ってもいい?」
「はい、いいですよ。」
「本当?良かったー。じゃあ、ばいば
「う、うぅ・・・」
ここから離れ図書室に戻ろうとした時、突如僕の左側から謎の呻き声が聞こえた。
すぐに振り向くとそこには僅かに手を動かしているイズがいる。
「イズか、びっくりしたー。」
「・・・ラウル?どうしてここに。」
「ちょっとナナシさんに聞きたいことがあって・・・」
「そうなんだ。」
「あ、あの、ナナシさん。本当にイズって大丈夫なんですか?」
「大丈夫なはずです・・・多分。」
なんか最後に嫌な言葉が聞こえた気がするけど聞かなかったことにしておく。
「ラウル様はそろそろお帰りになられてください。イズ様も目覚めたので訓練を再開するのですが、おそらく巻き添えをくらうことになります。」
「・・・そんなに訓練って激しいんだ。分かりました。イズ、バイバイ。」
「うん、さようなら。」
ナナシさんに言われた通りその場を離れることにした。
途中、階段を上っている時に何度も大きな音が聞こえた気がしたので、イズの幸運を祈っておくことにした。
それから数時間
また僕は図書室の本を読み漁っている。
「・・・ナナシさんってやっぱすごいんだな。本がスラスラ読める。」
最初に出会ったあの暗号化がされている本を読み終わってからどんどんと暗号化がされている本が出てきたのだが、ナナシさんのおかげでものすごく早く読み進められている。
今度お礼に美味しいご飯でも作ってあげよう・・・ナナシさんってアンドロイドだけど食べれるよね、多分。
そんなことを考えているとちょうど今読んでいる本が読み終わる。
はあ、確かに全部興味深いけど全然面白くないなー。なにか面白そうなのないかな。
そう思い面白そうな本を探し始める。
すると
「ん、なにこれ。えーと、」
ナナシさんに渡された暗号の一覧を見ながらタイトルを調べる。
「失敗作の兵器の一覧?なにそれ、面白そう!」
その本を読んでみることにした。
重力を制御する装置、いくらでも撃てる銃、絶対に見つからない潜水艦、永遠に使える爆弾、どこでも移動可能な戦車。
そこにはまるで子供が考えたかのような案がずらりと並んでいる。
だが不思議と不可能とは思わない、むしろ興味の文字が頭を支配していく。
・・・再現、できないかな。いや、無理だよね。
一瞬再現したいという気持ちが湧いたが、前人にもできないことを僕ができるわけがないと頭で理解し、諦めた。
はあ、なにか僕にでも作れそうなものないかなー。ん、なにこれ。
小さな希望を託しながら次のページを開くと一つの銃の形の写真があった。
sg-27: 機械無効化銃
一発にかかる電気が膨大なため、実用化に至らず。
そのあとは詳しい説明が書いてある。
・・・
・・・
・・・
・・・これ、作れるよね?
電気を膨大に喰うって言ってもパレスチウムならいくらでもエネルギーは取り出せるし・・・あとでナナシに聞いてみようかな。
薄暗い図書館の中、1人の少年の小さな目標が決まった。
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