第27話 一番求めているもの

 今アイツ、完全に「自分の分はある」って言ったよな。


「おいこら、ちょっと待て。何サラッと逃げようとしてるんだ」


「ちょっと、急用を思い出したニャ……」


「嘘つけ! そんなのある訳ないだろ! センリ、そこに正座!」


「ニャッ!?」


 この場から逃げようとするセンリに命令して動きを止める。


「何処に隠し持ってるんだ! 言え!」


「何も持ってないニャ! 言いがかりニャ!」


「ええい、自白しておいて今更見苦しいぞ!」


 宝を独り占めしようったってそうはいかない。こうなったら、手荷物検査でも身包みを剥いででも――。


 と、センリの服に手を掛けた後になって、途端に自分が今何をしようとしているのかを理解した。


「……ニャ、ニャア…………」


 俺が掴んだことで服が開けそうになり、顔を赤らめるセンリ。


 その艶やかな素肌が俺の視界に入り、否応なしに感情を掻き立てられる。


 この絵面、完全にセクハラじゃねぇか……!


 落ち着け、一先ず冷静になろう。まずは手を離して、センリから隠した宝箱の在処を聞き出すんだ。


 気を落ち着かせ、服から手を離すとセンリの赤らめていた顔色が元に戻る。


「………………ニャ~るほど?」


「……何だよ」

 

 ニヤニヤとこっちを見てきて、勝ち誇った様な笑みを浮かべている。


「いや~、ご主人がニャーの服一枚も脱がせられない様な腑抜けだったとは驚きニャ~と思って♪」


 コイツッ……煽ってやがる!


 俺が手を出さなかったのをいいことに! 満面の笑みで!!!


「いいから、早く宝箱を何処にやったかを言え!」


「何ニャ何ニャ、そうなら早く言えばいいニャ」


「可愛いトコあるニャーね、ご・しゅ・じ・ん♡」


 その一言で、俺の中にある何かが壊れた。  


「……分かった。よく分かったよ……センリ」


「分かったって、何がニャ?」


 決まってるだろ。


センリお前には一切の手加減が要らないってことだよぉ!」


「ニャニャ!?」


「意地でも見つけてやるぞ宝箱! 覚悟しろぉ!」


「ニャーーー!!!」


「……あれ、止めなくていいんでしょうか?」


「……私達が割って入ったところで、どうにかなると思う?」


 そうして二人が静観する中、俺はセンリの全身という全身を探り、もう一つの宝箱を見つけたのだった。


   * * *


 センリが隠し持っていた宝箱はジャンケンという名の公平により、俺が貰うことになった。


「何が出てくるか分からないって、やっぱりドキドキするな」


 さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。気になる中身は――。


「……ん?」


 箱の中に入っていたのは特別珍しいものでもなかった。


 ただ、この世界ではという、その一点を除けば。


「これ……もしかして、俺のデッキか?」


 それは正しく俺にとっての宝であり、俺が一番求めているものと言っても過言ではなかった。



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