第24話 欠けた鉄仮面
「…………」
おかしいな。『怨恨の小剣士』って、剣士だったよな? ごろつきじゃなくて。
必殺技も「怨衝苦
剣士なんだから、せめて剣使って倒してやれよ……。
「お、おぉぉぉ…………」
嘘だろ!?
剣士の全力マッスルパンチに上半身を砕かれているにも関わらず、
あの攻撃をまともに受けてダメージがないとは思えない。というか、攻撃力が∞である以上、攻撃が通れば確実に勝てるはずなのに……。
「あれっ! あそこ!」
突如スリィブが
「
「コア……? コアって何だ!?」
「
そういう重要な事は先に言ってくれ! どうりで動ける訳だ!
「とにかく、あれを壊せば勝ちなんだな!?」
予想外の事態だが、それならもう一度殴れば――。
「油断した……。まさかその手下にそれだけの力があったとは……だが――!」
柱と見間違う程の大きさと重厚感。
そして
「ここから先は待ったなし……。全身全霊を以て、お前達を撃滅する!!!」
欠けた鉄仮面の奥にある紅い目が一層の輝きを放つと、背後から大きな物音が聞こえてきた。
振り返ると、俺達が通ったはずの出入り口が壁で塞がれている。これでいよいよ、この場から逃げることは出来なくなった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
地面を揺るがす衝撃波が俺達へ向けて襲い掛かる。
避けないと――ッ!
その思考に至った頃には、衝撃波はもうすぐそこまで迫っていた。
駄目だ……、速すぎる……。
――ガキィン!!!
衝撃波と俺達の間に割って入る人影。
既に攻撃を終え、元の姿に戻った『怨恨の小剣士』が自らの剣で衝撃波を正面から受け止めていた。
だが、それも一瞬。
力負けした『怨恨の小剣士』は全身を衝撃波に飲み込まれ、そのまま光の粒となってこの場から姿を消した。
そうして生まれた時間は、僅か三秒。
去れど、この僅かな三秒がこの場にいる全員の運命を大きく変えた。
「――アブソ・クルード!」
後ろにいたプラテアがこの間に俺達の前へと立ち、両手を合わせる。
すると重ねた手の中から光が溢れ出し、壁となってあの
「何とか間に合ったみたいですね。良かった……」
「悪い、助かった!」
もしプラテアが守ってくれなかったら、全員あの衝撃波に飲まれて終わりだった。
いや、それ以前に俺は攻撃の命令しか出していなかった。それなのに、命懸けで俺達を助けてくれたのは……。
「――ありがとな」
胸に手を当てると、そこには墓場に送られたカード達の魂……というべきだろうか、それが確かに存在している。
勇気ある剣士に礼を述べ、改めて
一先ずループは解除したが、ここからどうしたものか。
『遥か遠き道 リンネ』の能力で墓場のカードを山札に戻し、再度『怨恨の小剣士』を召喚するか? いや、流石に同じ手は二度と通じないだろう。
さっきは油断していたから特段何もしてこなかったが、今は違う。
あの巨大剣による攻撃を搔い潜りながら再度ループを成立させるのは不可能だ。
俺の手札は三枚。一枚は『ビビり弾』。実質役に立つのは二枚だけ。
「我が一撃を防ぐとは、大したものだ。だが、いつまでもそうして耐えられるとは思わないことだな――ッ!」
一度振り下ろしただけでもあれだけの衝撃波を生み出していたのに、今度のはケタが違う。
嵐、いや天変地異が起こったみたいに
「――ぐうっっっ!!!」
光の壁に衝撃が連続して降り注ぎ、思わずプラテアは片膝をついた。
「威力がっ、強すぎて……このままだとっ…………!」
限界を迎え、耐え切れなくなることは彼女の表情が何よりも鮮明に表していた。
一刻も早くこの状況を打開しなければ、今度こそ終わりだ!
何か手立てはないか!? 何か!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺が悩んでいる間にも
実際、
「……いや、待てよ?」
もう一度自分の手札を確認する。
このカードなら、もしかしたら……いや、迷ってる余裕はない!
「プラテア、もう少しだけ耐えてくれ! センリ! スリィブ! こっちに来い!」
そうして二人を呼び寄せ、ついさっき思いついた作戦を二人に伝える。
「――出来るか?」
「了解、ニャ!」
センリは俺の命令を受け、一人
「スリィブはセンリが時間を稼いでる間に準備してくれ!」
「準備って言ったって、私の魔法であの
「これはお前にしか頼めないんだ! というか、出来なきゃやられる!」
「で、でも……私の魔法なんかじゃ……」
俺は俯くスリィブの手を取り、本心で訴えた。
「お前の魔法は強い! あの
俺の言葉が届いたのか、震えていた彼女の眼に力が戻る。
「…………分かったわ!」
そうしてスリィブは勝利の大砲を放つべく、魔法の準備に取り掛かった。
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