第21話 目指すは最強!

 開けた人が望んだ物か。そんなものが本当にあるなら、スリィブがこうも本気になるのも無理はない。


 俺なら何を望むだろう。新弾のパック一カートン分とか?


 いや、そんな事はどうでもいい。


 何はともあれ、これでアイツらの言ってた「疫病神」についてと、ついでに彼女スリィブの目的が分かった。


 その本人は椅子から立ち上がり、短剣を片手に部屋の扉へと手を掛ける。


「ここまで連れて来てくれてありがとう。私、もう行くね」


「行くって、何処にだよ?」

 

迷宮ダンジョンに決まってるでしょ。このままだと他の誰かに先を越されちゃうわ」


「けど、お前一人じゃ生きて帰れないニャ」


 センリの鋭い一言に、スリィブは咄嗟に足を止める。


 無謀だという自覚はあるのか、悔しさで顔を歪ませている。


「けど、折角あそこまで進んだのに…………」


「そんなにその宝箱がほしいのか?」


 スリィブはこちらを見て頷く。


「――なら、使えるものは使えよ」


「え……?」


 きょとんとした表情でこちらを見つめるスリィブ。


 彼女の「宝箱が欲しい」という思いは確かに本物だと思う。


 だからこそ、その思いがあるなら目的達成の為にやれる事はいくらでもあるはずだ。


 後は彼女次第だが、まだ踏ん切りがついてないって感じだな。


「……さて、俺たちはこれからどうしようか。。センリはどうだ?」


「ご主人の好きにするニャ」


「プラテアは?」


「――私も、決めていませんね」


「そうか、うーん。これからどうしようか」


 てか、今さり気なくセンリが俺のことを「ご主人」って呼んでくれた。


 愛用している妖怪スペクターにそう呼ばれるのは流石に気分が高揚するな。


「――あのっ!」


 黙っていたスリィブが声を上げる。


 そして一呼吸置いた後、彼女は俺達三人に向けてその頭を下げた。


「お願いっ! 迷宮ダンジョン攻略、一緒に手伝って!」


「今の私じゃ、貴方達の望むものはおそらく何もあげられない……。けど、私に出来る事なら何でもする! ――だから!」


 ん? 今、何でもするって言った?


 唐突に心の底からやる気が出てきたぞ。


「ほら、何ぼさっとしてんだよ。時間ないんだろ?」


 扉前に突っ立っているスリィブの元まで歩き、彼女が握ったままの取っ手を上から握って扉を開く。


「早く迷宮ダンジョンに行くぞ。宝箱、取りに行こうぜ」


「…………うん!」


 そうして俺達はもう一度、あの迷宮ダンジョンへと向かう。


 ただ、今度は脱出が目的ではない。


 目指すは、完全攻略だ!


   * * * 


「優しいですね、ドロウさんは」


「ん?」


 迷宮ダンジョンへ向かうと決め、最低限の準備をすると言ってスリィブが下の宿主の元へ話をしに行っている間、プラテアが俺の元に歩み寄ってきた。


「先程の発言、思い留まっている彼女を後押しする為のものでしょう?」


「いや、そんな驕ったものじゃないよ」


「使えるものは何でも使って勝つ。俺ならそうするってだけ」


 そうだ。俺はこれまでこのやり方でデュエルDサモナーズSを勝ち続けてきた。


 そして今、俺は新たなる戦いの地でカードを手にしている。


 見知らぬ土地。これまでと勝手の異なる相手。そして現実となった決闘デュエル


 この世界で生きている以上、俺は常にデュエルDサモナーズSをしているということになる。


 今や俺は何時如何なる時でも決闘デュエルを行っているに等しい。


 言うなれば、このこそが俺の対戦相手なのだ。


 デュエルDサモナーズSをする以上、目指すのは勿論


 どんな相手が来ようと俺は俺のカードで打ち倒し、必ず最強になってやる!


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る