第11話 元いた遺跡へ
小石が一つ俺の顔面を打ちつけ、その痛みで俺の意識は明々とした。
身体に重みを感じる。どうやら元いた遺跡へと戻ってきたらしい。
頭上には崩落したであろう、風通しの良い天井が広がっていた。あそこから落ちてきたのだろうか。
幸い意識ははっきりとしているし、手足も多少痛めた程度で済んでいるのか動かしても問題なさそうだ。
それよりも――。
「…………むぅ」
俺の左手に伝わる人の熱。この感触はまだ記憶に新しい。
念の為近くに落ちていた松明を拾い、自身の手先を照らしてみると俺の勘は見事に的中していた。
「…………神様、だよな」
白金の如き輝きを放つ髪色に俺よりも一回り大きな背丈、そして白色を基調としつつ、数は少ないものの一つ一つの装飾が映える衣装を身に纏っている。
さっきまで夢(?)の中で会っていた相手だ。間違えるはずもない。
「おい、大丈夫か?」
軽く身体を揺すってみると、彼女の瞼がうっすらと開く。
「…………あれ、ドロウさん?」
意識を取り戻し、起き上がった神様は周囲を見渡すと血相を変えた。
「あれっ!? どうして私がこっちの世界に!?」
どうやら彼女にとって不測の事態が起きたらしい。慌ただしくする神様を見ている限り、恐らくこの場にいるつもりはなかったのだろう。
「どうしてって言われても……」
最初にこの世界へ来た時は一人だった訳だし、今回と前回で何か違う点があるとすれば…………。
「分かれる直前に手を握っていた……から?」
思い当たる節と言えば、これくらいしかない。
「もしかすると、転移させる瞬間に身体が接触していたから私まで転移対象になっちゃったのかも……」
神様もそれで合点がいったらしく、今度は落胆した様子で「どうしよう……」と力なく呟いていた。
何か問題があるのか聞くと、どうやら
神様なのだから神様にしか使えない様な異次元パワーとかでどうとでも出来るのではないかと思ったが、こちらの世界では神としての力は殆ど使えないそうだ。
「神様、今はここから出よう。悩むのはその後にした方がいい」
こんな所でいつまでも悩んだところで解決の糸口など見つかる訳がない。それに俺だって、いつまでもこんな落ち着かない場所にいたくない。
「そうですね……。まずは出口を目指しましょう」
「――話は済んだかニャ?」
姿が見えないと思っていた悪戯な仙狸が、いつの間にか俺のすぐ隣で座っていた。思えば、彼女も召喚したまま一緒に連れてきてしまったのか。
「神様、この召喚した
「はい。ドロウさんが念じれば元に戻るようになってます」
なら、今は一度戻した方がいいだろう。
――戻れ……戻れ……戻れ…………!!!
言われた通り脳内で戻る様に念じるが、悪戯な仙狸が元のカードに戻る気配はない。
「戻らないんだけど?」
「あ、あれぇ……?」
またしても不測の事態が発生したらしい。そろそろ脳内で整理するには限界が来るぞ。
「ほら二人とも! 早く行くニャ!」
そうして悪戯な仙狸は先んじて遺跡の中を歩いていく。
「一先ず彼女のことは後回しにするとして、先を急ごう。神様」
「そうですね……。あ、そうだ。ドロウさん、ちょっと」
俺を呼び留めた神様が耳打ちをしてくる。
「出来れば、こちらの世界では『神』と呼称するのを控えていただけませんか? 万が一、この世界の人々に聞かれると騒ぎになるかもしれないので……」
「分かった。じゃあ、何て呼べばいい?」
「――プラテア、そうお呼び下さい」
プラテア……プラテア…………。
「ドロウさん? どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもない」
何だろう、この奇妙な感覚……。
いや、考え過ぎか。色々あって頭が混乱しているだけだ。
「じゃあ、行くか。プラテア」
「はい、よろしくお願いします。ドロウさん」
そうして、俺は新たに神様と
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