第10話 召喚
「今のは……?」
「私なりにドロウさんの仰る
「ん? あぁ……」
メインデッキならいつでも持ち歩いている。言われた通り、腰のホルダーからカードを一枚取り出した。
手元に持ってきたカードは「悪戯な
余りに強過ぎるせいで公認大会ではデッキに一枚しか入れられないという制限まで掛けられている。コイツに何度命を救われたか分からない。
おまけに猫耳女の子でイラストまで可愛いとなるとその人気もすさまじく、高レアリティのカードは万を超える値段で取引されている。
「これでいいのか?」
「そのまま、そのカードを使用してみてください」
カードを使用?
試しに掲げてみると、空間全体を照らす程の光がカードから溢れ出てきた。
光が収まるのを見て目を開けると、手に持っていた「悪戯な仙狸」のカードが知らぬ間に無くなっていた。
そしてカードの代わりと言わんばかりに、猫耳を生やした美少女が俺の
「こ、これ……!?」
本当に存在しているか確認するべく手を伸ばすと、猫耳美少女は爪を立てて俺の手を払いのけた。
猫に引っ掻かれた様な鋭い痛み。微かに香る花の匂い。
コスプレかと一瞬疑ったが、衣装や体格、そしてチャームポイントである猫耳と二つに分かれた尻尾まで付いている。まるでカードの中からそのまま飛び出してきたみたいだ。
コスプレではここまで完璧に再現することは不可能だろう。
つまり俺は「悪戯な仙狸」を
「――す、すげぇ!」
まさか小さい頃に憧れた光景がこうして実現するとは夢にも思わなかった。
「前の世界に戻すことは出来ませんが、この力でどうか新しい世界を生きていってください」
そう告げた神様は片手をこちらに向け、以前と同じ無数の光で俺の身体を包み込んでいく。
「けど、どうしてここまでしてくれるんだ?」
俺の質問に対し、神様は不思議そうにして首を傾げる。
「普通、一人の人間に神様がここまで親切にしてくれるものなのかなって思ってさ」
「それは……そうですね。普段はこういったことはあまりしません。ですが――」
神様は一度目を伏せると、改めて俺の方を向いた。
「ドロウさんには、生きていてほしいです」
――ッ!!
急に向けられた神様の優しい笑顔に思わずドキッとしてしまう。
「あ、ありがと――」
別れの言葉を残そうとしたその時、フサフサした何かが俺の腕に巻き付いた。
元を辿ると、そこには悪戯な仙狸が目を細く尖らせてこちらを睨んでいた。
もしかして、召喚するだけしておいてほったらかしにしてしまったから怒っているのだろうか。
「――じれったい……じれったいニャ!」
――しゃっ、喋ったぁぁぁぁぁ!!!
「惚れたなら男らしいトコ見せるニャ! お前も意味ありげな顔してないで、言いたいことあるならはっきり言うニャ!」
「えっ! ええっ!? ちょっ!」
神様までも腕に尻尾を巻きつけられ、二人揃ってそのまま彼女によって引っ張られる。
間一髪のところ、もう片方の手で神様の手を掴んだことで衝突は免れた。
だがそれと同時に、俺をこの空間から旅立たせようとする光が集まりきったのか、俺の視界は一気に激しい光に覆われた。
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