第53話 第5章 その4

その状況下で言葉を迷っている人が1人。

 ミシェアだ。

(キャプテン、口ではああ言っているけど、あの事は言わないんだね……たしかにアリアちゃんは私たちに似ている。多少は肩を持ちたくなるのはわかるよ……

 でも、言わないって事は完全には信用していない……状況から察するに彼らはアリアという少女を生きて連れ帰らねばならない……

 だから、彼女を私たちの陣営に取り込みながら人質にした。本当に怖い人……。

 キャプテンはいつでもバックアップを考えながら行動している。それが必ず部隊を生き残らせてきたリーダーとしての才。

 まあ、マナマテリアルによる超常的人工科学現象発生操作なんて想像付かなかったみたいだけど……

 現に敵の戦力は予測がついていない。

 だから、この遠征を捨てて緊急信号を放った。すべての仮説を捨ててでも……


 この遠征自体、ドクター暗殺計画が部隊の誰かが裏切ったから起こされたもしれないという仮説から生まれている……

 そうでないと厳重に管理されている基地に爆撃なんて起こりえない。

 だから、キャプテンはあの時、私にウィンクとグッジョブサインで脱出を合図した……

 ごく自然に部隊からドクターを引き離し、かくまう計画。

 みんなドクターの性格は知っているからね。あんなに優しいバカはいないもの、死ぬかもしれないっていうのに苦しんでいる人がいたら、真っ先に駆け寄って……

 だから、この娘をダシにして武器を用意し脱出した。

 信用できる裏切りの可能性が低い新人、そして、その気になれば部隊を全滅させることが出来る私……

 だけど、この突如として出会った謎の存在たちに計画が全部ご破算になってしまったんだけど……

 ほんと性格悪いなぁ……キャプテンは……まあ、私も肝心な事を彼に伝えていないし……

 アリアちゃんがそうなるっていう確証はないしね……)

 「ところでキャプテン……」

「なんだミシェア?」

 「その背中のライオットシールド何?それにそのマスク……めっちゃダサいんだけど……」

 キャプテンの背中にはカラフルな色合いにハデなデザインの盾を背負っていた。

 そして青いフルフェイスのマスクを着けて、国旗を模した腹巻を着てライフルを構える。

 「ダサい?最新コミックみたことねえのか?最新ヒーローは盾持ってるやつがトレンドなんだぞ!遅れてるなあミシェアは。

このかっちょいいコスチュームでドクターを助け出したら。最高にカッコイイだろ。こんなこともあろうかと前々から最新最強装備として開発してたんだ。いいだろ」

 (キャプテン……だっさ……)

キャプテンの恰好を見たミシェアは白目を向いて悶絶していた。

「マスクつけてたら味方ってドクターが気づかないじゃない……」

「あ……」

 キャプテンはしぶしぶながらマスクを脱ぎ、ポケットにしまった。

 「くそくそくそ!」

  キャプテンは我慢できずに声をだす。


「あと……ルイス君そのガトリングガン、弾残ってる?」

「え?」

 カチっ!カチっ!

「……それ、コスパ悪すぎてマジ使えなかったんだよねー」

「でも、こんなの使えるってなったらちょっと試運転で人に撃ってみたいじゃないですか……ごめんなさい……」


(みーたんが行くまで死なないでよ……ドクター……)

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