第58話 第6章 その1 第三者視点
「いけーーー!早く接近戦に持ち込め!」
「いや……行けといわれても……」
「爆裂魔法相手に距離はとるな!スキを与えたら……」
ドオオオオオオオンンンっ!!
ふとした隙、その瞬間をキャプテンボマーことクリス・ブッチャーは見逃さない。
短く改造されたスピンコック式のライフルを片手で撃ち、
正確に射撃する。そして爆破薬液は周囲の兵士を肉を焼く。
計算された爆風を操り、確実に広範囲を爆撃していた。
しかし、その行為に弱点はある。それは味方をも焼くという事だ。
だからキャプテンはその強すぎる能力ゆえに銃というクッションを使い戦う。
それゆえ、集団戦では中遠距離戦をせざるを得ない。
だが、時を急ぐあまり、キャプテンはライオットシールドを片手に攻め込んでいく。
「おらああああ!!」
そして、その盾で兵士を殴りつけ敵の鎧をへこませ、敵を絶命させる。
ただ、その戦い方は彼が読んだコミックの登場人物がそういう戦い方をしており、それをモロパクリしているのは誰も知らない。
「くそおおおおおお!!」「ぐぎゃぎゃ!」
キャプテンボマーの死角、それを狙い、兵士の一人がゴブリンと共に攻める。
物量で攻め、リロードの隙を与えない。
異世界の兵士たちに銃やキャプテンの能力を正確には分からない。
しかし、彼らは魔法という概念から彼が爆発系魔法使いと推測し、詠唱の隙、もしくは魔力切れのタイミングを付こうと攻め込む。
そして、理由は違えど目的はキャプテンの弱みであった。
銃弾の制限。そしてリロード時の隙だ。
だが、自身の弱点を一番よく知っているのはキャプテンである。
「うりゃああああああ!!」
それをカバーするのがルイス。
その巨体が持つパワーからチタン合金製のハルバードを振り回す。
そのひと振りは雑草を刈り取る鎌のようにゴブリンたちの頭を刈り取った。
その勢いは攻め込む兵士たちを躊躇させる。
しかし、その範囲は一部に留まる。
そのひと振りは味方を気にしての攻撃だからだ。
そして、それをカバーするのはミシェア。
「パンパンパンパーン♡くらえー♡『パンデミックポップ!』♡」
ミシェアはその可愛らしい指でハートマークを作ると兵士たちをなぞるように動かしていく。
すると「ごふっ!」「おぼぼぼぼ!」「オロオロロロ!」と声を荒げながら血を吹き出しながら倒れていく。
ミシェアは殺害出来る領域に踏み込んだ敵を指で狙いをつけ、味方を巻き込まないよう配慮しながら病死させていく。
「なにが!何がおきてるんだ!みんなが!みんなが血を吹き出して死んでる!」
「パーン♡」
ミシェアがそういった瞬間、指をさされた兵士の口から血が吹き飛び、倒れ込んだ。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」「うわあああああ!」「ああああああ」
訳もわからず、人が死に、無残な姿になる光景を見て、一部の兵士に逃げ出すものが現れ始める。
この現象はミシェアの技だ。
ミシェアの能力。『エックス・シング』は目に見えないほど小さな自身の細胞を動かし、自由に操る力。
意思を持つウィルスとも呼べるソレはミシェアの見ている範囲の生物に感染させ、ミシェアが望む現象を起こす。
ミシェアウィルスが兵士たちまで漂い。ふれた細胞を破壊し、血を吹き出させ、脳を破壊する。
単純な命令であれば遠距離からでも殺す事が出来る。
対人戦として見えない力はあまりにも強力。
そしてソレは生物であれば防ぐ術がない。
生命体としてではなく、免疫力としての土壌で戦う事を想定した戦士などいない。
それゆえ、ミシェア・フローレンスは部隊の中での上位能力者と知られていた。
「ざーこ♡ざーこ♡よわよわすぎて笑っちゃうんですけどー」
そのニタニタ顔を見た兵士たちは次々と倒れていく。
不可視の攻撃により、近づくことが躊躇われる。しかし、距離を取るとキャプテンの爆破に巻き込まれ、
近づくものはミシェアによって病死させられ、勇気あるものはルイスのハルバードによってミンチにさせられていた。
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