第51話 第5章 その2

ケーニヒは息を絶え絶えにさせながら城門にたどり着く。

 「はぁ!はあ!お前ら!早くはやく剣をよこせ!やつらがくる!やつがくる!はやく!時間が無い!」

 尋常ではないほどの怒号。

 兵士たちは上官に目配せし、支持を仰ぐ。

 「ケーニヒ様ですよね。大丈夫です。われらが対処しますので落ち着いてください。ここの戦力はご存じでしょう。どうぞ。水です。なにがあったか教えてくれますか?」


「そんな時間はない!剣!剣だ!おまえ!それをよこせ!」

 ケーニヒは心配してかけよった兵士の腰に付けた剣を奪いとる。

「な、なにを!」

 「はあはあ!あああああああああああ!!」

 そして、その剣を自身の腹に刺した。

 「ケ、ケーニヒ様!!」

「錯乱魔法だ!みんな止めるぞ!ヒーラーをよべ!」

 何人もの兵士がケーニヒを止めるために近づく。

 「やめろ!俺は正常だ!」

 ザクザクザク!ブシュ!剣を何度も腹に刺し、血まみれになっていく姿に彼らにはそう見えなかった。

「ああああ!クソ!クソくそおおおおおおお!!」

 兵士は腕をつかみ、これ以上傷つけさせないように剣を奪う。

 それでもケーニヒは自傷をやめない。

 空いた腹に自身の手を突っ込んだ。

 「どこだ!どこだどこだああああああああ!!」

「ケーニヒ様おやめください!っぷ、おええええええ」

 戦闘経験の浅い兵士がその臓物をみて嗚咽を漏らす。

 自身の腹を裂き、中を弄る

 暴れるケーニヒをなんとかして羽交い絞めにし、一人が腹の傷を押さえる。 

 「やめろおおおおお!やめてくれえええええ!!」

 なんとかとらえたことで兵士たちに安堵する。

 しかし、ケーニヒの声は鳴りやまない。 

 「やめろおおおおおお!俺の腹の中に爆弾があるんだ!もう時間がな……」

 

 ドオオオオオオオオオオオオンンン!!!

 突如の轟音、その火炎は燃え盛り、兵士たちは焼かれ、吹き飛び、ケーニヒの頭、腕、腹、足は遠くへと飛び散っていく、そして、爆発が骨をも溶かし、

 城門も破壊した。

 血と肉を焼き、死の匂いが一面に漂う。


 「て、敵襲!城門が破られている!」

 轟音を聞きつけた兵士が鐘をならし、臨戦態勢を整える。その鐘の音は城門が破られた合図だった。

 各地から盾を持った兵士が集まり、城門を塞ぐ。

 「先輩!何があったんです?ここにいた仲間は?なんですか?この焦げ跡は?」

 「わからねえ!でも安心しろ!この盾は魔法がかかっていて強固だ!トロールの一撃だって耐えれる。訓練通り敵か来たら外に押し込め、その後は修理班が城門を防ぎ、

あとは籠城戦だ!籠城戦に持ち込めば」外はモンスターに任せればいい!ここが踏ん張り………」

 キュウイイイイイイインンンダダダダダダンン!!

 銃声が鳴り響き、盾を削る。

 大きさ10cmの巨大弾丸が何十発も撃ち込まれ、盾を打ち抜き、頭の吹き飛ばし、足を吹き飛ばし、悲鳴を上げるまもなく、ミンチになった。

 「せ、先輩……う、うわあああああああ!」

 ミンチになった仲間を見て新兵はぎゅっと盾を構え、縮こまる。

(な、なにが起きているんだ。盾の魔法が切れてた?ほかのみんなは?そうだ……きっと盾を離してしまったんだ。こんなに強固な盾が簡単に壊れるはずは……)

 コンコロコロ……

 新兵は下を見る。それは丸い何か、まるで子供のおもちゃのような物が転がってきた。

「なんだこれ……?」

 ドゴオオオオオンン!

 その爆発は目を焼き、喉を焼き、盾は吹き飛んでいった。

 

(あれ?盾が遠くにある……しっかり握ってあったはずなのに……あっ、俺の身体……それに盾……腕がついたままだ……お、俺……どうなって……)

 そして兵士の命たちは消えていった。

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