第48話 第4章 その8
「ドランゴ……」
ベルナーが呟くとドラゴンは尻尾を振り、俺の前の机を吹き飛ばした。
そしてベルナーは座った状態にも関わらず、宙に浮いて食後の酒を嗜んでいた。
だが、目には怒りの炎が燃えている。爆発寸前の火薬庫のようだ。
そして、やつ合図をするかのように指を鳴らすように構えた。
これが最後の忠告だ。それでも俺は……
「俺を殺しても無駄だ。アリアは俺の仲間たちと一緒にいるだから諦めろ……」
ヤツを否定する!
「答えになってないぞ……」
あきらかな怒りが伝わる。
ピリピリとした威圧感をしっかりと感じた。
「俺の仲間たちは強い。そんな仲間が3人も一緒にいる。
彼らも彼女を気に入ったんだ。俺を殺しても仲間たちが必ず守る。だからそんな趣味の悪い夢は忘れて現実を見ろ」
この言葉に1人は目を丸くし、言葉を無くす。
少しの沈黙を破ったのはベルナーだった。
「あっはっは!いい!許す。これはなんて道化だ!こんなに笑わせてくれるなんて久しぶりだ!3人って!あっはっは!」
ベルナーは腹を抱えて言葉を途切れさせながら言う。
「基地には100人以上いる!俺を殺したらみんなお前らを殺しにいくぞ」
「100人って私の軍の半分どころか10分の1もいかないじゃないか!たしかに私兵を100人持つとは中々の地位のようだが、傑作すぎる。ドランゴ。踊り食いは好きかい?
ん?踊り食いは汚れるからダメと言っていたではないかって?今回は許可しよう。たっぷり汚しながら食べていい……」
そうベルナーは言って、ドラゴンは大きく口を開け、ゆっくりと近づいてきた。
「たしかに俺には大した力はない。頭に蛍光灯がぶつかれは気絶するし、ちょっと走れば筋肉痛。新車は即廃車で運もない……だが……」
そうして俺は腰につけていたホルスターの留め具を外し、キャプテンボマーから預かっていたライフルを構える。
俺は初めから腰にホルスターを付けていた。それを彼らは初めから気づいていたはず。
ここは異世界、銃ににた武器があるのか、銃を初めて見た人間がどう思うのか。そんなものは俺にはわからない。
だが人は武器に警戒する。それはどんな人物でもそうだ。自身に危害が及ぶものに無関心でいるのはマヌケだけだ。
いきなり町で刃物が出てきたら誰だって逃げる。どんなに強い人だってナイフには勝てない。
だが弱すぎるものには警戒はしない、ミミズがいくらくねろうが、ナメクジがいくら動こうが、それは娯楽だ。
このベルナーもドラゴンも蛇のメイドも、このライフルを見ても彼らの目線は一切ホルスターに向けられた事はなかった。
普通であればいつ引き抜かれるか分からない武器に意識が向く。
だが、やつらの目にはこのライフルに向けられる事はなかった。
目の前に突如として現れた敵。その人物を推し量るには観察するほかないにも関わらず!
現に、どれだけ俺が煽ろうともヤツはすぐさま行動に移さなかった。
奴も俺と同様に俺を観察していたのだろう。雑魚と分かっていれば、拷問でもして吐かせればいい。
まあ、煽りすぎて、やつは俺を殺すことに決めたようだが……
ふたつから推測できるのは彼らはこのライフルを武器と思っていないか、もしくは武器としては弱すぎて脅威と思っていないかのどちらか。
前者であれば問題ない。後者であればこれは賭けだ。
だが、賭けるとしても勝算は充分にある。
銃が効かない相手に銃を構えても無駄……
でも、これは普通のライフルではない。
一撃で獅子を殺す。死の一撃だ。キャプテンの能力が込められた銃弾。この爆発の温度は2000度にも上がる。マグマより温度の高い爆発に生物が耐えられるはずはない。
そして、その死の一撃を与えるのは生物の弱点。脳!どれだけ強靭な生物でも頭が無くなれば致命的な一撃になる。
俺はドラゴンの喉奥に狙いを付けて引き金を引く。
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