第47話 第4章 その7
「3点……」
「ん?」
「3点だ。素人目に見て、その計画は3点。10点満点じゃなくて100点満点でだ」
「なに?」
「いったい何年スパンで計画している。実験ならともかく実働としてたった2人の個体から種を維持するとして何年かける気だ?
それに種を維持するなら1000人はいる。考古学的にみて、そこから地に満ちるまで100万年はかかるぞ。
生物学を学ぶのもいいが、歴史も学べ。それにたった一人の個体ですら奇跡なのだろう。オスはどこから調達するんだ?」
俺の意見にベルナーは目に怒りをの炎を燃やしながら意見を聞いていた。
反論を言われたことが無かったのだろう。しかし、すぐさま冷静になる。
「オスは目の前にいるだろう」
ベルナーはドラゴンに目をやって、そう言った。
「それに100万年かかると言ったが、それは自然に任せた場合だ。生殖をコントロールし、繁殖を人為的に操作すれば時間の問題は解決する。だが中々に貴重な意見だった」
いや……ダメな奴や……人をモノとしか思ってないやつや……こわ……感性が違う……
こいつ人間を品種改良して、養殖しようとしてる。
イカレてやがる……でも、あの娘。こんなバケモノたちから逃げて来てたんだよなあ……話を聞く限り……
せっかく命を繋いだっていうのに、それなのに俺みたいなやつを庇って……
好きな人にも裏切られて、仲間と思っていた人にも裏切られて、親にも裏切られて……最後は命がけで助けた俺か?これも運命みたいなもんだな……
だが……
俺は……
「なぜ、そこまで人間を嫌う」
俺はそのまま疑問に思った事をベルナーに伝える。
「私は長く生きて分かったことがある。ヒューマンという種族は不完全で弱く、家畜として劣等的だ。数だけ増えるのは早いのに知能は低い。
同族が傷つけられれば圧倒的な力の差があるにも関わらず歯向かってくる。昔は毎日毎日、私の家畜たちを自由にしようと数多くの野生種がやってきたものだ。
まあ、最近はこの国に取り入って情報を操作する事で平穏な日常を得られたのだが……誰かに仕えるというのは嘘とはいえ、私のプライドが傷つく」
ベルナーはにやりと笑って演説するように続ける。
「この世界のヒューマンという種族をドラゴニュートに変える。アリアという少女のドラゴンの血は濃い。彼女が産む次の子供のドラゴンの血がもう少し濃ければ、
次の子孫も次の次の子孫もドラゴニュートになると推測できる。ドラゴンの血は優勢遺伝子。長年受け継がれる優れた血だ!
5代目に再びドラゴンの血を加えればリスクを回避しつつ種族を置き換えることが出来る。これこそ進化!ヒューマンという劣等種をドラゴニュートという次の世代へと変化する鍵!
そのため、この国の王に契約を持ちかけた。彼女を差し出せばドラゴンを使って国土を広げられるとな。本質を隠した体のいい間引きだがな。だから、そろそろアリアという少女を引き渡してくれないか?」
こいつ……
いや、心を落ち着けろ。感情に任せず、冷静に伝えるんだ。
そしてやつらの目を見ろ!俺!
「0点。そんな0点の計画の為に俺が手を貸すと思ったか?」
「ん?なんだね。さっきからその態度は?どこのどいつか知らんが、私、ベルナー・オーバーランドの事を知らぬわけではないだろう?」
「いや、実はほとんど知らないんだわ。お前の事。それにアリアちゃんとの関係も、彼女とあったのもつい先日だ」
ピキリと怒りの感情をベルナーの目に宿ったのがわかった。
しかし、やつもどこか心の中で冷静な部分がある。ここで俺を殺してはアリアちゃんの情報が少なからず遠のくからだ。
「なら、渡してもいいだろう。金は弾む。いや、女でもいいぞ」
「いいや、そんな物はいらない。俺は彼女に命を助けて貰ったんだ。だから不義理にはできん」
その言葉に更にベルナーの顔に更にピキリと怒りと苛立ちの感情が燃え上がった。
その炎を燃やす為に言葉を続けろ。俺!
このイカレたサイコなクズ野郎の夢を否定し、ぶっとばすために!
「ベルナー。オッサンからのアドバイスだ。生きとし生ける者、全て、価値というものは頭の良さでも力の強さでもでもない。
性別も年齢も肌の色も全てに価値はない。心こそが何よりも価値がある。誠実、勇気、愛。それらが強ければ強いほど価値がある。それは一言でいうなら『魂の輝き』だ。
自身の犠牲を顧みず、飛び出した彼女に『魂の輝き』を見た。そんな彼女に俺は敬意を持っている。
そして、その心を蔑ろにする貴様に価値はない。価値無き者がどれだけ夢を持とうと、それに価値はない。
価値無き物に手を貸すほど俺は暇じゃないんだ。だから夢を忘れて現実を見ろ」
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