第46話 第4章 その6
「あいつは何の肉を食べているので?」
「カチクの肉だよ。この国の特産品と言っていい。彼はこの肉が大好きなんだ。君も食べたいかい?美味しいそうだよ」
「あなたは食べたことがない……」
その瞬間、ドラゴンの尻尾が叩きつけられる。
うひゃあああああああ!
床が揺れ、机の上のグラスがこぼれた。
心の中で叫ぶも声に出せず、足がガタガタ震えてしまう。
「はは、大丈夫。君の分を奪うつもりはないさ。ドランゴ。さっき一匹追加があったんだ。少しぐらい分けてもいいじゃないか」
はは……こわ……
「ところで、このカチクの肉。俺の良く知っている肉の匂いと一緒なんですが……」
「ん?」
「これ……人間だよな……」
何度も嗅いだことのある絶望の香り。あの独特な空気はいつだってこびりついている。町が戦火に落ちる度にこの香りがずっと鼻腔をくすぐっていた。
いつだって忘れたことは無い。死の香りだ。
その香りがこれからしてきた。
そういった瞬間、ベルナーの顔は笑顔で歪む。
「なんだ。よくわかったね。ここまでのサプライズを用意していたのに。驚いてくれないのか?前にやったときは面白かったのに……」
「お前、人間だろ。人間がバケモノに餌をやるのかよ」
俺は震える声でベルナーに尋ねる。
「何をいうか、同じヒューマンでも私と彼らには天と地ほどの差がある。その差は埋められるはずがないだろう。たしかに多少は同情はするが、
多を生かす為に家畜を犠牲にするのは効率の良い社会のためには必要だ。彼らの魔力はドラゴンの魔力を維持するのにヒューマンは最適なのだ」
「あー、素人にもわかるように教えてくれ……」
「魔物は魔力を食って、その力を維持し、増やし、強くなる。そのため能力と魔力が比例していないヒューマンは彼らにとって簡単に捉えられるのに栄養価が高い最高のエサになるんだ」
「へえ、俺らはその魔物以下……エサでしかないってか。本気でそう思っているのかよ」
「ああ、ヒューマンは私みたいなイレギュラーを覗いて大多数が劣っている。不完全な存在だ。そのため私が支配し、間引き、管理している……
しかし!その日々もようやく改善される!種としての進化!より強靭で魔力が高い存在!次世代の新たな家畜がもうじき作れる!そのためにアリアが必要になるんだ」
「言っている意味がわからん……」
俺はベルナーという人物に尋ねる。
するとヤツはにやりと笑った。
「君は生き物には特性というものがあるのを知っているかね?身体が大きい特性を持つ血。髪が黒色になる血。魔力が高くなる血。そんな具合として種としてではなく個体の中にも特性はある。
その特性を持つ者同士が番えば次に生まれる個体も両者の特性を持つことがある……また、異なる特性を持つ者同士が番えば両方の特性を持つ個体が産まれる……」
「遺伝子か……」
その言葉をいうとベルナーは驚きと感激の感情を目の中に移した。
「知っているのかね!?それは古い魔族の神の言葉だが……そうだ。遺伝子だ。それによりドラゴンとヒューマンの異なる遺伝子を継ぎ、
両者の能力を持つドラゴニュートという優れた種族が産まれる!その種は圧倒的な魔力にその魔力を使用できない最高峰の家畜だ!はじめてドラゴニュートに会った時、歓喜したよ!
これこそが世界に!私の愛する魔物たちに必要な種だと!」
「交雑による品種改良か……。だが交雑なんて生殖能力は持たないし、大抵は先天的な疾患があるぞ」
その言葉にベルナーのモノローグを加速させた。
「そうだ!王家の中でも先祖返りでドラゴニュートが産まれた時も10つとして生きる事ができなかった。しかし、アリアは違う!奇跡的に丈夫に健康的に16まで生きてこれた。
生殖能力も問題はない!一つの完成された種として彼女はこの世に生まれたのだ!彼女からドラゴニュートという種は繁栄する!
劣ったヒューマンを駆逐し、次世代種が私の家畜になるのだ!」
……やっぱりアリアちゃんは普通の人間じゃなかったか、ドラゴニュートって言葉はよくわからんが、ホモサピエンスじゃないって事か。
あんな肌をしていたしなあ……角もあったし。
はあ……異世界ってすげえや……
でも、こいつは……
俺は目の前で悠々と語るベルナーに言葉をかける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます