第39話 第3章 その15
「いつつ、足が……って、なんじゃこりゃああああ!」
身体が宙に浮いたと思った瞬間、目の前には全長7メートルはあろうかという大きな羽の生えたトカゲがとぐろを巻くように寝息をたてている。
その中心には一人の男が足を組んで椅子に座っている。歳は20代前半だろうが、その威圧感は軍部の上昇部を超えていた。
周囲はやや暗く、豪華絢爛なシャンデリアに毛並みのいい絨毯。あまり高いものには縁がなかったがすべての者に金がかかっているとわかる物ばかりだ。
そして横にはマレクと呼ばれた男がプルプルと縮こまって仰向けで這いずりながら俺から逃げている。
どうやら彼は腰が抜けたようだ。
そして俺も筋肉痛で倒れ込んでいる。男二人が寝転がっているのを椅子に座った男は愉快そうな目で見ていた。
「ははっ、ドラゴンをみるのは初めてか?ところで君は何者だい?」
「異世界人かな……」
「あっはっはっは。いいねえ。面白い。 おっと失礼。私の名前はベルナー・オーバーランド。モンスターテイマー兼この町の領主をしている。そしてここは我が城。ヘブンズ城だ。」
「俺はヴィクターだ。失礼を承知でいうが、今、俺は足がつってまともに立てない、小鹿のようにプルプルしているが許してくれ」
俺は足をプルプルさせながら立つ。よし、これでいざというときは走れる……いや走れるかな……
「あははっ、いいよいいよ。許す!ドラゴンを目の前にして震えるのをそのように例えるなんて実に面白いよ!ところでマレク、アリアはどうしました?」
「ベルナー様、誠に申し訳ございません。アリアはこいつとこいつの仲間たちに邪魔され連れ帰る事が……ひいいいいいいい!」
目を覚ましたドラゴンの瞳をみてしまったマレクは大きな声で叫んでしまった。
「うわああああああ!」
俺もつられて声に出る。
「ギャオオオオオンンン」
ドラゴンは起き上がり小さく唸る。
「ん?ああ、いくらでも用意しよう。それより、すまない。ドランゴ。私の部下がなかなかアリア殿を連れてこれず、誠に申し訳ない」
ベルナーはドラゴンの鳴き声に対してまるで言葉を交わすように話した。
こいつサイコか?
いや、あんなトカゲ……いや、ドラゴンと呼ばれる巨大バケモノを飼いならしているとは思えん、こいつ、この怪物と話せるのか?
というか、やはり、ここは俺の知っている世界じゃない。こんな生き物がいたら人間種は文明を築けるとは思えん……。やはりここは異世界だ……
「ところでマレク、あんまり私の友人に対して、そんな風に叫ばないでくれ」
ベルナーは指を鳴らすと下半身が蛇で上半分はメイド服の女性がするりとやってきてマレクをお姫様だっこして奥へと連れ去っていった。
その時「やだ!やだああああああああああ!」と叫んでいたが何をされるんだろうか……
「ところで君は……」
ベルナーは俺に目を向ける。
「お、俺は転移に巻き込まれただけの一般村人なんだ!このまま帰るから!いや、領主様にご迷惑かけてしまうので、それじゃ……」
一人と一匹に背を向けて逃げ去ろうとすると
「ぐぎゃ!ぐぎゃ!」
と鳴き声を上げる何匹もの2足歩行のトカゲがこちらをにらんでいた。
「うひゃあああっ!」
俺はビビってその場から後ろに後ずさる。
「こやつらはドラゴンの血を分けた眷属ドラゴネットと呼ばれるモンスターだ。産まれたばかりで食欲旺盛よ。今は命令を聞いているが、母親ですら食う悪食。あまり近づかないほうが良い」
ベルナーは穏やか声で俺に伝えてきた。
え、なにそれ……
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