第38話 第3章 その15

「ひぃいいいいいい!!シャドウデーモン!シャドウデーモンがあああ」

 ケーニヒは目の前で起きたことが信じられないのか叫んでいる。

  俺も叫びたいが人を爆破して楽しむ死神、人を丸かじりして食うバケモノ、そしてメスガキ。そんな仲間たちに対して向こう側のボスだろう人物が怯えている。

 

  いたるところに散らばる肉片、血しぶき、そして死体たちに祈りながら早くこの状況が終わることを待つ。

 だから、彼らだけで送りだすのが不安だったんだ。

 アリアの顔を見ると青い顔をして怯えている。

 それとは対照的に仲間たちはニッコニコ。戦闘狂に悪食の捕食者にサディストなメスガキと圧倒的にヴィランだ。

 「やばい!やばいぞ!アレク!転移石をだせ!城へ帰還する!こんなバケモノ。ベルナーにしか相手にできん!おい!アリア!こっちにこい!」

 「いや!痛い!」

 ケーニヒはアリアの腕をひっぱり白く輝く石を懐から取り出す。

 転移?いや、そんな事……いや、違う。もう自分の憶測を確信しないほど俺は頭は固くない。

 今、起きている不思議な現象、見たことのない生物。そしてミシェアがいっていたマナマテリアル。

 前に論文で読んだことがある。

 この世界には観測不可能なエネルギー物質、マナマテリアルという物があり、そのエネルギーはありとあらゆる存在に変換でき、それを利用できれば時間移動に空間拡張。

 ありとあらゆる現象を起こすことができると推論されていた。

 そして、その現象を引き起こす反応こそが『魔法』と書かれていたのを覚えている。

 研究者たちにはそんな絵本みたいな話があるわけないと笑われていたが、俺は面白いと思ってミシェアに話したのを覚えていた。

  目の前にいるやつらの使う技術。それはきっと魔法だ。そして転移というワード……

 なんとかして妨害しないと!彼女はどこかに連れ去られてしまう!しかし、こんな事みんなに説明する暇はない!

 俺がいかないと!

 「うおおおおおおお!」俺は真っ直ぐ走る。

 怯えまわる兵士を躱し、爆風をかわし、捕食者の手を躱し、ライフル弾を躱し、真っ直ぐ彼女の元へ走った。

「「「「ドクター!」」」」

 仲間たちの声が聞こえる。

 「ひぃぃ!はやく!転移石よ早く!」

 怯えたケーニヒはアリアの掴んだ手を放し、マレクは石を守るようにうずくまる。

 よし!間に合った!って「あっ!」

 普段、そこまで運動しないからか、急速に太ももに負荷がかかる。

 筋肉が悲鳴を上げたのだ。

 「ふおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 世界がスローモーションのように動いているよう錯覚する。こんな命が吹き飛ぶ戦場のど真ん中で足つるとか……

 こんな事になるなら運動しとけばよかった……

 ダサすぎる……

 ってかこんなマヌケな叫び声……

 恥ずかしい……  


 そして俺はそのまま前に転げ倒れ、「きゃあ!」

 アリアを吹き飛ばした。そしてケーニヒにぶつかりマレクから2人は離れてしまった。

 

 その瞬間、身体が浮くような感覚に陥る。

 「へっ……」

 「よし、転移が成功した!ってひぃいい!なんでお前も一緒に転移している!」

 うわああああああああ!世界がまわるうううう!気持ち悪いいいいいい!

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