第37話 第3章 その14
「わぁ♡こんなにピクピクしてきっしょ……」
ミシェアはしゃがみ込んで、ビクビクと動く悪魔を観察する。
悪魔はどうにかこうにか逃げようと身体を動かしているが数ミリ程度しか動いていない。
「えいえい!」
ミシェアは指を尖らせ、悪魔をつつく。
「ぐおっ、なんだ?何が起きている?全身に激痛がっ!」
シャドウデーモンと呼ばれた怪物が痛みにより、悶える。
これからおぞましい事が起きる。それが悪魔相手であったとしても、もうこんな事はできれば見たくない。
「な、なんだこれは身体が崩れる!!痛い!いたいいたいイタイイタイイタイ!あぎゃあああああ!?」
微生物の特性は捕食による分解する。ウィルスは他者の細胞を攻撃し、その結果として自身のコピーを作る。
その両者の特性を持つ彼女は一度でも彼女の細胞、ミシェアウィルスとも呼べる彼女の分身に感染したら殲滅されるまで攻撃し続けるのだ。
普通の生き物は白血球などがウィルスに抵抗をするが、人と同じレベルの意思と知能を持つウィルスがいたとしたら、生きとし生けるものにソレを倒すことができるだろうか。
恐ろしい化け物は身体をベキベキと崩しながら、まるで溶けていくように作り変えられていく。それはまるで生きたまま蟲のサナギになるような様子だ。
彼はほんの少し、ミシェアを取り込んだことで感染してしまったのだ。
そして、つついた際、新たにウィルスに命令を打ち込んだ。
これがミシェアの弱点の一つ、接触しなければ細かな命令をウィルスに伝える事ができない。
だが、単純な命令は念じるだけで反応する。
そう、それこそ少し彼女が『死ね』そう念じるだけで感染者は死んでしまう。恐怖の能力だ。
そして彼女は呼吸により、そのミシェアウィルスとも呼べる自身の分隊を常に周囲にまき散らしている。
彼女の射程距離内に入り込んだら最後、逃れる方法はない。
「ぎゃあああああああああ!!」
悪魔が叫ぶほどの激痛を伴いながら、暴れまわる。
「なあ、ミシェア……いったい何をしたんだ?」
「体中の骨と筋肉を分解してみたの!生きたまま持って帰りたいしねー」
ミシェアは笑って答える。
「いやだあああああ!!自分が自分でなくなる!止めてくれえええ!」
悪魔と呼ばれた存在は叫ぶ。
「ミシェア……今あいつに何をしたんだ……」
「みーたんは何もしてないよ。生きたまま骨が溶けたことでカルシウムが血中に溶け出して、高カルシウム血症になったことで錯乱しているんだよ。
こういうところは人間とかわらないんだー」
悪魔の筋肉質な体が溶けていくのを止めようと手で押さえるがグジュグジュと零れ落ち、無様に転げまわってる。
ベキィ!
骨が折れるような耳に入る。その音が鳴った瞬間。その場にいた全員が手を止め、恐怖で絶望していく。
ベギィメキメキベキミシィイイ!
「アガギャアアアアアアアアアアアアアア!!!」
悪魔の身体は尋常ではない声で叫ぶ。理由は明白、全身の骨を折られているからだ。
「もう重力に耐えれないぐらい骨が弱くなったんだ。ざっこ~♡」
そうして悪魔と呼ばれたものはまるで芋虫のように這いつくばって逃げる地をは這う虫のようになってしまっていた。
「あんよが上手!あんよが上手!がんばれがんばれー♡」
ミシェアは小さな子供をあやすように可愛らしい声で笑う。
その青い宝石のような目はパッチリと開かれ、悪魔は死から逃れられないようになっていた。
そんななか「いやだ!いやだ!死にたくねえ!」と言って走ってきた兵士が芋虫の頭を踏みつぶしてしまった。
その兵士はすべり転んで近場の岩に頭をぶつけ、動かなくなった。
「きゃははっ!あーあ死んじゃった。残念……解剖したかったのに……
こんな可愛い美少女に何もできないで死ぬとか恥ずかしくないの~?って聞いてないか。きゃはっ」
「ひえ……」
俺はそのおぞましい笑顔にに声を漏らす。
コキコキと首をならし、そうしてミシェアはライフルを再び構えて撃ち始めた
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