第36話 第3章 その13
「うぐっ!なんだ?ワタクシの身体が急に動かなく……」
覗き込んだ悪魔は急に体を止める。目だけがギョロギョロと動いて気持ち悪い。
ミシェアは手で少しどかし、悪魔はどさりと倒れた。
そして目の前にはメスガキがニヤニヤと笑っている。
「あーん。ドクター助けてぇ♡みーたんコワーい♡アクマコワーイ♡」
ミシェアはうって変わって軽い口調になる。ミシェアがこれぐらい軽い口調なら大丈夫な証だ。
「はあ、いつも俺をおちょくるのはやめてくれ。心臓にわるい。いつだって万が一があるんだぞ……」
「だって♡ドクターの反応めっちゃ面白いんだもん!」
やっぱりこいつはメスガキだ……一度は痛い目にあってくれ……
「で、こいつはいったいなんなんだ?もう調べてあるのだろう?」
「そうだね。既存の生物とは異なる細胞組織だし、この影みたいなものの構成物質!前に論文で読んだマナマテリアルに違いないわ!つまりはこの現象は『魔法』だと思う。
理論上の空論だと思っていたのに、現にあるってことは、あの現象もこの現象にも説明がつくし、とても興味深いわ。はやく解剖してみたーい」
ミシェアは血にまみれながら笑顔でニタニタ聞いてくる。
「はあ、お前はそういうやつだったよな……」
「えー、心配してくれるの?やさしー。」
俺が溜息をつきながら、安堵する。
「キャプテン!ミシェアさんが!ドクター!大丈夫ですか?」
ルイスは突き刺さったミシェアのお腹をみて、キャプテンと俺に声をかける。
「いや、ミシェアは大丈夫だ。目の前の敵に集中しろ」
キャプテンは冷静に声をかけた。
「でも……」
「ミシェアの能力を知らないのか?あいつは部隊でも上位の能力者だ。というより部隊でも、ほとんどはあいつを殺すことはできねえ!戦いに集中しろ!」
俺もルイスに手を振って大丈夫だと合図をする。
ミシェアのニタニタ顔をみたルイスはホッとしている様子だった。バケモノのような恰好で胸をなでおろしているのを見ると少し滑稽だった。
「それにしても悪魔って、神話の空想生物が実際にいるとはねえ……でもそれにしては雑魚すぎでしょ~可愛い美少女あいてに何もできないで倒れるとか、ぷーくすくすー」
ミシェア、腹に大きな穴開いていて、その発言は説得力ないぞといいたいが……
ミシェア・フローレンスという人物はいつもこうだ。
そんな彼女に俺はとんでもない力を与えてしまった。
アビリティネーム。『エックス・シング』
宇宙からきた未知の極小生物。宇宙ウィルスとも言える未知の生物の軍用実験に失敗し、死ぬ寸前だった彼女をついうっかり助けたら、彼女自身が怪物となった。
全身が怪物による擬態、実に小さい生き物たちが彼女の心自体を核に一つの群体になった。そのため、いくら切っても潰しても、すぐにつながる。
それこそミキサーですりつぶされても瞬時に戻るほどの再生能力を持つ。
物理的衝撃には無意味といっていい性質だ。
そして他者の細胞に変化したり、分解して別の物に変えたり、菌や微生物、ウィルスに近い性質を持っていた。そして、その細胞は外部の物質を解析し、判断し、対応する。
そのため彼女は触れた物の存在を解析することができる。
だが、それらは彼女の能力の一端にすぎない。
メスガキミシェアのお腹に刺さっていた影はゆっくりと抜かれ、傷はあっという間に修復されていく。そして、服までも治っていた。
血も逆流するかのようにミシェアの中に戻っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます