第35話 第3章 その12 主人公視点

「ドクター♡キャプテンたち助けたら前から欲しかったバック買ってくれるって本当にいいの?高いよー」

 そう言ってミシェアはライフルをリロードし、再び射撃した。

 「ああ、いいぞ。相手は未知の敵だ。ああいっていたが手伝った方がいいだろう」

「もちろん、荷物持ちもお願いね♡いーっぱいお買い物させてもらうから♡」

「ああ、でもそれってデー……『バキューン』にならないか?俺みたいなおっさんと行っても楽しくないだろう」

「え?何かいった?」

「いや、いい……」

「ばーか♡」

 ミシェアは歩きながら単発式のライフルを構え、リロードしながら近づいていく。

 その弾丸は適格に敵兵の頭を打ち抜き、腰の弾薬盒から器用に装填しては射撃をしていった。

 「ざこざこざぁーこ♡こんなので高級バック買ってもらえるとかちょろ~♡」

 ミシェアはニヤニヤしながら笑う。

 


 「くそ!なんなんだよ!アリア!お前いったい何を連れて来たんだ!なんだあのバケモノは!」

 恐怖でかすれた声でケーニヒはアリアに問う。

 「いえ……私も……」

 アリアは目の前で行われている殺戮ショーに戸惑いながらも自らを助けようと戦っている彼らに複雑な感情を持っていた。

 「もういい!影よ!いけ!」

 その言葉と共にケーニヒの影がミシェアに伸びていく


「しょっぼ~♡」

 ザシュ!

 その音と共に鉄の香りが鼻腔をくすぐる。

「ん?なにこれ……みーたんのお腹から黒い物が……私こんなの初めて……♡」

 

 その影は針のように地面から飛び出し、ミシェアの腹を貫く。血が滴り、その影に伝わり、水にインクが混じるように濁った。

「うわああああああミシェアアアアアアアアアアアアアア!!」

 声が枯れそうなほど大きな声が出てしまう。

 その光景が俺は信じられなかった。

 いつも隣でニヤニヤしながら俺を弄ってきたミシェアが血を吹き出している。

 思わず、少しでも血を止めようと駆け寄って傷口に手を当てる。

 それは暖かく、ヌルヌルしてどんどんと溢れてきた。

 血は止まらない。

 「いやん……エッチ……」

 「何言っているだ!そんな事言っている場合じゃないだろ!」 

  その時、背後にぞくりとする感触が伝わった。後ろを振り返ると

 黒い褐色のような肌の黒いまなざし、ヤギの様な角をもったバケモノが影から現れる。

 「なんだお前……ミシェアを刺したのはお前か?」 

 一目見てわかる尋常ではないほどの威圧感、逃げろと本能が訴えてくるほどの恐怖が俺の背中を走る。

 バケモノは軽く頷くとミシェアの肌に飛び散った血を指で掬い取るとしゃぶりはじめた。

「ふむ、変わった味だがなかなか美味だな。ケーニヒ殿、このような雑魚にワタクシめを呼びつけるとわ……まあ贄に10人の生娘を頂ける契約ですので私は構いませんが……」 

「ふん、民は消費するためにある!今、貴様を呼ばずしていつ呼ぶのか!フハハ!恐れろ貴様ら!そいつは悪魔!シャドウデーモンと呼ばれる悪魔族の魔物だ!」

 おぞましい声で影の悪魔、シャドウデーモンと呼ばれた怪物は笑っていた。

  

「さあ!はやく残りの3人も殺せ!」

ケーニヒが大声で叫ぶ。

「やれやれ、ヒューマンはこれだから……食事に美学がない……」

 

「ドクターさん!ミシェアさんが!あれはシャドウデーモン!悪魔です!逃げてください!」

 アリアは大声を出して、二人に声をかける。

 しかし、俺はその言葉を無視してミシェアの血まみれの手を握る。悪魔と呼ばれるバケモノものが近くにいても、怖くともミシェアのそばを離れる気にはならなかった。

 「ミシェア、だ、大丈夫か?大丈夫だよな。頼むから大丈夫だっていってくれ……」

 「みーたんの初めてこんなバケモノに貫かれちゃった♡NTRだね♡ごめん……ね……」

 俺はどんな顔をしてるのだろう。ミシェアは少し笑って、俺の頬を触れる。

 長年、連れ添って、来たけどミシェアの性格は昔から変わらない。

 こんな時だっていつもちょっとエッチなジョークを言う。


 「こんな時に死にそうな声出すなよ……頼むから大丈夫だって、いつもみたいに言ってくれよ……」

 「んもぅ……こんな体にしたのはドクターなのにー……そんな事聞いちゃうの……」

 彼女は涙目になりながらか細い声で

「おやおや?この娘と君はそういう関係で?それではゆっくりと嬲り殺して差し上げましょう。愛する者に看取られる。素晴らしい事ですねえ」

 悪魔は笑って俺の顔を覗き込んだ。 

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