第31話 第3章 その8 第三者視点
「おい!お前がが殺したあのチビ立ってるぞ!おまえ、土魔法下手だな」
魔法騎士団の一人がルイスに気づき、同僚が仕留めそこなった事を囃し立てた。
土魔法は一般的に建築や土木に使わるが、一番よく使わるのは集団戦。
火魔法や風魔法、氷魔法は魔法の威力として土魔法はそれらより劣ると言われるが応用性は全属性の中で飛びぬけている。、
土魔法の応用で木を使った敵の捕縛、乱戦を避けるための正確な射撃といった応用は他の元素魔法にはない特性を持つ。
火魔法などでは正確に攻撃することは難しい。
王族直属部隊として少なくとも3以上の属性魔法スキルを持っているエリート集団としても、持つだけならそこらのチンピラとは変わりない。
騎士団として真価が試されるのはその正確性である。集団でも正確に打ち抜く技術。与えられた命令に対して対応できる振り幅。
そららの能力を持つエリート集団にもかかわらず、男は汚点を作ってしまった。
「いや、俺の魔法、しっかりあいつの頭に当たって……ってか大きくなってないかアイツ。ってなんだあれ……ケーニヒ様……あれを見て下さい」
「どうした?俺はこいつのしつけで忙しい……ヒィ!」
ケーニヒは思わずアリアを踏んでいた。足をどかしてしまう。
アリアも這いつくばりながら横目でルイスの身体が怪物になっていく様子だった。
いや、正確には治り、肉体が溶け、繭のようになっていく様。
アリアはルイスが自分の事を気にかけてくれる優しい人だと知っていた。鎮痛剤という苦痛を和らげる薬をくれたり、食べものを分けてくれたりとしてくれた人だった。
しかし、瞳に映るのは奇怪なバケモノ。
(私は何を見ているの……)
アリアは心の中で呟いた。
ルイスの能力は正確には巨人化ではない。正確には本人を核とした巨大で強固な外骨格が全身を覆う能力。
ルイス本体から分泌される液体がだんだんと本人を覆い、分子が組み替えられ、内包していた中身が目覚めだす。
それは白銀の巨大な甲冑騎士を思わせる風貌。
しかし、その顔面は鋭い牙を持つ怪物であった。
「おせえぞ。ルイス!まあ、さすがに頭吹き飛ばされてたらしゃあねえか!これを機会に覚えておけ!お前ひとりだったらどうするつもりだ?」
「ズミマゼン……」
声帯が治りきっていないのか人ならざる声が響く。
超人的な能力を持つルイスもあくまで人間、身体を動かす命令を出すのは脳である。さまざまな情報を伝達する司令塔が破壊されたことにより、わずか1分戦闘不能となっていた。
「僕にあいつらやらせてください。僕……ああいうやつみると殺したくなるんです……」
「はっ!味方にもああいうタイプいるだろ、まあ、敵だったらムカつく奴だったら殺したくなるのはよくわかる。いいぜ!許可してやるし、手伝ってやる。
ただあのアリア、マレク、ケーニヒってやつは殺すな。この事態について聞きたい」
「了解です……グオオオオオオオオオオオオ!!!」
ルイスは高鳴る鼓動を早めるため、声を振り絞り、雄たけびを上げる。
その瞬間、筋肉が弾け飛び全長3メートルの鋼の巨人が膨れ、産まれる。
その巨大な姿は他の騎士団にも映った。
異常なまでに発達した筋肉。異常なまでに鋭い歯、つるりとした頭は表情が読めず、
オークを率いる彼らにとっても、それは畏怖する謎の存在であった。人間、自身の知らないもの経験したことがないものを恐怖し、逃げようとする本能は持っている。
しかし、知能の高い彼らは訓練と奢りと経験によりそれを捨ててしまっていた。
だが、魔物は違う、多少の知能や知恵を持っていたとしてもオークは野生の獣に近い。つい最近まで捕食し、捕食される環境下にいたことで危機管理能力が人類とは驚くべきほど差があった。
オークは慌てて武器を捨てて走り出す。一目見て、一瞬で生物として勝てないとわかってしまった。
そして、ゴブリンは魔物の中では被捕食者、常に食われるという恐怖がありながらも真性社会生物として群れの為に行動していた。その差によりゴブリンはオークの後ろについていくように逃げていく。
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