第28話 第3章 その5


 俺も黙って首をかしげる。


 「えー、それ、どういう意味ーひどーい……」

 ミシェアもニタニタ顔で笑っているが、やや声色が震えていた。

 それほどキャプテン・ボマーことクリス・ブッチャー大佐の沸点は低い。

 その火の粉は何がきっかけで燃え盛るかわからない。

 俺たちの心配をよそにキャプテンは声を荒げる。


「お嬢ちゃん……ロックンロールの良さがわかるのか……?初めてだよ。ロックが好きってやつは!!」

 えっ?むしろキャプテン音楽について話たいタイプ?

「はい!このドコドコなってキュインキュインと鳴っているのとても気持ちが高鳴ります!」


「いいだろいいだろ!ここからのトリル奏法からのこの魂を揺さぶるような歌詞が……」


「歌が何を言っているのか意味がわかりませんけど……あれ?キャプテンさん何か言いました?」


 その言葉の瞬間キャプテンはネズミをにらみつける時のヘビのように冷徹で凍ったような表情をしていたが、すぐに普通の顔に戻り


「いや、少しは黙っていてくれ、運転に集中したい……」と落ち込んでいた。


 うわあああああ何てことをおおおお、やっぱり、キャプテンは音楽に対してめんどくさいタイプだ!!!

 しかし、さすがにこんな女の子に対しては怒りを抑え込んだようだ。


 どうして何もしていないのに、こんなに疲れないといけないんだ……

 そしてアリアちゃんはしゅんと落ち込んで下を向いた。

「少し言い過ぎた。俺は音楽を聴く。暇ならこいつでも読んでろ」

 やり取りをするのに疲れたのかキャプテンは近場にあったコミックをアリアに渡す。

「あの……これは?」

「レジェンド・オブ・ボマー!俺が書いているコミックだ。まだ諸事情で出版できていないが、いつかこれは聖書の次に売れた本になる!」

 アリアはめくって、「絵が沢山書いてありますね。でも、これはどのように読むのですか?」 

「お前、コミック見るの初めてかよ。良いとこのお嬢さんか?仕方ねえ。俺が読み方を教えてやる。これが表紙でこれが題名だ。


 ドドーン!

 レジェンド・オブ・ボマー!第1章 ザ・ネクストアベンジャー! 100パーセントフィクションのヒーローコミック!


 幼少時、クソみてえなオヤジとバカみてえなババアを空爆で焼死するのを見て爆弾に取りつかれた天才クリス!

 家にある道具で爆弾を作り、侵略してきた敵兵どもを全滅させた腕をかわれてから、軍の特殊任務部隊に配属される。

  そして、頼りになる仲間たちと共に数々の戦争で勝利を収め、みんなから頼れるみんなのリーダーになっていった。

 ダダダダーン!

 しかし、新型爆薬兵器の運搬中、裏切った上司によって俺は瀕死の重症になってしまう!

 『新型爆薬兵器が俺の腹にぶっ刺さってる!だ、誰か助けろ!まだ爆発までには時間がある!お前ら!』

 しかし、あれほど仲良くやってきた仲間たちはみんな俺を見捨てて逃げてしまった!

 ババーン!主人公の絶体絶命の大ピンチ!

『誰も助けてくれないのか……はは……』

 特殊爆薬が俺の身体に入って絶対絶命。もう助からないし、ふとしたことで周囲が吹きとぶ状況!

 絶望する主人公!そんな中たった一人駆けつけてきたヒーロー!ドクターライフ! 

 自身が死ぬかもしれないという危機の中、爆弾を処理し俺を助ける!

 そして、安定化された爆弾を奪おうと現れる敵兵たち!銃弾が飛び交うなか俺を背負い走るドクターライフ!

 あと少しで仲間との合流できるという時、敵の銃弾がドクターを貫く!

 そして、死ぬドクター!

 この時、クリスは男の中の男、ヒーローという存在を感じる!

 そして、爆薬兵器が体内に入った副作用によりスーパーパワーを手に入れ、あの時憧れた本物のヒーローとなるためライフルを片手に復讐の戦いを始める事を誓ったのだった!


 ってな感じだ。どうだ面白いだろう」


こ、こいつ俺とキャプテンが出会った日の事をコミックにして描いてやがる……

 まあ、かなりフィクション混じっているが……

 俺は死んでないし、あの後お前、逃げた仲間たちを能力で爆弾を体内に飲ませて殺したし、裏切り者の上官は生きたまま豚に食わせて、死にかけた所を燃やしてトドメを指しただろう……


 そんなドン引き案件を少女に伝えるわけにもいかないので黙っていると

「すみません……ちょっとよくわからなくて……」


 と困惑した表情でアリアがいった瞬間、

 これ以上ないほどガックリと落ち込んでるキャプテンがいた。

 「大丈夫だ……面白いのは10章のヒーローチーム結成からのクリスがリーダーになるところだ……」

 

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